昨日は賑やかな一日だった.まず今年度のグッドデザイン賞が発表された.鉄道車輛では小田急電鉄GSEこと70000形や叡山電鉄“ひえい”大阪モノレール3000系,そして相模鉄道20000系などが受賞している.これらは,各鉄道会社のウェブサイトでも告知された.
 続いて,JR東日本から次世代新幹線試験車輛ALFA-Xについての概要発表が行なわれた.
 そして午後には相模鉄道から,JR東日本への乗り入れ用新型車12000系についての発表が行なわれた.ほんとうに話題が盛り沢山.今日のブログのテーマをどれにするか,大いに迷ったところであるが,ふたつの話題に登場する相模鉄道をテーマにするのが順当だろうかということで,相模鉄道12000系について,発表資料から想像を交えてご紹介することとした.
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グッドデザイン賞を受賞した20000系と並んだ状態の完成予想図.車体幅が広くなったこと,貫通扉がなくなったこと,そして正面下部のラジエターグリル状の装飾の違いなどによる表情の変化がひと目で解る.そのラジエター状の装飾の形は,能面の“獅子口”をイメージしているのだという.さて,きりりと引締まったような20000系と,柔らかな曲面で穏やかな表情の12000系と,あなたはどちらがお好み? 写真:相模鉄道

この比較写真は,ニュースリリースには含まれなかったが“比較できるようなズなどはありませんか?”と問い合わせたところ,ご提供くださったものである.広報担当の皆さんに大いに感謝いたします.ありがとうございました.

さてこの12000系電車.JR東日本の東海道貨物線から大崎を経て山手貨物線まで乗り入れることは既報のとおり.平成31年度下期…2020年3月一杯と発表されているから,あと1年とちょっとで所要数を揃える必要がある.ということで,発表によれば2019年春から営業運転開始の予定ということである.まずは相鉄線内で足馴らしを兼ねての営業運転ということなのだろう.と,いうことは,今年中には現車が落成していなければならないことになる.
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真横から見た12000系電車.窓配置などは11000系と同じではないか.でも,窓上下の外板継目はなく雨樋も車体外板と一体化した埋め込みタイプ.ということはsustina構体を採用しているということ.台車はボルスタレスの軸梁式に見える.写真:相模鉄道

発表されたスペックでは,主制御装置はIGBTインバータ,車輛情報処理装置はTIMSとなっている.ということで,車体や主要機器類は(E233≒11000系)+sustinaということなのだろう.
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昼間の客室.裾が絞られていることを除けば,そのまんま20000系ではないか.腰掛袖仕切りのデザインといい,楕円形の吊り手(相鉄ではつり革といっている)といい,車端部の座面を高くしたユニバーサルシートといい…….写真:相模鉄道

 調色調光式の室内燈や車内の鏡も装備されることになっているから,さらに+20000系が加わって,最終的には
(E233系≒11000系)+sustina+20000系=12000系
という数式(?)が成立する.

新しいのは,ステンレス鋼製車体に“YOKOHAMA NAVYBLUE”を塗装で表現すること.京急が先鞭をつけたとはいえ,相鉄では初の試みである.
 車内防犯カメラと前方監視カメラも相鉄としては初採用.ホームドアを設置している駅では自動停車が可能な装置TASC(定位置停止装置)も装備される.
 また,“車輛システムに会社間切り替え機能等を本格搭載”とある.それぞれの線区に応じて加減速率やその他の機能を切り替えるのだろうか…….

ということで,“2019年度末”すなわち2020年春までに6編成60輛が総合車両製作所で製造されることになっている.
 そういえば,JR東日本側はどうするのだろうか.まさか全部を相鉄がまかなうわけではないだろう.E233系かE235系か…扱いの便を考えれば,従来のE233系7000番代を6~7編成増備というのが妥当なところだろう.

これらのデザイン設計を担当したのは,9000系リニューアルや20000系と同じく,鈴木啓太さんが主宰するPRODUCT DESIGN CENTER.そしてもちろん,“デザインブランドアッププロジェクト”のアートディレクションを司る,水野 学さんと洪 恒夫さんもこの車輛のプロダクトデザインを監修している.その水野さんが主宰するグッドデザインカンパニー(good design company)は,事務所設立20周年ということで,新橋に近い銀座で記念展を開催中とのこと.その展示の柱のひとつとして相鉄20000系が採り上げられている.壁面には20000系をオブジェとした写真が展示され,模型も飾られている.案内をいただいたのが今日の夕方であるからして,まだ実際には訪問できていないのだが,会場の写真をいただいたので,お目に掛ける次第.
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会場の様子.画面中央に鎮座するのは,くまモン.そう,水野さんは,くまモンの生みの親なのである.“あの”電車のデザインが生み出されたバックグラウンドを知るのに,よい機会だろう.写真:グッドデザインカンパニー

新橋に近い銀座…ということになれば思い浮かべるのが旧新橋停車場鉄道歴史展示室.7月から始まっていながら,このブログではなかなかご紹介することができなかった,“第47回企画展 没後20年 工業デザイナー 黒岩保美”.そろそろ会期も終盤(10月14日まで!)にさしかかっている.
 途中で展示替えも行なわれたから,“もう行ったよ!”という方も,ぜひ再訪を!
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会期途中の展示替えで見ることができるようになったデッサン.木炭だろうか鉛筆だろうか.いずれにしても,この基礎的なデッサン力が,あの黒岩デザインを産み出した原動力であることに,間違いはない.

※2018.10.05:数式(?)及び一部語句修正