今週の話題は,東京地下鉄丸ノ内線2000系のお披露目.
 今年3月にその構想が発表されて以来,落成とお披露目が待たれていた車輛である.
 1編成目は8月に豊川の日本車両から神奈川臨海鉄道の横浜本牧まで甲種輸送列車で,その後はトレーラーによる陸送で中野車両基地へ搬入された.
 そして今日の午前,報道関係者向けのお披露目が催された.
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中野車両基地でポーズを取る第1編成.行先表示は池袋となっているが,実際には荻窪方先頭車の2101.完成予想図よりもさらに丸味が強い印象である.前照燈はコイト電工製の花形.行先などのLEDはコイト電工製のセレクトカラータイプで,1/500秒程度のシャッタースピードでは文字欠けは起こらない.

編成は荻窪方から2101+2201+2301+2401+2501+2001.旅客案内上の号車番号は荻窪方が1号車である.6輛のうち池袋方の1輛だけが付随車で,あとの5輛は電動車である.
 台車は新日鐵住金製の操舵台車SC108.電動車用にはM,付随車用にはTにサフィックスが付されている.
 主電動機は東芝製の永久磁石同期モーターを採用している.定格出力は150kW.操舵台車を採用した関係で,主電動機は固定軸側にだけ装架する,いわゆる0.5M方式である.
 主制御装置は東芝製でフルSiCモジュールを使ったSVF109-B0形.
 補助電源装置は三菱電機製のNC-GBT140Bを荻窪に向かって左側に取り付けている.
 電動空気圧縮機は日比谷線用13000系に採用されているのと同じ三菱電機製の装置を,荻窪に向かって右側に取り付けている.
 また,大規模停電などの非常などに駅間に停止した列車を最寄り駅まで移動させることを目的として,東芝製の非常走行用バッテリーを3号車に搭載している.
 なお,きょうの公開ではすべての車輛に近づくことはできなかったので,非常走行用バッテリーを除く各装置がどの車輛に取り付けられているのかの確認はできなかった.
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東芝製フルSiCモジュールの主制御装置.写真は2号車の荻窪に向かって左側に撮り付けの装置.
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補助電源装置は三菱電機製のハイブリッドSiCモジュールタイプ.写真は1号車(2101)の荻窪に向かって左側に取り付けの装置.
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非常走行用バッテリーとその制御装置箱.東芝製で3号車の装置は床下両サイドに取り付けている.
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台車.右は操舵システムを組み込んだ付随軸.左は普通のモノリンク軸箱支持装置を持つ電動軸.は新日鐵住金製で形式はSC108.電動車化付随車かでMやTの枝形式がつく.

さて車体だが,前面を含みアルミ合金ダブルスキン構造である.全身真っ赤に装われているが,三次曲面で構成される前面は塗装,それ以外はラッピングである.丸の内線伝統のサインウェーブはこれまで窓下に配されていたが,ホームドア設置によって見えなくなってしまったので,幕板に移動した.
 そしてなにより目を惹くのが,各連結面の大きな丸窓.普通の都市鉄道の地下鉄なのに,なぜ?と思ってしまうのだが,“なにしろ丸ノ内線ですから”.というのが答えであった.
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真っ赤な車体に大きな丸窓.営業に就いたら注目度満点となること,間違いない.ちなみにこの赤は“グローイング・スカーレット”と呼ばれるメタリック調であり,現在の02系の帯色より濃く,300・500形の車体色に近い
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丸窓部の内部.右はフリースペース.左は……なんと,電源コンセントを備えたテーブルがしつらえてあり,ノートパソコンやタブレットなどを使って仕事もできるかもしれない.込んでさえいなければ,だが.
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客室見通し.レール方向の吊り手はリコ式を模した形状,枕木方向は丸形である.そして天井中央部にはいくつもの丸形ドームが.これも“丸ノ内線”ピンク系の内張りや床材は300形への回帰といえようか.

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そして運転室.両手操作式T形ハンドルを中央に据え,正面と右手に合計3面の液晶モニターを備える.

システム的にはこのとか,車輛そのものでは,イーサネットによる車輛情報管理装置TISとWiMAX2+を組み合わせて車輛状態を地上のデータセンターへリアルタイムに伝送し,予防保全を実現可能なシステムを組み込んでいるのが新しい.
 また丸ノ内線全体の新システムとして,無線式列車制御システム(CBTC)の運用を2022年度から開始する予定だという.このCBTCでは,列車間隔を柔軟に設定できるため,列車ダイヤが乱れた時の回復などに大いに効果を発揮することだろう.
 なお,この2000系電車は年が明けてすぐの2月には営業運転を開始する計画である.また,4年後の2022年度までに53編成318輛の投入が予定されていて,現在の02系を全部置き替えることになっている.