今週の月曜日10月29日の午前,西武鉄道は,かねて構想を発表していた新特急車の詳細について記者会見を開催して明らかにした.
 関東地方ではその日のうちにTVニュースでも採り上げられたし,たくさんのニュースサイトで報道もされている.そこでここでは,ちょっと私見や,より詳しい情報をお伝えすることにする.
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まずはその愛称.Laviewというのだそうだ.カタカナで書けばラビュー.1969年以来,50年もの長きにわたって愛されてきたレッドアローは,ついに引退することとなった.東京プリンスホテルでの新型特急車輛発表会見会場で,ロゴを記したボードを持つのは基本デザイン監修の建築家 妹島(せじま)和世さんと西武鉄道イメージキャラクターで女優の土屋太鳳さん.その左に立つのは若林 久 西武鉄道代表取締役社長,右が後藤高志 西武鉄道取締役会長.写真:脇 雅恵

このLaviewという言葉には,
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「L」贅沢(贅沢(Luxury)なリビング(Living)のような空間
「a」矢(arrow)のような速達性
「view」大きな窓から移りゆく眺望(view)
都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込む特急として、多くのお客さまに特急電車での旅を楽しんでいただきたいという想いが込められてます。
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のだそうだ.
曲面ガラス
外観でもっとも大きな特徴は,なんといってもこの先頭部形状だろう.曲線半径1,500mmという三次曲面ガラスを鉄道車輛に使ったのは,今回のLaviewが最初だろうか.前照燈はコイト電工の花形タイプに見える.その周囲にで光るのは装飾のライトだろうか.運転席側前窓の下部に種別と列車名の表示が見える.写真:西武鉄道

この写真からは,車体幅が30000系などの幅広ではなく40000系と同じかあるいはそれに近い数値だろうと推測できる.正面には非常用貫通扉も設けられている.“地下乗り入れに対応するスペックではあるが,今のところ予定はない”のだそうだが,後述する通り,保安装置も地下乗り入れ対応である.各方面との協議調整が成立すれば,新木場方面あるいは東横線方面への乗り入れを行ないたい,とみるべきだろう.
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驚かされるのは正面だけではない.側窓は縦1,350mm×横1,580mmという特大寸法.その窓の中には,座面と背摺りと肘掛けが一体化した腰掛が据えられている.交流100Vの電源コンセントや背面テーブル,肘掛け収納式テーブルを備える.背摺りには手動式調整可能枕を備える.写真:脇 雅恵

客室はビジネス客にも観光客にも,より快適に過ごすことができる空間を提供している.具体的には,客室両端の23インチの液晶画面ではニュースや天気予報,停車駅の案内などを表示するとともに,一部区間では前面展望映像も放映される.無料の無線LAN“SEIBU FREE Wi-Fi”により,インターネットからの情報を得ることも可能となっている.
 1編成8輛の定員は422名とのことである.
客室窓
外部から見た客室.腰掛がここまで見えてしまう車輛って,特別な展望車や巡察車などを除けば,なかなかない.日除けはロールアップカーテンではなく横引きである.写真:西武鉄道

さてこの“Laview”.形式はといえば,僕も含めた大方の予想を大きく裏切って,001系と命名された.これも“今までになかった全く新しい特急列車を作ろう”という意気込みの一貫なのだろうか.そういえば車号はどうする?001-001とか……?

そして発表会見開催前日のお昼,現車は西武鉄道の小手指車両基地に到着していた.26日に,“レオ”を監視役よろしく後部運転室に鎮座させて,製造担当の日立製作所笠戸事業所がある山陽本線の下松を出発してから,約48時間の旅だった.
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“西武特急が山陽本線を東へ向かっている”との報を受けて出掛けた,西武池袋線の秋津と所沢の間.後部運転室にはマスコットのレオが“乗務”していた.尋常ではない側窓の大きさがよく判るだろう.見送っていたら,所沢方から“レッドアロー クラシック”が顔を出した.お出迎え…だろうか.2018-10-28 写真:前里 孝


さて,ほんの僅かながらも現車を観察した結果…….
台車は川崎重工製のボルスタレス軸梁式.ヨーダンパは備えていないが発表資料には,車体動揺防止装置(当社初)…アクティブサスペンションを装備しているのである.
 両先頭車運転室屋根には逆L形の無線アンテナが2基取り付けられている.床下にはATC/S,ATO,S-TIMの文字が記された銘板を取り付けた箱が見える.
 トイレは1,5号車に取り付け.
主制御装置は2,6号車に三菱電機製を2側(池袋に向かって右側…池袋-所沢間での南側)に取り付け.1C4M2群構成のように見える.もし永久磁石同期電動機を採用しているなら,1C1M方式であるわけだが.
 電動空気圧縮機は三菱電機製を3,7号車の2側に取り付け.
 補助電源装置は東洋電機製造製で,3,7号車の2側に取り付け.
パンタグラフは2,4,6号車の飯能方に東洋電機製造製のシングルアームタイプを1基ずつ取り付け.台枠が黄色に塗られているので高圧引き通しを行なっているようだ.
 なお1号車が飯能方,池袋方が8号車である.

この001系“Laview”.今年度は2編成16輛が落成して3月には池袋線・秩父線系統の特急として営業運転を開始する予定となっている.来年度には5編成40輛が追加され,現在の10000系“ニュー・レッドアロー”を全部置き替える.
 なお,今のところ新宿線系統への投入予定はなく,引き続いて10000系5編成が活躍するのだそうだ.

小手指に到着した001系は,さっそく両正面の汚れ防止カバーや列車名のマスキングを外して整備が始まっているようである.まずは構内での試験,続いて深夜の本線試運転となるのだろう.昼間の本線でその姿を見ることができるのは,さて,年内か年明けか.待ち遠しいことである.
※2018.11.02:一部語句修正追加