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京阪電鉄60型“びわこ”.製造から80年以上を経ても,多くの人々の努力によって美しい姿を保っている果報者である.寝屋川車庫 平成9/2007-4-5 写真:西野信一

我が国有数の,鉄道趣味人の集まりである鉄道友の会では,ちょうど10年前の2008年に,“島 秀雄記念優秀著作賞”を創設した.これは,鉄道趣味人による優秀な著作物を顕彰するのを目的としており,以後,毎年数点ずつの著作物に対して授与されてきた.
 島 秀雄さんは,ここの読者ならいわずと知れた日本の鉄道技術者であり,鉄道友の会の初代会長でもある.鉄道の実務面でも趣味の世界でもその発展に大きな功績を残されたことを記念し,そのお名前を永久に記憶に止め,後進への励みとなるようにお名前が冠されたものである.

さて,ひとつの区切りとなる今年,中山嘉彦さんの“日本初の連節車 京阪電気鉄道60型・びわこ号”に対して,第11回目の定期刊行物部門賞が授与されると発表があったのは,9月28日のことだった.

中山さんのこの稿は,2017年7月に刊行したレイルのNo.103に掲載されたものである.11月25日に催された贈呈式には,出版社の担当者も陪席するようにとのことだったので,会場となった東京市ヶ谷の中央本線沿いにあるアルカディア市ヶ谷(私学会館)の6階まで出掛けて参加してきた.

ちなみに今年の単行本部門は,名取紀之さんの“紀州鉱山専用軌道(ネコ・パブリッシング刊)と,KEMURI PROの“阿里山森林鉄道(南軽出版局刊)”だった.特別部門として,“釧路・根室の簡易軌道”を出版したこと対して,釧路市立博物館が受賞の対象となった.
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会場に並べられた今年の受賞作.左から紀州鉱山専用軌道,阿里山森林鉄道,日本初の連節車 京阪電気鉄道60型・びわこ号(レイルNo.103所載),そして釧路・根室の簡易軌道.
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変らずお元気な鉄道友の会会長の須田寛さんの開会挨拶で始まり(左),次いで選考委院長である高井薫平さんによる選考経過報告が行なわれた(右).

そして各受賞者への表彰状と記念盾の贈呈.奈良から駆け付けた中山さんは三番目であった.
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須田会長から表彰状を受け取る中山さん.後方で司会を務めるのは,レイルでおなじみの小野田滋さんである.
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受賞者と鉄道友の会役員との記念写真.前列左から高井薫平さん,釧路市立博物館の石川孝織さん,中山嘉彦さん,下島啓亨さん,名取紀之さん,須田 寛さん.後列左から小野田滋さん,鉄道友の会副会長の松田清宏さん,久保 敏さん,柚原 誠さん,そして専務理事の関 崇博さん.

続いて,受賞者を代表してKEMURI PROの下島啓亨さんからご挨拶があり,贈呈式は終了したが,その後に懇親の時間が設けられ,各受賞者からも感想やエピソードが披露された.
 僕がなにより嬉しかったのは,その中で中山さんが,中山さんの稿に合わせて掲載した数々の“びわこ”関連写真……例えば三宅恒雄さんが撮影された複々線を疾走する姿とか……の収集や,編集過程でのやり取りなどについて言及され,担当者をねぎらってくださったこと.
 また,高井さんからは選定理由の中で,“連節車”という文字遣いが評価されたことが紹介された.これは僕が常々主張してきたことであって,最初に寄稿のご相談をいただいた際に,僕のわがままのひとつとして中山さんにお話したことである.中山さんのお考えにも合致したようで,わざわざ一節を設けて解説してくださったのである.それが評価されたのだから,嬉しくないはずがないではないか.
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出版社は単に陪席と思っていたら,受賞者と同じデザインの立派な楯が用意されていた.帰宅後にレイルNo.103の表紙と並べて記念撮影

ともあれ,今回の受賞は,ひとえに,著者である中山さんの功績であって,うちの会社や僕は,単にそのお手伝いをしたに過ぎない.
 でも,そのお手伝いを認めてくださった今回の受賞を励みとして,これからも,多くの人が鉄道を,もっともっと好きになってくださるような,そんな本を作り続けてゆきたいと,改めて思っているところである.