先週の土曜日4月27日の昼過ぎ,西武鉄道本川越駅から丸い銀色の列車が出発していった.
 大型連休中の臨時列車として設定された“むさし90号”である.本川越から所沢を経由して飯能まで,そして戻りは同じコースで“小江戸92号”として設定されたこの列車が,新宿線での“Laview”初営業列車だったのである.
 初営業を記念して開催された出発式には,若林 久 西武鉄道代表取締役社長をはじめ,村上正行 西武鉄道鉄道本部運輸部本川越駅管区長,小田麻夕美 川越プリンスホテル支配人,川合善明 川越市長,大久保勝 飯能市長,女優 小島藤子さん,そして川越市のマスコットキャラクターである“ときも”が参列した.
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12時56分,テープカットが行なわれた.左から村上駅管区長,小島藤子さん,大久保飯能市長,川合川越市長,若林社長,小田支配人.出発ホームはいつもの2番線ではなく1番線.この日はB編成が充当された.

女優の小島藤子さんは,5月10日から公開される,豊島園を舞台にした映画“としまえん”に出演している縁で招かれたのだという.
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マスコットキャラクターの“ときも”は,出発合図の時に登場した.管区長による出発合図は車体の銀色に融け込んでしまっているが,打ち振られるLaviewの旗の右側に,ちらりと見える.

“ときも”とは,川越市のシンボルとなっている時の鐘の“とき”と,名産品のひとつであるサツマイモを掛けあわせた名前.時の鐘を帽子にして,身体でサツマイモの形と色を現わしているのだそうである.

特急“むさし”が本川越駅から発車するのも特別なことなのだが,Laviewにとっては“小江戸”を表示して走るのは,この日が初めてのこと.
 ちなみにこの列車,運転は4月27日から5月6日までの毎日.全線通しで乗った場合の特急料金は500円である.

 ということで,列車を見送ってから“新宿線らしい場所”ということでいろいろ考えた末に頭に浮かんだのが,南大塚.
 かつて砂利取りのための安比奈線が分岐していた駅として,広い構内を有する雰囲気は,今の池袋線には存在しない風情である.ずっと以前の石神井公園駅が近いかもしれないけれど,なにより貨物線の分岐というのは,他にはない.
 改札を出て駅の周辺を一周してみたのだけれど,最終的には本川越行きホームの所沢方が,一番よい雰囲気だった.
 実は南大塚の駅に降り立つのは,初めて.だから何でも物珍しい.所沢方への出発信号機が両方の線路に建てられていて,その先に片渡りがある.貨物扱いをしていた頃の名残りかとも思ったのだけれど,安比奈線が正式に廃止されてしまった今では,維持し続ける意味は薄いだろう…….などと考えているうちに,お目当てのLaviewがやってくる時刻になった.
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飯能から戻ってきたLaviewのB編成.“特急 小江戸”の表示が新鮮である.もっとも“m高速シャッターで文字欠けしないLED”を信じて1/800秒で撮影したら,ほんの少し,文字が歪んでしまった.でも,充分に読み取ることはできる.

通過してから,戻りの回送を待つ間に駅構内各部を観察してみることにした.
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跨線橋を潜って安比奈方面へ線路が分かれる部分.コンクリート枕木が山積みされている先から踏切跡の向こうまで,そしてその奥にはさらに向こうへの線路が残っている.踏切前後の線路の下にはコンクリート枕木が見えるから,積み上げられた古枕木は,もしかしたら安比奈線から撤去してきたものかもしれない.

15時18分,回送列車はやってきたのだが,それまではすれ違わなかったのに,この時に限って,本川越行きと,ものの見事に重なってしまった! がっかり.でも気を取り直し,電車に乗る前に,所沢方面行きのホームの外側にある線路に留置されている保線用作業車を観察.
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“MJK”という文字を鋳出した立派なオーナメントを取り付けたこの車輛は,松山重車輛工業製の20t軌道モーターカーである.銘板には平成14年2月製,型式MJK-MR1580,製造番号102563と打刻されている.

このモーターカーが留置されている線路は,本川越方は行き止まりで,所沢方で本線に繋がっている.さっきの片渡りよりは駅の内方にあるので,作業列車の進出や収容新津川っているのだろうかとも,一瞬だけ思った.けれど,作業列車を動かす時には,普通は線路閉鎖を欠けるから,出発信号機などは関係なさそうだし…….
である.
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画面左端から顔をのぞかせているのが,モーターカーの線路.踏切の向こうに片渡りが見える.この写真に見える出発信号機は,通常の所沢方面行き列車用である.

問題は通過して行くLaviewの横に植わっている出発信号機.信号機も近年はすっかりLED化されているので,まるで消燈しているようにしか映らないことも多いけれど,しっかりと生きているのは,この目で確かめているし,一齣前にはちゃんと赤く点燈している.

で,帰宅後に調べてみたら,本川越駅の手前にある東武東上線との立体交叉地点が浸水しやすく,そのために線路が不通になった際に,この駅での折り返し運転を行なって影響を最小限に止めるための設備,なのだそうである.
 身近なものごとなのに,改めて観察してみると,これまで気付かなかったこと,知らなかったことがたくさんあって,教わることがいっぱいである.だからこの趣味,やめられない.
 小さな満足感とともに,新井薬師前までではあるものの,引き続いて新宿線の旅を満喫したことである.

一方で,なんで安比奈線の廃線跡をたどるということを思いつかなかったのだろうか,とは思う.まぁ,次の楽しみ,である.