先週のここで紹介した鉄道総研の燃料電池ハイブリッド電車R291系のあとも,新型車の公開や試乗会が続いている.
 翌日には首都圏新都市鉄道…いわゆるつくばエクスプレスの最新型交直流電車TX-3000系が守谷の総合基地で発表された.週明けの28日には,JR東日本の新観光車輛“海里”が,鉄道趣味月刊誌向けに撮影のチャンスを設けてくださった.昨日30日には,JR東海の東海道新幹線N700Sの報道関係者向け試乗会が東京と豊橋の間で催された.
 11月には小田急電鉄の新通勤車5000形…いままさに,神戸の川崎重工https://www.khi.co.jp/から松田へ向けて甲種輸送の途上にある.その情報は残念ながら11月号には間に合わなかったのだが,有料会員制のウェブ版“月刊とれいん 甲種・特大情報”に掲載している…,既にくぬぎ山の基地に搬入されている新京成電鉄80000形,そしてJR東日本の次世代特急“踊り子”ことE261系の出場も間近…これも上記ウェブ版“月刊とれいん 甲種・特大情報”に情報を掲載している…という具合.まさに目白押し状態.
 これらをどのように採り上げるのがよいか,僕の頭の中は正解のないパズルのように混沌としている.このブログだって,原則として週に1回.木曜日の掲載だから,さてどうしたものやら…日常の話題は,先週にようやく,3ヵ月前に発売のレイルNo.111をご紹介できただけ,という状態である.11月号のMODELERS FILEで採りあげた“きらきらうえつ”の取材余話なども記したいのに.さて…….

いきなり愚痴で始まった今回のブログ,結局のところは,題名でお察しのとおり,三題噺として,それぞれをかい摘まんでご紹介することに,した,次第.

最初は,つくばエクスプレスのTX-3000系.2005年に同線が開業した時に用意された直流のTX-1000系と交直流のTX-2000系に続く,久し振りの新形式車である.
 システム的には主制御装置はシリコンカーバイド(SiC)適用PWMインバータ素子など,14年の間の進化を採り入れている.
 接客設備も防犯カメラや大型液晶情報表示装置やLED照明を採用している.特筆すべきは,相模鉄道20000系や12000系に続いて“座りやすく立ちやすい”ユニバーサルデザインシートを導入したことが挙げられる.
 そして外観.これまでのTX-1000とTX-2000は,鋭角的な時代の先端を走るようなデザインだったのが,一転して丸味のある形状となった.鋭さはLED前照燈の形状に継承されたといえよう.
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報道公開は大雨の中で敢行された.外観撮影ではちょっと苦労したが,なんとかモノすることができた,つくば方からの編成写真.車号はTX-3681から秋葉原方へTX-3581と続く.列車種別・行先表示装置はコイト電工のセレクトカラーなので,早いシャッターを切っても文字は欠けない.
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ユニバーサルデザインシート.とフリースペース.優先席とフリーペースは全車に設定されている.貫通扉の衝突防止柄は筑波山をモチーフにしている.

今後,12月下旬と1月下旬に2編成ずつが日立製作所から搬入されて今年度の5編成が揃う予定である.そして来年3月には営業運転を開始する予定とのこと.
 なお,11月3日に開催予定の“TXまつり”では来場者に公開されることになっている.

続いてJR東日本の“海里(かいり)”.“きらきらうえつ”にかわる観光車輛で,交直流区間及び非電化区間でも走行可能なディーゼルハイブリッド車としたのが特徴.形式はHB-E300系.4輛編成は変らないが,4号車,新潟方先頭車はグリーン車扱いとして旅行商品扱い用のダイニング車としたのが新しい.3号車は売店とイベントスペース.2等車と1号車は通常のきっぷで乗車可能だが,2等車はコンパートメント,1号車はリクライニングシートとして趣きを変えている.配置は新潟車両センター.既に10月5日から営業運転を開始している.
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秋晴れとなった新潟車両センターでの“海里”.シックな装いのカラーデザインは日本海の自然によく似合うことだろう.近いうちに走行中の写真も撮影したいものである.
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4輛のうちのハイライト的存在である4号車HB-E302-6の客室.山側は2人掛け,海側は4人掛けとなっているが,一部には海向きの座席もしつらえられている.テーブルはガラス製である.

そして昨日の朝,JR東海のN700S系に,東京から豊橋まで乗せていただいた.東海道新幹線の“性能追及タイプ新型車”としては究極の存在となるかもしれない電車だけに,興味津々だったのだが,これまで何度か行なわれた車輛基地での撮影取材は参加が叶わず,ようやく間近に観察することができた次第.とにかく乗り心地は最高,特にグリーン車は文句のつけようがない完璧さである.車椅子を2台積み込むことができるし,ロック可能な大型荷物置場なサービス面でも格段の進歩を遂げている.そんな中で“これは!”と思ったのが,停車駅が近くなると客室荷棚上部の照明がパッと明るくなること.お客さんの目を荷物棚の方に向けさせて忘れ物をなくそうという親切設計なのだそうである.これはなかなかのアイデアである.
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東京駅到着シーン.N700Aに似ているが,センターのエッジが強くなり,前照燈周りの造形が新しくなったことによって,一段と引締まった表情を得ている.
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グリーン車の車内.室内燈は完全な間接照明となり,より和らいだ空間を作り出している.背摺りの中央部分で光が反射しているように見えるのは目の錯覚で,織り柄の色遣いによるものである.

普通車も間接照明となり,電源コンセントは全席の肘掛けに装備,リクライニング機構も座面と背ずりが連動して動くようになった.そして各車妻部の情報表示装置は超大型の液晶になり,遠くからでも内容を読み取ることができるようになった.
 量産車が登場して営業運転に就くのは,2020年夏の予定である.

さて,誌面ではどれをいつ,どのように紹介しようか.楽しい悩みは尽きない.