去る11月15日の終電後に,それは始まった.終了したのは17日の始発前.この約30時間に及ぶ大工事とは,JR東日本の,品川と田町の間の線路移設工事.
 これまでにも2015年1月15日には“上野東京ライン試運転たけなわの一方で田町の急行線用未成高架橋解体”と題して田町電車区の変貌をお伝えし,昨年7月12日には“渋谷の次は品川の線路付け替え”として京浜東北線南行きの線路移設をご紹介している.
 しかし今回の規模は桁違い.その実態は?
 今回と次回,いずれも長編でお目に掛けるのは,喜び勇んで参加してきた,15日の終電後に集合して翌朝の9時に解散という報道公開の詳細レポートである.
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今回の工事の全容図.右が南で左が北.報道公開で取材できたのは右から2番目の赤丸印の中である.

実作業は山手線の内回りと外回り,そして京浜東北線の北行き線路を撤去することから始まった.
 その後,線路上には無数の軌陸車が走り回り,しかるべき場所に運ばれた枕木やレールやバラストを,大勢の人によって組み立て,均し,接続する…
 それらを品川駅6番線ホームと跨線橋から観察したのだけれど,ホームからでは線路移動の様子がよく把握できずもどかしい.跨線橋から観察でようやく実感できるようになったけれど,網目入りガラス越しでは,撮影がままならない……
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午前3時すぎの跨線橋から網目入りガラス越しに北をのぞんだ情景.右端に京浜東北線南行きのための軌匡が見える.左側の線路はまだ“原形”を止めている.
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午前4時前.既に線路は各所で切断され,どれがどこにつながることになるのか,外からは判然としない.部屋中にOゲージの線路を散らかして悦に入っていた子供のころを,思い出してしまった.

4時すぎから,取材現場を“上空”から工事の様子を俯瞰できる,線路沿いのビルの9階に取材現場を移動.
 ここでの15分間で,僕は今回の移設工事の“肝”をつかむことができた.ような,気がする.
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4時半すぎの移設現場を上から見る.画面右下にのびる4本の線路が元の山手線内外と京浜東北線の線路.分断されたそれらの線路の真ん中を,新しい2本の線路が大胆に横切っている.これからバラスト撒布に取り掛かる.線路の周囲には,そのための,布袋に入れられたバラストが積み上げられている.背後には広大な品川駅が展開する.

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夜通しの取材の第一部はここで終了.第二幕は6時半から受け付け開始.その間に自宅近所のパン屋さんで仕入れてきた調理パンと飲み物でお腹を満たす.港南口のベンチに座って黙々と食べる僕の目の前を,どこから現われるのか,大勢の,きちんとした身なりの人々が駅に向かってくるのが不思議だった.
 これからの取材対象は,山手線としては西日暮里以来の新駅となる,高輪ゲートウェイ駅.来春の開業を目指して仕上げにたけなわの様子が公開される.我々は品川駅港南口から,報道公開のために仕立てられたバスに分乗して品川駅構内留置線総合事務所の屋上に向かった.
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絶好の光線状態での撮影となった,高輪ゲートウェイ駅の全景.画面左端に京浜急行電鉄の赤い電車も見える.
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同じビルから田町方に展開する留置線をのぞむ.かつての田町電車区,品川客車区,東京機関区などは,面影もない.ブログで採りあげた未成急行線高架橋,どこにあったのか定かではなくなってしまった.画面奥には昨日まで電車が通っていた,京浜東北線北行きの立体交叉や,明日から電車が走る新しい高架橋もみえる.折りしも東海道本線上り電車が通過して行く.画面中央線路向こうに見える木立が高輪大木戸跡で,その脇に高輪橋架道橋の入口がある.

そういえば今回の線路切り替えによって,明治時代の高輪付近鉄道風景として有名な,海面に築かれた築堤を行く線路が,姿を消したことになる.
 その築堤の途中に架かる鉄橋の名残りであり,低すぎるガードとして一部で有名な高輪橋架道橋も,新駅整備と周辺再開発の影響で姿を消すとか消さないとか…….
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駅構内.コンコースは東西方向のほかに南北方向にも設けられていて,ホームをガラス製仕切越しに自在に見下ろすことができる.ちょっとベルリン中央駅を思い出してしまった.屋根は東京駅八重洲口グランルーフや水道橋駅ホーム上屋に採用されている膜構造である.


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報道公開は9時すぎに終了,解散となった.
 けれど,せっかく“一大イベント”の現場に居合わせることができたのだから,山手線は上野と大崎の間で16日始発から16時頃まで,京浜東北線は16日の終日,品川と田町の間を運休としているその状況も見ておきたいと,まず向かったのが品川駅の南端であった.
 この第三幕の模様は,明日へ乞うご期待!