今回のレイルNo.114,第一テーマは,京浜急行電鉄のデハ230形の誕生から復元まで.
 昭和5/1930年から昭和53/1978年まで50年近く走り続けたこの電車について,誕生時の思い出を月刊時代のレイルから再録し,誕生時からの姿をグラフ構成でたどり,そして,京急グループ本社1階ロビーに新設された“京急ミュージアム”に保存の236号復元プロジェクトの一部始終を,京急電鉄の全面的なご協力のもとに記録したものである.
 この企画の発端は3年前の初夏に遡る.それは今回のプロジェクトのために,川口市の公園から引き揚げて総合車両製作所に収容する作業を取材した時である.
 最初は,報道公開の折りに自分で撮影した写真とレポートを組み合わせようと考えていた.けれど,原稿をいただいてびっくり.実に丹念は,心のこもったレポートとともに,写真もきめ細かく記録されていて,僕の写真など,出る幕はなかったのだ.
 第2次世界大戦以前の写真は,高田隆雄さんや荒井文治さんなどが撮影された貴重なカットを収録することができた.戦後は,米本義之さんや園田正雄さん,関田克孝さん,中本雅博さん,早川昭文さんに加えて惜別運転と琴電譲渡後の姿は,僕自身の“手前味噌”も少しだけ紛れ込ませることができた.
 編集後記にも記したが,もとより,この本はデハ230形の歴史の全てを語るものではない.それは,ほぼ時を同じくして刊行された,佐藤良介さんの“京急230形(ネコ・パブリッシング刊)”という三部作が叶えてくれている.
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品川と北品川の間.八ツ山橋を行くデハ230形.既にツートンカラーになっている.高田さんは電車もさる事ながら,踏切標識に強い関心をお持ちだったようで,ピントはこちらに合わされている.昭和24/1949年 写真:高田隆雄

第二テーマ.それは高見彰彦さんの“鉄道省職員のアルバム集”.これは,鉄道博物館の企画展“鉄道マンの仕事アルバム”に大いに触発された稿である.近年,インターネット上ではさまざまな“もの”がやり取りされている.歴史的文献としての,個人の写真アルバムもそのひとつである.そこには,多くの人々と同時に,我々が興味と関心を抱き続けている機関車や施設などもふんだんに“出演”している.人とモノとが絡み合って織り出される物語を,存分に楽しんでいただきたいと思う.
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18901(後のC512)が浜松工場で落成した時の記念写真.関係者の服装や表情,ポーズが興味深い.どんな気持ちでこの場に臨んでいたのだろうか.所蔵:高見彰彦

第三のテーマは,4回目を迎えた荒井友光さんの作品集.今回は,花上嘉成さんと関田さんのお二人に解説をお願いしての東武電車と東京市電(都電).東武電車は昭和16/1941年頃と昭和21/1946年の,西新井近辺の様子である.都電は新宿車庫が中心だが,王子電車や錦糸堀車庫前の写真もある.残念ながら,どのような経緯で撮影されたのかは不明だが,美しく整備された姿と,戦争が終わった直後の荒廃した姿の対比…落差が鮮明に記録されている,
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東武鉄道が長岡鉄道から購入した客車.元々優等車ではあったとはいえ,展望デッキは,作に東武鉄道の社紋があしらわれていることから判る通り,東武鉄道での改造である.のちに電車化され,書類上は平成4/1992年まで生き永らえていた特異車である.昭和16/1941年 写真:荒井友光


四番目は,久し振りの中国大陸.流線形カバーを残した満鉄のパシナが発見されてから40年が経った.近年は,さまざまな事情によって実質的には非公開となっていたが,昨年になって,再整備された姿が正式に公開されるようになった.しかも,のちに大連で発見されたもう1輛とともに展示されているのである.その保存の模様と,動態保存されている蒸気機関車の様子を,大穂孝悦さんがレポートしてくださいました.
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2輛のパシナも貴重だが,この,“大陸”に使われていたテンイネ1も,大変貴重である.本文ではモノクロでしか掲載できなかったので,ここでカラーでご覧いただこう.写真:大穂孝悦

そして最後が,先代編集主幹の寺田貞夫さんの訃報.寺田さんの人となりを,片鱗でも感じ取っていただければ幸いである.


……つい先日,レイルNo.113No.112をご紹介したばかりだというのに…….あえて異例のペースでのご紹介となった.これには,もちろんわけがある.それは昨今の社会情勢.
 いつもならば月刊誌の発売時期に合わせて,お馴染みの本屋さんや模型屋さんに出向けば店頭に並んでいるわけだが,今回ばかりは,その“お馴染み”のお店が,軒並み臨時休業せざるを得なくなっているのだ.例えば三省堂書店は北海道と岐阜,一宮のお店以外は全部休業.有隣堂書店は本店と厚木店のみ営業,旭屋書店は全店休業.ジュンク堂も丸善を含めて35のお店が休業しているが,池袋や大阪梅田,神戸三宮店は時間短縮の上で営業中…….
 東京では営業自粛協力お願いの業種の中で“鉄道模型店”と明記されてしまった.
 正確には,売場面積が1,000平方メートル以上の店舗は施設の使用停止と催物の開催の停止を“要請(=休業要請)”であり,それ以下の店舗については施設の使用停止及び催物の開催の停止について“協力を依頼(特措法によらない協力の依頼)”とのことである.さらに,100平方メートル以下の店舗で営業を継続する場合には,適切な感染防止対策の徹底を依頼…ということだそうである.
 しかも,状況は日々刻々変っている.だから,もしもお馴染みのお店が営業していない場合には…いや,営業していても,“ぜひどうぞ!”とは申し上げづらい情勢である.だから,そのお店が通販を扱っているなら,それを利用されるのも,ひとつの方法だろう.それでもなお,入手が困難な場合には,
WEB SHOP e-shumi.jpで,レイル以外のうちの会社の出版物も,取り扱っている.ご利用いただければ幸いである.

※2020.04.24追記:私どもへ現金書留や郵便振替によりご送金いただくという,旧来のお申し込み方法もございます.

というご案内を差し上げる必要を感じたから.なのであった.