7月発売の,とれいん8月号(通巻548号)では,MODELERS FILEとして,しなの鉄道で活躍中の115系電車を採りあげた.5月号(545号)での模型記事に連動しての企画であるわけだが,同時に,同社念願の新造車輛SR1系電車デビューのタイミングに時期を合わせた記事でもあった.
 ようやく営業運転を再開した観光電車“ろくもん”と,現有の一般車22編成のすべてを登場させようという欲張りは叶えることができるのかどうか……現地を訪問したのは6月28日のことだった.
 撮影行の途上,上田から長野までの間で約45分間の115系による各駅停車の旅を楽しむことができた.この区間を普通列車で通るのは何年ぶりのことだろうか.しなの鉄道の訪問そのものが,とれいん2012年10月号での115系特集以来だから8年ぶりのことである.
DSCN3344
上田駅の長野方面行きホームから長野方を見る.高架橋はもちろん北陸新幹線の線路.線路配置は新幹線開業以前と同じであるよう
な変っているような…….


記憶だけでも明らかな変化は,軽井沢方面行きのホームが島式になっていること.それにしてはホームの基礎が古めかしい上に,ホーム先端には嵩上げの痕跡が明らかだから,元の1番線ホームの一部を使い,駅本屋の辺りに新たに線路を敷いたのだろうか.
DSCN3341
篠ノ井方面行きホームから駅構外を見る.いかにも不自然な駐車場スペースは,かつての上田交通上田駅の敷地である.

その上田交通の駅は新幹線開業の翌年である平成10/1998年に高架化され,新幹線とほぼ同じ高さとなっている.地上駅の跡地は駐車場のほか,写真の右端にみえる東急REIホテルの用地として活用されている.上田交通の駅のさらに軽井沢方には,国鉄上田機関区の跡地があるはずだが,今回はそこまでたどりつけず.

やってきた115系は,なんと,未撮影のS1編成! 乗ってしまったら撮影できないじゃないか,どうしよう…対応はあとで考えることとして(!!.と思っているうちに早くも西上田着.かつては日本オイルターミナル住友大阪セメント(西上田は元の住友セメント)の貨物扱いでにぎわっていたのだが,今では広い敷地に線路が残るのみ.そういえばEH200の牽く貨物列車をこの駅で撮影したのはいつのことだったか.
DSCN3354
西上田駅を発車したところ.右手が住友大阪セメントのサービスステーション.非常用特殊信号機の奥の繁みのさらに向こうに入換動車用車庫が残る.
DSCN3357
次のテクノ坂城では試運転中のSR1系S102編成に遭遇できた.
DSCN3359
その隣りの坂城には169系トップナンバー3輛が保存されている.状態は悪くないようだ.

坂城は,今でも石油輸送の貨物列車が発着しているが,この時は時間帯が悪いのか週末だからなのか,タンク車の姿をみることは,できなかった.
DSCN3364
そして車庫のある戸倉には,古レールで組まれた跨線橋が残っていた.銘の探索は次の機会に譲るとして,今回は古い様式の駅名標を記録しておかねば.

あとで,しなの鉄道の方にうかがったところでは,この駅名標は,意識して残しているとのこと.なんとも嬉しいことではないか.

屋代駅への進入時にSR1系S103編成が留置されているのが見えた.この構内には長野電鉄の系列会社である長電テクニカルサービスの検査施設があり,しなの鉄道の車輛保守業務を請け負っている.戸倉構内が車庫で屋代構内が工場という感じだろうか.
DSCN3369
右手の建屋が,長電テクニカルサービスの検修場.その左にSR1系S101編成が留置されていた.これで今回投入の全編成を見ることができたわけである.そして左端の作業用覆いが,大いに気になった……
DSCN3373
それは,元長野電鉄屋代線用跨線橋に掛けられていたもので,どう見ても撤去作業中である.木組みの,開放的な壁を持つ跨線橋だったのだけれど….ホーム上屋は既になく,こうなると趣きのある石積みのホームそのものもどうなることかと,ちょっと心配になってくる.しなの鉄道のホーム上屋だって木柱の立派な造りである.

そしてこの屋代駅は,かつて国鉄の準急が長野電鉄に乗りいれていた歴史がある.その渡り線がどこにあったのか,その痕跡はあるのか,興味の尽きない駅である.そういえば長野電鉄屋代線だって,かつては河東線と呼ばれていたし,さらに遡れば河東鉄道.河東鉄道といえば先日まで加悦SL広場で保存されていた加悦鉄道4号機はどうなるのだろうか…….
 なおいつもの大切な情報源のひとつである鉄道フォーラムでのレポートによれば,7月4日(SR1系の営業運転初日)までには跨線橋は跡形もなく姿を消したとのこと.しかし工事はそこで一段落したようでもあり,ホームには手をつけられていないとのことであった).
 しばし後,多くのお客さんを乗せて列車は篠ノ井に到着した.ここからは“残り少なくなった”信越本線である.長野へ到着すればまた,しなの鉄道となる.でも列車の一部ハイまでも直通している.珍しい運行形態ではないか.そして長野へ.

長野からは“ろくもん”で一気に上田へ舞い戻った.いや,普通列車よりもゆっくりのんびり約2時間の,快適な旅であった.
DSCN3434
最後に…昨年秋の台風19号に伴う水害で落橋してしまった上田交通千曲川橋梁の現状をお目にかけて,本日の締めくくりにしよう.冬の渇水期を待って,一気に工事が行われることになっているのだと思う.

115系の写真が,1枚も出てこないじゃないかって?それは………是非とも,自分の楽しみのために撮り溜めた写真を惜しげもなく提供してくれた脇や,S1編成を締切間際に探したしてくださった石黒一明さんなどの協力によって全編成を掲載することができた,とれいん8月号で堪能してくださいませ!

なお,8年前の9月20日のここでは小諸駅の様子を“小諸駅 今”と題してご紹介している,併せてご覧いただければ幸いです.

※2020.07.31:重複写真1点差し替え