4階建の空中公園に衣更えした,渋谷の宮下公園に行ってきた.
 3年ほど前から大掛かりな改修工事を行なっているのを電車の窓から眺め続けていたのだけれど,この夏にようやくオープンした.そこで新しいカメラハイクのポイントとして訪問のチャンスをうかがっていたところ,渋谷方面へのほかの用事も兼ねて,ようやく実現したというわけだる.
 歴史を繙けば昭和のはじめに公園として開園し,東京オリンピックに際して“東京ではじめての空中公園”という触れ込みで地上を駐車場,その屋上を公園に整備したのだという.僕が知っているのは,その姿である.空中庭園とはいうもの,せいぜいが山手線の築堤と同じ高さだから,雄大な眺めが展開しているわけでもなく,線路との間には木が生い茂っていたから,列車の写真撮影には,おおよそ不向きな公園であった.
 それが10年ほど前に最初の再々整備計画が持ち上がったものの,たくさんの問題が発生して紆余曲折があり,さらに本来なら今年の3月に開園のはずが,COVID-19のあおりを受けて8月まで延期という顛末であった.

この区間の山手線は南北に走っていて,公園はその東側にあるから,上から見下ろした写真を順光線で撮りたければ午前中がよいということになる.けれども一方で,東側に背の高い空中公園があるわけだから,とりわけ陽の低いこの季節には,線路は影の中であること間違いない.となれば11時ごろからが狙い目だろうか…….
 と思いつつ現地に到着したのは10時前のことだった.
 幸か不幸か,天候は快晴の予報に反しで寒い曇り日であった.そして2階と3階は店舗スペースであって,11時まで立ち入ることができないことを,現地へ到着して初めて知った!
 ということで,まずは4階の公園から線路を見下ろせばどのようになるか,場所探しをしていたら,
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いきなり展開したのが,山手線E235系と相模鉄道12000系の併走である.

公園の北端には背の高いビルがあって,原宿方面への展望をのぞむことはできない.そこで南端から渋谷方面を眺めてみると,
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今度は北行きのE233系と南行きのE231系の行き違い.背景にはスマートフォンの大きな広告が展開するが,それが掲げられているのは,つい先日までの東急百貨店東横店西館である.その向こうには東急プラザ,FUKURASビルが聳える.さらにその向こうにはセロリアンタワー東急ホテルが顔をのぞかせる.

南北の真ん中あたりに吹き抜けの大きな階段があって,そこは自由に立ち入ることができる.そこから写真は撮れるのだろうかと,ファインダーを除きはじめたら機関車の音が聞こえてきた.この時間帯に貨物列車はないと思うのだけれど,一応待ち構えていたら,貨物線の南行きを国鉄色の単機回送が通り過ぎて行った.
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僕が立っているのは3階.見上げると4階の公園,見下ろすと2階フロアーである.もう少し広いレンズで道路まで取り込んでもサマになるかもしれない.この場所の欠点は,列車が来るタイミングを量るのが難しいということだろう.

機関車が行き過ぎてからモニターで確認したらJR東日本のEF64 1031だった.長岡車両センターの機関車である.横須賀線用のE235系……今日になって,12月から営業運転を開始すると発表があったようである.取材はどうなるだろうか……を新津から運んできた帰り道…にしては.南行きである.さて.

そうこうしているうちに時計の針は11時を指した.3階の南端から渋谷駅を眺め直してみることにした.地上の一角に残る旧来の飲食街との対比を捉えたかったから.
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“のんべい横丁”と呼ばれるこの一角,周囲がすっかり整備されて,存在感はひときわ増したような気がする.

そしてお昼がやってきた.旅客列車に遅れが出ていなければ,青森からの3086列車が通過するはずである.
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珍しく(?)この一瞬だけ太陽が顔を見せてくれた.公園もまずまず賑やか.新しい宮下公園の表情を捉えることができたと,思う.ちなみに今日の牽引機はEH500-39であった.

公園の奥に見える建物はsequence MIYASHITA PARKというホテルである.東面以外ならば線路を望むことができそうである.ちょっとチャレンジしてみたくなるシチュエーションではないか.

さてこの新しい宮下公園の全体像は,写真と文章だけでは伝わっていないと思う.そこでお目にかけるのが,現地に掲げられた見取り図である.
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これで一目瞭然,だろうか.公園も24時間いつでもたちいることができるわけではなく,朝8時から23時までである.だから早朝の臨時列車撮影などには不適…というのが目的の場所ではないのだから,

※2020.11.13:のんべい横丁の記述一部修正