2014年3月15日(土)9時57分.前夜上野を出発した“あけぼの”最後の下り定期と弘南鉄道のラッセル車の立体交差が実現! 鉄道会社の枠を超えた試みに集まったファンや地元住民の方から熱い声援が送られた.【動画】

3月15日のダイヤ改正で上野〜青森間の寝台特急“あけぼの”の定期運行が終了し,44年の歴史に幕を閉じました.改めて長い間おつかれさまでした.
 思い返せば,“あけぼの”は私が一番お世話になった寝台特急でした.
  初乗車は平成17/2005年9月.初めて五能線に乗りにいくときに上野から秋田まで乗車しました.その後は正月パスを使ってのローカル線の旅のしめくくりに,弘前城址と津軽鉄道の芦野公園の桜見物の帰りにと,何度かお世話になりました.またここ2年ほどは,弘南鉄道のラッセルに魅せられ,その青森入りの ために利用しました.“あけぼの”があったおかげで自然と北東北,津軽地方へ旅の足が向いていたといえますし,青森が懐かしい故郷のように感じることがで きるまでの場所になったことは私の心の財産です.

そんな思い出の列車の最後は青森県内でお見送りしたいと思っていたところ,弘南鉄道の大鰐線のラッセル車が“あけぼの”の通過時刻にあわせて臨時運転する.とのニュースが入ってきました! 

場所は弘南鉄道大鰐線 石川〜義塾高校前とJR奥羽本線 大鰐温泉〜石川の間で,両者の線路が立体交差するところ.この演出は3月2日にも試みられたのですが,“あけぼの”が8分遅れたため交差が実現しなかった とのこと.再チャレンジ&最後のチャンスに,今日こそは! との思いで集まった約100人のファン,地元の方と一緒に“その時”を待ちました.

9 時25分ころ,隣で撮影していた方から「あけぼの,大館駅発車5分遅れらしいよ」との情報をいただきました.不安と期待の中,9時50分過ぎ,大鰐線石川 駅発車のキ105の汽笛が聞こえ,ゆっくりゆっくりと高架橋を上がってきます.立体交差のすぐそばにJR線の踏切があるのですが,この警報機が鳴らないま まラッセルが近づいてきました.「今回も失敗に終わってしまうのか...」あきらめかけた時,ラッセルがピタリと橋の上で停止してくれたのです.周りから 安堵の笑い声が聞こえたのもつかの間,踏切が鳴り,一気に緊張が走ります.
 キ105の長い汽笛のあと,それに応えるようにEF81の汽笛が鳴り,一瞬のうちに“夢の競演”が終了しました.
 交差した時間はほんの一瞬だったけれど,連続写真の一コマ一コマをスローで見ているかのように,ファインダー越しに目に焼き付けることができました.

あ けぼの廃止の主な理由は“車輛の老朽化”ということです.しかし,その車輛たちの引退の花道を飾ったのが,24系客車よりもさらに車齢の長い昭和 12/1937年製のキ105と昭和2/1927年製のED221ということがとても心打たれました.年輪を刻んだ車輛同士の最後の共演は後光がさしてい るように見えたのでした.

廃止か存続か….今岐路にたたされている大鰐線ですが,そんな厳しい状況の中でも,今回のような心に残るイベントを行ってくれた弘南鉄道に心から感謝したいです.

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橋の下より大鰐温泉方面を見る.この橋は石川橋梁といい,大鰐線唯 一の高架橋.平成19/2007年に約3ヶ月間この区間を運休し,掛け替え工事を行っている.JR線との交差部分のコンクリートが丈夫になった.単線と複 線が入り交じる奥羽本線であるが,この橋の下で再び単線から複線になる.

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あけぼのの最後を見送る大役を果たしたキ105+ED221はそのあと車両展示会のため津軽大沢車両区に移動.この日のために作られた弘南鉄道オリジナルのヘッドマークはあけぼののヘッドマークを模して,岩木山と桜があしらわれた凝ったものだった.

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あけぼのとラッセルが交差したポイントから少し大鰐寄りに行ったところにある“大仏公園”からの俯瞰ポイントも正月休みに2年連続で通った思いでの場所.
寝台特急 あけぼの 奥羽本線 大鰐温泉〜石川 2013-1-3
 

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普段の大鰐線のラッセルは,冬の間,黙々と線路の雪を払いのけるたのもしい存在.これからも末永く頑張ってほしい! 弘南鉄道 大鰐線 石川駅 2012-1-3