昨年12月10日付けのここで第一報を記し,今年1月14日付けのここで最初の報道公開も模様をお伝えした“高輪海中築堤(高輪築堤)”の保存方針が,昨日,JR東日本から発表された.

未発掘部分を含め,高輪ゲートウェイ駅の駅前一帯に展開するこの遺跡,再開発計画との兼ね合いで保存方法やその規模について,担当者にとってはかなり頭の痛い課題となったことは,想像に難くない.
 再開発計画が,まだそれほど進んでおらず“構想”の段階ならばともかく,既に建築物などの設計も大部分のエリアで終わり,資材の発注などもなされているだろう時点での第一級遺跡出現なのだから.

この発表を目前に控えた4月10日には,第2回目の一般見学会が催され,その直前には報道公開も実施された.その時には高輪ゲートウェイの駅の真ん前,第4街区と呼ばれるエリアを見ることができた.残念ながら僕は参加することができなかったのだけれど,この時の最大のポイントは信号柱を植えるための石垣の張り出し.
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綺麗に並んだ石垣の途中がぷっくりと膨らんでいるのが判るだろうか.当初は単線で開通したが,複線化に際して設けられた駅間での閉塞信号機のためだろう.石垣の積み方から,追加ではなく最初から計画に含まれていたことが判る.写真:JR東日本

そういえばレイルのNo.117でお目に掛けた明治時代の写真にも,66頁から67頁に掛けて見開きで大きく掲載したシーンに,両腕式の信号機が写り込んでいる.出土した信号機基部が下り列車のために海側に建てられたものであるのに対し,山側にたつ,上り列車用であるわけだが.

さて,保存の規模とその方法はどうなのだろう.
 まず,第七橋梁(いままでこのブログでは第7号橋梁と記していた)のための橋台とその前後の築堤を約80mの長さで現地保存.
 続いて,第1街区と呼ばれる,田町駅寄りに計画されている公園に隣接する約40m区間を現地保存.
 そして今回の公開に含まれている信号機基部を中心とする約30mを移設保存.
 その他の大部分については,詳細かつ慎重な調査を行なって記録保存.なお,再開発に際して地面の掘り返しなどが伴わず,道路の下などに埋まる部分については,そのままの状態で埋め戻し,現地保存する.
 ということのようである.
イメージ図①
第七橋梁付近の保存イメージ.海側と築堤上に遊歩道などが設けられるようである.写真:JR東日本
イメージ図②
第1街区に設けられる公園に隣接する築堤の現地保存イメージ.公園の一角には文化創造施設が建設されるようである.写真:JR東日本
イメージ図③
そして移築保存される信号機基部を中心とする築堤のイメージ.写真:JR東日本

いずれも現時点でのイメージ図に過ぎないわけだが,ちょっと気になるのが,せっかくの海中(海上)築堤なのに,陸側の築堤がどのように保存されるのかがよく解らないこと.海側だけ見せたのでは,単なる“海岸風景”である.ただ,陸川がJR東日本の敷地でなくアンっていて,既に他のようとで使われているのならば,それはやむを得ないことではある.でもやっぱり,なんらかの“海中(海上)”を強調できるような演習は欲しい.
 それと,信号機基部のイメージ図に立つ信号機が,後年の制式信号機にみえること.せっかくのあのだから,両腕式のレプリカを製作したほうが,明治の香りを,より強く感じさせることができると思う…….

移設される信号機基部周辺の行先は,まだ正式決定していないという.いまのところ,国道15号線(第一京浜国道)の高輪ゲートウェイ駅前に設けられる広場付近を基本に検討すると発表されている.

最初に記したとおり,再開発工事が相当に進捗して時点での保存計画である.費用や時間などは大幅に変更が必要になるだろう.リリースには第3街区(橋台を含むエリア)の建物などの計画変更を行なうと明記されている.
 ましてや昨年来のCOVID-19騒ぎがまったくおさまらないどころか,悪化の兆候もある昨今である.欲をいえばきりはない.まずは英断であったと,僕は思う.
 そして今回の英断は,時を経るとともに加速度的に評価が高まってゆくものと確信している.

なお再開発計画の完成時期は,当初予定の通り令和6年度を目標としているとのことである.
スライド1
昨年12月のブログでもお目に掛けた,JR東日本の作成による現場周辺図.高輪ゲートウェイ駅の真正面が,信号柱の基部がある第4街区,その左(北)が橋台のある第3街区,もっとも左が第1街区である.写真:JR東日本
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第7橋梁の橋台をクローズアップで見る.陸側にはフェンスがあり,JR東日本の敷地ではなさそうである.
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2019年11月16日,高輪ゲートウェイ駅開業前取材に際して撮影した第3街区…後に信号柱基部が発掘される場所である.画面右の白い建物はNTN(EF58やEF15の軸箱蓋にこの3文字が鋳出されていたのを覚えている読者も多いだろう…かつての東洋ベアリングである)の東京支社.
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今年1月の第1街区築堤.ここは陸側もJR東日本の敷地だから,谷積みの石垣を観察できるのを期待したいところである.

というところで,これから急速に保存整備方法が策定されることになるわけだが,せっかくの英断を最大限に活かした姿になることを,大いに期待している.