4月と5月に京急電鉄の新1000形1890番代が報道公開されて以来,しばらくの間,新形車のお披露目に縁がなかった.次はどれだろうと思っていたら,5月も終わりになって,“27日に現地へ搬入されて,31日にお披露目実施”という報せをいただいた.
これまで,この画期的なプランについては,公式資料による車輛の完成予想イメージや,地元在住の齋藤知之さんによる,折々の状況レポートを,とれいん本誌でお伝えしてきた.
つい先日も車庫の建設途上の様子や,開業時期を令和5/2023年春への変更を掲載したばかりである.
まず路線だが,本線の延長は約14.6kmで全線複線.東北本線の宇都宮駅東口から東進して鬼怒川を渡って清原工業団地で北へ向きを変える.宇都宮テクノポリスセンターで再び東を向いて芳賀町域に進み,もう一度北へ進路をとって本田技研北門に達する.
これを第一期として優先的に工事を行っている段階だが,東北本線を跨いで駅の西側…旧市街地区…東武宇都宮駅や県庁を通り桜通り十文字付近までの約3km区間も計画されている.さらにその西側,東北自動車道と交叉して大谷間構築と呼ばれる辺りへの延伸も検討中となっている.
最初の約14.6km区間のうち,併用軌道が9.4km,新設軌道が5.1kmとなっている.
車庫は宇都宮市下平出町…県道64号線“鬼怒通り”と国道4号線バイパス(通称:新4号)との交叉点の南西側に建設中である.
ゲージは,JR線などへの乗り入れなどを勘案して1,067mmを採用した..架線集電式で電圧は大阪地下鉄第三軌条路線と同じ750Vで,これはいわゆる路面電車としては日本で初めてである.
建設と運営は,いわゆる上下分離方式で進められている.軌道整備は宇都宮市と芳賀町が担当し,運行,営業は宇都宮ライトレール株式会社が受け持つ.
さて車輛.3車体連節で全長は29,530mm,車体幅は2,650mm,そしてパンタグラフ折り畳み高さは3,625mmの両運転台車.定員は約160名で,そのうち座席定員が50名である.
製造担当は新潟トランシス.基本的には熊本市を皮切りとして岡山電軌,万葉線,富山ライトレール,そして福井鉄道で採用されているアドトランツ(ADtranz)のシステムを採用した車輛である.なおアドトランツは2001年にはボンバルディア(Bombardier)に買収されるが,同社の子会社であるボンバルディア・トランスポーテーションとして事業は継続しており,本社もアドトランツ時代と同じドイツのベルリンに所在する……今年1月にはアルストムと合併というか移管というか….日本では熊本市9700形の製造に際して新潟鐵工所(現在の新潟トランシス)とライセンス契約を結んでいており,今も継承されている.
5月27日に新潟から到着した芳賀・宇都宮ライトレールのHU300形が31日に披露された.写真は宇都宮市長や芳賀町長などによる除幕式を終えた後の記念写真.右端には広島電鉄でシーメンスからの5000形“グリーンムーバー”導入に尽力され,現在は宇都宮ライトレールの常務取締役である中尾正俊さんの姿も見える.
福井鉄道の“FUKURAM”が直近のベース車輛といえるのだろうが,前後オーバーハングが大きく,丸味があるだめ,別デザインという印象が強い.ちなみに基本色のイエローは,“雷の光”を表現しているのだそうであある.このあと,関係各方面のご協力を得て鉄道趣味誌出版社向けの撮影時間を設定していただくことができた.
ちなみに全長の29,530mmというのは軌道建設規程の制限一杯だそうで,FUKURAMの27,160mmを凌いで日本では最大級.
形式記号のHUは芳賀(Haga)と宇都宮(Utsunomiya)の頭文字を組み合わせ,形式の300は全長を示しているのだろうか.車号はパンタグラフ装備車(南北に線路が敷かれた車庫での北側がHU301-A,中間がHU301-C 反対側がHU301-Bとなっている.
台車にはドイツの歯車メーカーであるZF Friedrichshafen(Zahnradfabrik=歯車製造)の銘板がある.末尾は所在地フリートリクスハーフェン(バーデン・ヴュルテンベルク州)を示す.
HU301-Bから客室を見る.床面の一部には大理石模様を表現,腰掛や日除けには和風の柄が施されている.画面手前右に見えるICカードリーダーは全ての側扉に設置され,どの飛びッラからも乗降可能としているのが新しい.
車体幅は2,650mmでFUKURAMと同じ.それによって日本の超低床車としては最大の160名という定員を実現し,座席定員も50名を確保した.
運転席.アドトランツ系列の車輛では既にお馴染みの光景である.速度計は80km/hまで刻まれている.
もちろんワンマン運転を前提とした設計で,前述の前扉へのICカードリーダー設置もそのひとつ.車外には後方確認用カメラが設置されている.
櫛桁部に取り付けられた銘板.製造所は“トランシス”とのみ表記,デザインはGKデザインが担当している.
このHU300形…今年3月に“ライトライン”という愛称が与えられた….開業までに17編成が納入されることになっている.
式典が行なわれた位置から車庫の敷地北方を望む.画面右の道路が国道4号線バイパスである.左手に建設中の建物は事務所棟だろうか.
敷地の南側には検修棟と思われる建物も建設中である.これらの施設が整い,今はまだ1本しか貼られていない架線が張りめぐらされるころには,量産車も出揃いはじめることだろう.
それにしても広い車庫である.ざっと見渡したところでは30編成ぐらいは余裕で収容できるような気もする.それだけ発展性の高いプロジェクトなのである.首尾よく実現することを,大いに期待したい.
車輛の詳しい紹介は,近いうちに実現できると思う.乞うご期待!
……この宇都宮行きの翌々日,即ち昨日には田園都市線の鷺沼駅に隣接する東京地下鉄鷺沼車庫で最新型18000系の報道公開が催された.そして明日,6月4日には,また別の車輛公開も行なわれる.あぁ嬉し忙し!
これまで,この画期的なプランについては,公式資料による車輛の完成予想イメージや,地元在住の齋藤知之さんによる,折々の状況レポートを,とれいん本誌でお伝えしてきた.
つい先日も車庫の建設途上の様子や,開業時期を令和5/2023年春への変更を掲載したばかりである.
まず路線だが,本線の延長は約14.6kmで全線複線.東北本線の宇都宮駅東口から東進して鬼怒川を渡って清原工業団地で北へ向きを変える.宇都宮テクノポリスセンターで再び東を向いて芳賀町域に進み,もう一度北へ進路をとって本田技研北門に達する.
これを第一期として優先的に工事を行っている段階だが,東北本線を跨いで駅の西側…旧市街地区…東武宇都宮駅や県庁を通り桜通り十文字付近までの約3km区間も計画されている.さらにその西側,東北自動車道と交叉して大谷間構築と呼ばれる辺りへの延伸も検討中となっている.
最初の約14.6km区間のうち,併用軌道が9.4km,新設軌道が5.1kmとなっている.
車庫は宇都宮市下平出町…県道64号線“鬼怒通り”と国道4号線バイパス(通称:新4号)との交叉点の南西側に建設中である.
ゲージは,JR線などへの乗り入れなどを勘案して1,067mmを採用した..架線集電式で電圧は大阪地下鉄第三軌条路線と同じ750Vで,これはいわゆる路面電車としては日本で初めてである.
建設と運営は,いわゆる上下分離方式で進められている.軌道整備は宇都宮市と芳賀町が担当し,運行,営業は宇都宮ライトレール株式会社が受け持つ.
さて車輛.3車体連節で全長は29,530mm,車体幅は2,650mm,そしてパンタグラフ折り畳み高さは3,625mmの両運転台車.定員は約160名で,そのうち座席定員が50名である.
製造担当は新潟トランシス.基本的には熊本市を皮切りとして岡山電軌,万葉線,富山ライトレール,そして福井鉄道で採用されているアドトランツ(ADtranz)のシステムを採用した車輛である.なおアドトランツは2001年にはボンバルディア(Bombardier)に買収されるが,同社の子会社であるボンバルディア・トランスポーテーションとして事業は継続しており,本社もアドトランツ時代と同じドイツのベルリンに所在する……今年1月にはアルストムと合併というか移管というか….日本では熊本市9700形の製造に際して新潟鐵工所(現在の新潟トランシス)とライセンス契約を結んでいており,今も継承されている.
5月27日に新潟から到着した芳賀・宇都宮ライトレールのHU300形が31日に披露された.写真は宇都宮市長や芳賀町長などによる除幕式を終えた後の記念写真.右端には広島電鉄でシーメンスからの5000形“グリーンムーバー”導入に尽力され,現在は宇都宮ライトレールの常務取締役である中尾正俊さんの姿も見える.
福井鉄道の“FUKURAM”が直近のベース車輛といえるのだろうが,前後オーバーハングが大きく,丸味があるだめ,別デザインという印象が強い.ちなみに基本色のイエローは,“雷の光”を表現しているのだそうであある.このあと,関係各方面のご協力を得て鉄道趣味誌出版社向けの撮影時間を設定していただくことができた.
ちなみに全長の29,530mmというのは軌道建設規程の制限一杯だそうで,FUKURAMの27,160mmを凌いで日本では最大級.
形式記号のHUは芳賀(Haga)と宇都宮(Utsunomiya)の頭文字を組み合わせ,形式の300は全長を示しているのだろうか.車号はパンタグラフ装備車(南北に線路が敷かれた車庫での北側がHU301-A,中間がHU301-C 反対側がHU301-Bとなっている.
台車にはドイツの歯車メーカーであるZF Friedrichshafen(Zahnradfabrik=歯車製造)の銘板がある.末尾は所在地フリートリクスハーフェン(バーデン・ヴュルテンベルク州)を示す.
HU301-Bから客室を見る.床面の一部には大理石模様を表現,腰掛や日除けには和風の柄が施されている.画面手前右に見えるICカードリーダーは全ての側扉に設置され,どの飛びッラからも乗降可能としているのが新しい.
車体幅は2,650mmでFUKURAMと同じ.それによって日本の超低床車としては最大の160名という定員を実現し,座席定員も50名を確保した.
運転席.アドトランツ系列の車輛では既にお馴染みの光景である.速度計は80km/hまで刻まれている.
もちろんワンマン運転を前提とした設計で,前述の前扉へのICカードリーダー設置もそのひとつ.車外には後方確認用カメラが設置されている.
櫛桁部に取り付けられた銘板.製造所は“トランシス”とのみ表記,デザインはGKデザインが担当している.
このHU300形…今年3月に“ライトライン”という愛称が与えられた….開業までに17編成が納入されることになっている.
式典が行なわれた位置から車庫の敷地北方を望む.画面右の道路が国道4号線バイパスである.左手に建設中の建物は事務所棟だろうか.
敷地の南側には検修棟と思われる建物も建設中である.これらの施設が整い,今はまだ1本しか貼られていない架線が張りめぐらされるころには,量産車も出揃いはじめることだろう.
それにしても広い車庫である.ざっと見渡したところでは30編成ぐらいは余裕で収容できるような気もする.それだけ発展性の高いプロジェクトなのである.首尾よく実現することを,大いに期待したい.
車輛の詳しい紹介は,近いうちに実現できると思う.乞うご期待!
……この宇都宮行きの翌々日,即ち昨日には田園都市線の鷺沼駅に隣接する東京地下鉄鷺沼車庫で最新型18000系の報道公開が催された.そして明日,6月4日には,また別の車輛公開も行なわれる.あぁ嬉し忙し!