昨年11月5日のここで紹介した,相模鉄道の“デザインブランドアッププロジェクト”.いよいよ車輛も現実に姿を見せた.
 対象となったのは9000系の第3編成.
  平成7/1995年製で,正面と側面の表示装置にLEDが採用された最初の編成でもある.平成25/2013年には制御装置の更新が施工され,東洋電機製 造のインバータ装置が日立製のVFI-HR2820Qになった.その他,車体塗装の変更から前照燈のLED化など種々の改良を経て,昨年夏から,このプロ ジェクトの車輛での第一陣となるべく,かしわ台車両センターに入場していたものである.
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7編成中の4編成がかしわ台車両センターに勢揃いした9000系.左は幕式の表示装置が残る第1編成,この日の主役第3編成,現在の標準的な姿である第6編成,旧塗装の赤帯を残す第5編成.車体塗色の変更に伴って車号の書体も変化しているのが判る.平成28/2016-3-9

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篠突く雨の中,厚木線の厚木でポーズをとる9703編成.完成予想図で知ってはいたものの,現実に目の前に現われてみると,“YOKOHAMA NAVY BLUE(ヨコハマネイビーブルー)”のインパクトは強かった.

車号の新書体は1980年代以降のDIN1451をベースにアレンジしたものだそうで,ドイツに馴染みの深い身には見覚えがあるはずだ.
 台車やパンタグラフ…この編成は菱枠パンタを残す最後の1本…,空調装置などは昨年の入場前と同じ.
 正面では前照燈の位置が窓下から窓上左右に移動し,行先・列車種別表示装置がフルカラーLEDになるとともに,運行番号表示が非常扉上から種別表示装置側へ移動していることや,急行燈が撤去されているのにも気づかされる.

さて,今回のリニューアルのハイライトは,やはり客室.中でも5,8号車(モハ9108,9109)のセミクロスシートに使われた,スコットランド製の本革,だろう.

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スコットランド製の本革を使用したクロスシート.背もたれの形状も目新しい.乗客からの高い評価を期待したいところである.

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一般のロングシート車も全面更新されている.全体的にモノトーンとなったのが特徴.吊り手の輪が円でも三角形でもないのも,他にはないかも.

もうひとつ,通勤車としては画期的なのが室内燈.上の写真では,ごく当たり前の光景だけれと,下の写真をご覧になれば……
 決して,カメラの色温度設定を間違えたのではない.

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通常は昼光色だけれど,夜間,あるいは季節によってはこの,電球色での営業運転を検討しているという.デジタルカメラの場合,ホワイトバランスの設定をオートにしていると,どんな光源でも同じ色に調整してくれてしまうから,あえて“晴天”に設定しての撮影.

と,画期的なことがらばかりのこのリニューアル9000系,車号に変化はないものの,形式は従来の9000に“R”を付加しており,例えば横浜方先頭車はクハ9700R形となっている.
  今後の進め具合については,都心直通運転開始時点で使用される可能性のある車輛を対象にすることになっており,9000系は7編成のうち6編成が対象とな る.8000系は一部が対象となる.もっと新しい10000系や11000系は全部,“YOKOHAMA NAVY BLUE”に衣更えすることになるわけだ.
 なお,2番目の施工は,旧塗装で残っていた9000系第5編成を,この春以降に入場させる予定…….

と,ここまでは昨日の話.
  相模鉄道では今日,記者発表会を横浜で催し,その中で9000系や新制服を披露するのと同時に,と新直通運転用新型車20000系の構想を発表したのだっ た.僕は今月号の締切など,仕事の都合で伺うことができなかったのだが,発表によれば,新型車はどうやらアルミ合金製で,裾絞りはなく,半自動スイッチら しきボタンを側扉脇に備えている.正面には中心からオフセット下位値に非常扉が設けられ,窓下は自動車のラジエターグリル状の装飾(?)が見える.なんと なく全体の雰囲気からは,日立製作所の薫り(?)が…….だとすれば,相模鉄道にとっては“回帰”ということになるわけだが,駆動装置も直角カルダンに戻 るのかどうなのか…….
 室内は,昨日の9000系にそっくりって,それは当たり前のことであるわけだが.
 これから数年後に予定されている開業目指して,どのように熟成されてゆくか,大いに注目してゆきたいところである.

※2016.03.29:一部語句修正