今月の とれいん もうご覧いただけただろうか.
僕の担当は小湊鐵道だった.今回の取材でも,記憶に残るできごとがたくさんあった.なにより,路線が2ヵ所に亘って寸断されているという,困難な時期であるにもかかわらず,親身になって対応してくださった小湊鐵道の皆さんには,心から感謝しているところである.ありがとうございました.
そのおかげで纏めることができた今回のMODELERS FILE.キハ200を14輛全部についてご紹介するとともに,唯一の非冷房現役車となったキハ209については形式写真や車輛内外の細部写真,真横観察など,実物ファンにもモデラーにも存分に楽しんでいただける内容になったと自負しているところである.
それに加えて,他誌ではなかなか目が向けられない貨車についても,創業以来の古典貨車に加え,今年になってから新たに購入された2輛のホッパー車と3輛の長物車も経緯や用途などをご紹介した.
半世紀以上に及ぶ小湊鐵道の“静寂”を破った,元JR東日本のキハ40についても,もちろん紹介している.折しも,先行の2輛のうち1輛が取材途上の7月10日から,一般の営業運転に就役しはじめた.残る4輛,とりわけ,7月末になって搬入されたばかりの3輛の動向については未確定の部分が多く,その詳細については,次のお楽しみ!
取材しておきながら誌面に反映することができなかった題材も,いつものことながら多い.
そこで,せめてこのブログで,一部だけでもお楽しみいただこう,というのが今週のテーマである.
ではなにを……と,さんざん悩んだのだけれど,結論は,駅.そのトップはいうまでもなく,里見である.
20年ほど前,初めて訪問した時には,無人駅で,行き違い設備も撤去されていたと記憶している.それが今では,駅員さんが常駐し,線路やホームも整備されて上総牛久駅に継ぐ,立派な基幹駅となっている.
加えて,昨年になって五井機関区から移動してきたという,2輛の無蓋車と1輛の有蓋緩急車が,実に何とも風雅なアクセサリーとして,この駅をひときわ引き立てている.
記事のタイトルカットには駅に進入してくるキハ208と貨車の取り合わせをお目に掛けたが,そこから振り返った風景が,これである.列車後尾なのだから,本当ならば尾燈を燈しているはずなのだが,入換作業に備えて前照燈が点いたものだから,駅本屋と気動車を主題にした,別の1枚の絵を描くことができてしまった.
え?右側通行なんて不自然……ではない.昔から,私鉄でも国鉄でも,例えば行き違いがない場合には駅本屋にもっとも近いホームに列車をつけて発着させることが,当たり前に行なわれてきた.むろん,それなりの信号設備が備わっていることが条件ではあるが.
ちなみに小湊鐵道ではそのような設備がないので,例えばこの里見での折り返しに際しては,係員の誘導によって飯給(いたぶ)方に引き上げて2番線ホームに据え付けられる.1番線と2番線の間には中線があるのだけれど,五井方には車止めがあって通り抜けることはできない.行き違い設備復活に際して配線変更がなされたものらしい.いずれ,この駅から発していた砂利取り線のことを含めて,探究してみたいと思っている.
続いては……もうひとつの基幹駅である上総牛久……ではなく,上総中野方の隣りの駅である飯給へ向かった.
どこをどう読めば“飯給”が“いたぶ”になるのか,とにかく“いたぶ”である.今では正真正銘の無人駅である.線路を挟んでホームの反対側は桜並木となっていて,春には,やっぱり一幅の絵が描かれる.
この飯給の駅には,10年ほど前,もうひとつ名物が誕生している.それはギネスブックへの登録を目指して建設された,巨大トイレである.
この板囲いの中が,トイレである.残念ながら(?)女性専用ということで,内部の写真は,ない.
残念ながら登録はならなかったらしいが,この広々とした空間,それも屋根のない,青空や星空の下で用を足すというのは,どんな気分だろうか,いつの日にか体験したいとは思うが,それは,たぶん,叶わないだろう.
訪問した時点では,この駅に発着する列車はなかった.けれど,8月20日,めでたく復活した.今ごろはきっと,草生した線路も生き返っていることだろう.
そしてようやく,上総牛久……の,前に上総川間に寄り道.
第2次世界大戦後に開設された無人駅である.だから,駅本屋には,それほど趣きがあるわけではない.
けれどホームの反対側に回ると,風情は一変する.
ここまで周囲に融け込んでしまっている駅って,現代には希有の存在ではないかと思うのだが,いかがだろう.
そして……
駅の外れの“勝手踏切”からの光景である.駅だけではなく線路も,どこが境界線なのか.じつにまったく,緩やかな光景である.ずっと失われないで欲しい.
ようやく上総牛久.
里見とともに行き違い可能駅である.駅の本屋は里見よりも一段立派に見えるが,実際には同じぐらいの大きさのようだ.なぜそう見えるのか,それは,この駅は樹木に覆われていないからではないか,と,思う.ほかの駅の本屋も,同じポリシーのデザインが採用されているが,趣きはその駅ごとに違っている.やっぱり,印象というのは周囲の環境に左右されるのだろう.
……駆け足で4つの駅を巡った.この他にも馬立,上総鶴舞(つい最近,この駅にもユニークなトイレが設置されたとのこと.ぜひ見に行かなくちゃである),海士有木,上総山田……奥の方には,もっともっと.
それらは,また次の機会に!
僕の担当は小湊鐵道だった.今回の取材でも,記憶に残るできごとがたくさんあった.なにより,路線が2ヵ所に亘って寸断されているという,困難な時期であるにもかかわらず,親身になって対応してくださった小湊鐵道の皆さんには,心から感謝しているところである.ありがとうございました.
そのおかげで纏めることができた今回のMODELERS FILE.キハ200を14輛全部についてご紹介するとともに,唯一の非冷房現役車となったキハ209については形式写真や車輛内外の細部写真,真横観察など,実物ファンにもモデラーにも存分に楽しんでいただける内容になったと自負しているところである.
それに加えて,他誌ではなかなか目が向けられない貨車についても,創業以来の古典貨車に加え,今年になってから新たに購入された2輛のホッパー車と3輛の長物車も経緯や用途などをご紹介した.
半世紀以上に及ぶ小湊鐵道の“静寂”を破った,元JR東日本のキハ40についても,もちろん紹介している.折しも,先行の2輛のうち1輛が取材途上の7月10日から,一般の営業運転に就役しはじめた.残る4輛,とりわけ,7月末になって搬入されたばかりの3輛の動向については未確定の部分が多く,その詳細については,次のお楽しみ!
取材しておきながら誌面に反映することができなかった題材も,いつものことながら多い.
そこで,せめてこのブログで,一部だけでもお楽しみいただこう,というのが今週のテーマである.
ではなにを……と,さんざん悩んだのだけれど,結論は,駅.そのトップはいうまでもなく,里見である.
20年ほど前,初めて訪問した時には,無人駅で,行き違い設備も撤去されていたと記憶している.それが今では,駅員さんが常駐し,線路やホームも整備されて上総牛久駅に継ぐ,立派な基幹駅となっている.
加えて,昨年になって五井機関区から移動してきたという,2輛の無蓋車と1輛の有蓋緩急車が,実に何とも風雅なアクセサリーとして,この駅をひときわ引き立てている.
記事のタイトルカットには駅に進入してくるキハ208と貨車の取り合わせをお目に掛けたが,そこから振り返った風景が,これである.列車後尾なのだから,本当ならば尾燈を燈しているはずなのだが,入換作業に備えて前照燈が点いたものだから,駅本屋と気動車を主題にした,別の1枚の絵を描くことができてしまった.
え?右側通行なんて不自然……ではない.昔から,私鉄でも国鉄でも,例えば行き違いがない場合には駅本屋にもっとも近いホームに列車をつけて発着させることが,当たり前に行なわれてきた.むろん,それなりの信号設備が備わっていることが条件ではあるが.
ちなみに小湊鐵道ではそのような設備がないので,例えばこの里見での折り返しに際しては,係員の誘導によって飯給(いたぶ)方に引き上げて2番線ホームに据え付けられる.1番線と2番線の間には中線があるのだけれど,五井方には車止めがあって通り抜けることはできない.行き違い設備復活に際して配線変更がなされたものらしい.いずれ,この駅から発していた砂利取り線のことを含めて,探究してみたいと思っている.
続いては……もうひとつの基幹駅である上総牛久……ではなく,上総中野方の隣りの駅である飯給へ向かった.
どこをどう読めば“飯給”が“いたぶ”になるのか,とにかく“いたぶ”である.今では正真正銘の無人駅である.線路を挟んでホームの反対側は桜並木となっていて,春には,やっぱり一幅の絵が描かれる.
この飯給の駅には,10年ほど前,もうひとつ名物が誕生している.それはギネスブックへの登録を目指して建設された,巨大トイレである.
この板囲いの中が,トイレである.残念ながら(?)女性専用ということで,内部の写真は,ない.
残念ながら登録はならなかったらしいが,この広々とした空間,それも屋根のない,青空や星空の下で用を足すというのは,どんな気分だろうか,いつの日にか体験したいとは思うが,それは,たぶん,叶わないだろう.
訪問した時点では,この駅に発着する列車はなかった.けれど,8月20日,めでたく復活した.今ごろはきっと,草生した線路も生き返っていることだろう.
そしてようやく,上総牛久……の,前に上総川間に寄り道.
第2次世界大戦後に開設された無人駅である.だから,駅本屋には,それほど趣きがあるわけではない.
けれどホームの反対側に回ると,風情は一変する.
ここまで周囲に融け込んでしまっている駅って,現代には希有の存在ではないかと思うのだが,いかがだろう.
そして……
駅の外れの“勝手踏切”からの光景である.駅だけではなく線路も,どこが境界線なのか.じつにまったく,緩やかな光景である.ずっと失われないで欲しい.
ようやく上総牛久.
里見とともに行き違い可能駅である.駅の本屋は里見よりも一段立派に見えるが,実際には同じぐらいの大きさのようだ.なぜそう見えるのか,それは,この駅は樹木に覆われていないからではないか,と,思う.ほかの駅の本屋も,同じポリシーのデザインが採用されているが,趣きはその駅ごとに違っている.やっぱり,印象というのは周囲の環境に左右されるのだろう.
……駆け足で4つの駅を巡った.この他にも馬立,上総鶴舞(つい最近,この駅にもユニークなトイレが設置されたとのこと.ぜひ見に行かなくちゃである),海士有木,上総山田……奥の方には,もっともっと.
それらは,また次の機会に!