先週に続いて,とれいん9月号MODELERS FILEで採り上げた小湊鐵道取材の落ち穂拾い集.
 今週は,里見駅に留置されていた古典貨車3輛の中から,2輛の無蓋貨車の話題.
 この無蓋貨車については,小湊鐵道の資料ではトム10形のトム11と12となっている.ところが,インターネット上の趣味人に寄る際とではさまざまな説があり,どれが本当なのか,よく判らない.なお形式は,本誌では資料によってトム10形と記したが,どうやらトム1形が正解のようである.
 それもそのはず,なにしろ検査標記の一部が僅かに残るだけで,車号などは全く読み取ることができないほどに“熟成”されているから.
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本誌ではモノクロでしかお目に掛けることができなかった.カラーで見ると,その“枯れ具合”が,実に芸術的であることが,より鮮明となるだろう.写真はワフ1の隣に連結された,トム11と思われる無蓋車.
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編成(?)の上総中野方に組み込まれた,トム12と思われる有蓋車.荷台にはミルク缶のようなドラム缶のような容器が積まれ,その上には自動車ようなオブジェが鎮座している.
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今から16年前の2005年には,2輛揃って上総牛久駅の側線に留置されていた.2005-7-23

写真手前が上総中野方で,端梁にバッファーを取り外した穴が見えるこの貨車の側面にはトム11という番号が,はっきりと残っていた.

そこで,締切を過ぎてから(!),この写真を手掛りに,16年の間に方向転換していないことを前提として,じっくりと車号の判定を試みたわけである,
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再び現代の姿.上総中野方にバッファー跡がある無蓋車.
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五井方にバッファー跡の残る無蓋車.

仔細に観察してみると,例えば連結器受のアングル材のボルトの数や標識燈掛けの形などから,やっぱり上総中野方におバッファーあとがある個体が,トム11と判定して間違いなさそうである.
ではもう1輛がトム12ということになるのだが……
 ことはそう簡単ではない.旧型貨車保存図鑑というウェブサイトの中に小湊鐵道のセクションがあって,その中に2003年に撮影されたというトム“10”の写真が掲載されているのだった.
 このトム“10”の写真では端梁にバッファー跡の穴が写っていて,撮影地である上総山田駅の線路配置から,それが五井方であることが判る.ということは,現在,トム12とされている貨車は,実はトム10なのだということになるわけだが,さて,真相は…….

さてこの無蓋車,トム11は2軸ともプレート輪心なのだが,もう1輛の五井方,即ちバッファー穴のある側の車輪がスポーク輪心である.これも番号判定の手掛りとなるわけだが,旧型貨車保存図鑑に掲載されているトム10がまさにその通りなのである.しかも,ちょっと位置は移動しているが標識燈掛けの形はそのものズバリだし,連結器回りのボルト数なども一致する.ということで,どうやらトム10と断定してよさそうである.

うむ.あとひと月早く,このウェブサイトに辿り着いていれば…….

気を取り直して.自分で撮影した写真をさらに仔細に観察しているうちに,トム10であろう貨車の台枠に,銘板を発見してしまった.
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本誌の19頁に掲載した写真を思いっきり明るくし,右端だけをトリミングして切り出した結果が,この画像である.

ブレーキハンガーの左側,台枠側面に楕円形の銘板の下半分が見えるだろう.文字は…読み取れない.取り付け位置は,足踏みブレーキの反対側.セオリー通りである.
 ということは,もう1輛のトム11にも残っている可能性があるというわけである.取り付けられているとすれば,里見駅では貨物扱いホーム側ということになる.バッファー痕のある端梁の写真は,まさにそちら側からの撮影である.台枠,観察したはずなのになぁ…….

※2021.09.03:タイトル小修正