僕や,ここの読者のみなさんにとっての日立製作所といえば,笠戸工場で製造された数々の蒸気機関車や電車の数々,そして水戸工場でのディーゼル機関車や電気機関車の姿が頭をよぎることだろう.“レイル”でもNo.49で,DD51 1の落成時の写真を,折込の組立図とともに特集したことがある.
 でも,TVコマーシャルで英国向け輸出の話題を積極的に取り扱っているとはいえ,それは日立というグループの,ごく一部の事業に過ぎないこともまた,認識しておられることと思う.
 そういう日立製作所のビジネスを広く紹介するためのイベントが,今日と明日の二日間,東京有楽町の東京国際フォーラムで開催されている.
  この催し,そもそもは1999年に“日立ITコンベンション”の名前で始まり,2005年に現在の名称に変更された.想定する来場対象者は,開催概要にも “日立グループとの協創によるビジネスの革新や新たな可能性を見出していただける二日間となるよう、準備を進めてまいります。”と記されているとおり,一 般ユーザーではない.同時に開催されているセミナーのテーマも,“共生自律分散が導くイノベーション”に始まり“コ・キュレーションにより持続可能な多世 代共創社会のデザイン”まで,いわゆる趣味とは無縁の内容ばかり.
 とはいえ,そんな中にも好奇心を発揮するのが僕のよい(悪い?)ところ.

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会場入り口すぐのテーマステージでの映像によるプレゼンテーション.トップの話題は,英国での車輛と保守の受注,そして車輛製造工場建設だった.

展示は7つにカテゴライズされ,鉄道はそのうちのインフラストラクチャーの,モビリティに含まれていた.僕たちの興味の中心となる車輛は,今年7月に同じ会場でで開催された“UIC世界高速鉄道会議”でも展示されていた英国向けのクラス800が模型で展示されていただけだったのが,ちょっと残念.
 むしろ鉄道部門の展示のメインは,旅客向け情報提供サービスのシステム展開に重点が置かれ,駅や車輛内での情報を,いかに見やすく正確に提供できるか,ということが強調されていた.

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イ ンフラ部門全景.左手前に展示されているのが旅客向けの情報提供サービスの数々.手前からスマートフォン向けアプリケーション,異常事対応用ディスプレ イ,側扉上の情報表示装置,地域単位での人の動きをリアルタイムに表示するシステムなどが並び,その奥に,クラス800関連の展示だった.

他の6つの分野とは,アーバン,ヘルスケア,エネルギー,セキュリティ,インダストリー,そしてビジネス&サービス.
  それらの中で,興味をそそられたのが,まず,“CrystEna”.40フィート・コンテナの中にリチウム・イオン電池を搭載し,最先端の制御装置で風力 発電や太陽光発電などの分散型再生可能エネルギーをコントロールして蓄電,最大1メガワットの電力を供給するというシステム.鉄道でも,ピーク時や異常事 の電源供給や,非電化区間での蓄電池車運用に利用できないか…….トラックの模型を眺めながら,思ったことである.

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コンテナ内部が見えるように工夫されたトラックのカットモデル.かつて多くの電鉄会社が持っていた移動変電車の現代版だ!と思ってしまった.

もうひとつは,セキュリティ関係の展示にあった,“車両下部撮影装置”.単純にいえば,可搬型のカメラを路上に置いて車輛…この場合は自動車の下面に不審物が取り付けられていないかをチェックする装置.
  かつて1988年の東西ベルリンの間の検問所では,自動車の下部に鏡を突っ込んでチェックしていたのを思い出したのだった.時代を遡れば,1974年の初 めての訪欧…初めての外国旅行でもあった…に際して,ソ連とポーランドとの国境の駅で,警察だか兵士だかが客室の隅々まで検査し,同時に車外でも床下に不 審なものがないか,屈み込んでチェック…….

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路 面に置いたカメラによってリアルタイムで画像をチェックし,不審車の侵入を阻止することができる.可搬型というのがミソで,必要に応じてどこにでも設置で きる.車輛を停止させないでもよいというのも特徴.車輛番号認識装置やシーンカメラ(画面で三脚の上に載っている銀色の筒)などを組み合わせることで,万 全の体制を構築できるわけである.

このフォーラム.今年の会期は30日まで.展示会もセミナーも事前登録すれば入場場無料(ただしセミナーは既にほとんどが満席).登録に資格の制限はないから誰でも参加できる.興味のある方は,趣味人を対象にした催しでないことを認識の上で,お楽しみいただきたいと思う.

※ここに掲載した写真は,報道関係の資格で入場し,撮影したものです.