先週のここでは小湊鐵道の“里山トロッコ”お披露目の模様をご紹介した.その前,9月17日のここでは東京都交通局荒川線の新型車8900形のことを記した.
  そして今回は再び東京都交通局.日暮里舎人ライナーの新型車330形である.この路線,東京在住の方以外には,ちょっとなじみの薄い路線かもしれない.で も,地元の人たちにとっては,それまでの,公共交通機関のエアポケットのような状態から脱却できた,大いなる存在なのである.
 開業は平成20/2008年春のこと.以来,乗客数は増える一方で,車輛も少しずつ増備され続けて,現在は16編成を数えるに至っている.
 そして今年度,さらなる増発を目的として1編成が増備されることになったわけだが,開業以来初めてのフルモデルチェンジとなり,形式も300形から330形と改められた.

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報道公開は舎人公園駅の近くにある車庫で催された.留置線でポーズをとる新型車は,製造担当が新潟トランシスから三菱重工に移り,車体の素材もステンレス鋼からアルミ合金製に変更となっている.全体のデザインもほぼ一新.側扉も片開きから両開きに変更されている.

変更点は見た目にとどまらない.台車はステア式からMTR303という形式の1軸ボギーに変更となった.タイヤは横浜ゴム製で315/70R20というサイズが装着されていた.主制御装置はMAP-111-A55V153,充電整流器はCN-EAB5という,いずれも三菱電機製.電動空気圧縮機は三菱重工製のURC8000-Ⅰが採用されている.

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MTR303形台車.4案内輪車軸ボギー式という.タイヤ間にちらりと見える通り,デファンレンシャルギヤー(差動装置)を介した直角駆動式.タイヤには普通の空気ではなく窒素ガスが充填されている.

一歩客室に足を踏み入れると,腰掛けがオールロングシートであることに気づかされる.最初に記した通り,この路線の乗客数は増える一方であり,混雑緩和のための措置だという.照明はカバー付きタイプのLED.ちなみに前照燈も尾燈もLEDである.
 側扉の上,鴨居部部分には1輛に2ヵ所ずつ,液晶(LCD)による情報表示装置が取り付けられている.15インチ2画面がセットになっており,左側には各種情報,右には行先や開閉するドアの案内などを表示する.

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腰掛けは1人分ずつ独立したバケットタイプ.一般部は緑と黒,優先席は赤と黒の組み合わせ.背摺りと袖仕切りには“NIPPORI TONERI LINER”の文字があしらわれている.この車輛の吊り手にも,都電8900形と同様の“遊び”を見ることができる.

さ て,基本スペックの紹介がまだだった.電気方式は三相交流600V,50Hz.5輛固定編成で,編成全長は45m.最大幅は2,490mm,走行面上最大 高さは3,325mm.自重は先頭車が10.7t,中間車が10.1t.最高運転速度は時速60km.保安装置はATCでATOによる自動運転.主電動機 の定格出力は110kWで1編成に5基搭載だから,編成出力は550kWということになる.編成定員は262名.

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前照燈は16粒が1ユニットに纏められたタイプ.興味深いのは前照燈下部のガラス窓.千葉都市モノレールの“床の窓”という例はあるものの,新交通システム でこの高さに窓を設けても,見えるのはコンクリート製の走行路のみだし,そもそも,どのような姿勢で覗き込むのか…と思ったら,室内全体を明るくみせるた めの工夫の一環なのだそうだ.

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無人の自動運転が“ウリ”の新交通システムだが,この日の試乗列車では,運転そのものは自動だったものの,運転席に人が乗務されているという,なかなか貴重 な体験ができた.写真の撮影場所は西日暮里の近く.荒川を境に都会と郊外を高架橋の上から一時に体感できる路線,それが日暮里舎人ライナーといえる.そう いえば,車体側面に描かれている帯色の,マゼンタは都会地を,緑は郊外をイメージしているのだそうだ.

この330形,10月10日から営業運転を開始する予定だという.
 ちなみに,今年度はこの1編成だけだが,来年度にももう1編成の増備が予定されている.

※2015.10.09:一部誤記及び表現などを修正.