先週から今週にかけて,東西各私鉄から新車のお披露目や構想発表が相次いだ.

※今回の各画像は,枚数制限をクリヤーするために複数画像を結合しています.その結果,サイズがいつもより格段に大きいので,画像をクリックする際には充分ご注意ください.また,文章もいつもより長いです.

最初は,春に新造が公表されていた阪神電鉄の5700系.6月12日に尼崎車庫で鉄道趣味誌向けの報道公開が行なわれたので,7月号最後の原稿を印刷所に入れるや現地へと飛んだ次第.
 概要は5月号の“いちぶんのいち情報室”で既にお伝えしている通りだが,同じ近畿車輌製とはいえ急行用の1000系とは,色も形も大きく印象が異なっていて,阪神電車に新風を吹き込むことが期待された.
 この5700系は在来の5100系の置き替えが目的だから,来年度以降に順次量産の上,合計13編成を投入する…5000系と同じ数…ことになっている.今回の1編成4輛は8月頃から営業運転に投入予定という.

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機構的には阪急電鉄1000系用をベースとした主制御装置や永久磁石同機電動機(PMSM)を採用するなど,“阪急阪神グループ”の一員として開発・製造コ ストの抑制に努めている様子がうかがえる(左).客室(右)でも側扉上に千鳥城に配置された液晶画面は阪急1000系と同じ32インチハーフサイズ.しか し,側扉の半自動扱いスイッチなどの新機軸も採り入れ,腰掛や内張りなどは独自のデザインで新味を強調.写真:前里 孝

同じ関西の神戸電鉄で は,6月9日に6500系の新造計画を発表した.6000系の正常進化タイプともいえる内容で,外観や色遣いに新味は薄いものの,全密閉型主電動機や“最 新の半導体素子を使用した主制御装置”,各種照明のLED化など機能性を向上させるとともに,いわゆるユニバーサルデザインを推進した客室設備が特徴とな る.3輛編成でMc+T+Mc.

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神戸電鉄6500系の外観(左)と客室(右).確かにこの完成予想図を見ただけでは6000系との違いを見いだすのは簡単ではない.特徴は室内にあり,取り付け高さの種類が増えた吊り手や腰掛各部のスタンションポール,側扉上の液晶ディスプレイなどにある.製造は川崎重工が担当する.写真:神戸電鉄

6月16日には,今年度の設備投資計画に盛り込まれていた西武鉄道の観光電車について概要が発表された.
 ベースとなるのは4000系で,足廻りなど主要機器は種車のままとし,車体の内外装を一新するという.そういう意味では先年の東武鉄道634形“スカイツリートレイン”と同手法といえるかもしれないが,サービス内容は大きく異なる.
 それは,沿線の景色を楽しみながら食事ができること.“特別で優雅な時間をお届けします”とのことである.
 外観は“自然を貫く荒川の水の流れを車両のエクステリアに取り入れてダイナミックに表現”することになっている.
 今のところは,西武新宿及び池袋と西武秩父の間での運転を予定とのことで,秩父鉄道への乗り入れ運転についてはリリースでは触れられていない.
 営業運転開始時期は,平成28/2016年春以降の予定.

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西武鉄道4000系改造の観光電車完成予想図.室内は全ての席で食事ができるように改造される.1号車は多目的スペースとトイレ,2号車(写真右上)はオー プンダイニング(定員26名),3号車(車新左下)はオープンキッチンスペース,4号車(写真右下)はオープンダイニング(定員26名).写真:西武鉄道

そして6月17日,東武鉄道東京地下鉄の共同発表として,日比谷線新型車の概要が発表された.同線車輛の20m化については,かねて発表されていたことだが,ようやく具体的なスペックが明らかになった.
  東武の形式は70000系,東京地下鉄では13000系と呼ばれるこの電車,いわゆる“0.5M”方式で7輛全部が電動車となる.全28軸のうち半分の 14軸(各台車の車端側)が動軸というわけである.パンタグラフは中目黒方から2,4,6輛目に搭載しそのうち4輛目は2基.主電動機はPMSM)採用と あるが,主制御装置については触れられていない.
 台車には操舵システムを組み込むと明記されている.東京地下鉄銀座線1000系用と同等のシステムなのだろうが,確かに急曲線の多い日比谷線では効果絶大かもしれない.
 製造所は,東京地下鉄については既に近畿車輌から受注が発表されているが,東武についても同日付で近畿車輌から受注が公表されている.同一メーカーで一貫して製造することによるコスト削減を狙ったものだろう.
 投入は“2016年度から2019年度にかけて”とされている(会計年度の表記は本来なら“平成28年度から平成31年度”となるわけだが).
 既存の20000系や03系の動向が,とても気になるところ.なにしろ地方私鉄には手頃な18m級車体を持つ電車なのだから.ただし,制御方式がネックになるかもしれないが.それと,東武ではもしかしたら,今なお残る古豪8000系の淘汰に振り向けられるかもしれない.

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東京地下鉄13000系の外観.“在来車の系譜を踏襲しながらも,近未来的な形状アレンジを加えました”とある.カラーリングも03系のイメージが強い.写真:東京地下鉄

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東武鉄道70000系.野田線用60000系の次の新型だから妥当な付番.前頭部の形は13000系と同じようで,実はディテールだけでなくフォルムも異 なっている(左).客室内部(右)は東武70000系だけ発表されているが,実際にはどうなのだろう.特筆すべきは側扉上の液晶画面が17インチワイド ×3となっているあたりか.写真:東武鉄道