もう先週金曜日のこととなってしまった.ほぼ一週間が経って,各方面のニュースサイトでは紹介しつくされた感もある……と,今日のブログのテーマになるのかどうなのか,ちょっと迷っていたのは,事実である.けれど,今週のはじめから,2019年10月24日付けここで“鉄道総合技術研究所 燃料電池ハイブリッド電車 R291系 報道公開”と題してご紹介したエントリへのアクセスが,俄に増加していることに気づいた.検索サイトを経由してのアクセスが多いようだが,とにかく,みなさん,ちゃんと読んでくださっている様子なので,ご期待に沿うべく,採り上げることにした次第.
その報道公開は2月18日,配置区であるJR東日本中原電車区……ではなくて,大船車両センター中原支所で実施された.案内を一瞥して“あぁ,大船へ行かなくちゃ”と早合点した僕がいたというのは,ナイショである.
編成は扇町方がFV-E991,鶴見方がFV-E990.写真は手前がFV-E991で,電動車である.
車種記号はFV-E991がMzc,FV-E990がTzc'ということになる.新機軸システム車輛の形式の与え方については,鉄道各社が苦労されているようだが,どれが電動車でどれが付随車なのか,現物をパッと見ただけでは区別が付かないのは困ったものである.いっそ,JR東海の新特急車のように,記号を堂々と(?)クモハやモハ,クハなどとしてくださるのが,嬉しかったりする.もっとも,外部の人間で困るのは我々のような“好き者”だけかもしれないが.
JR東日本での水素ハイブリッド車輛は今回が最初ではない.2009年10月29日のここで“JR東日本 クモヤE995形 蓄電池電車再来”と題してご紹介したクモヤE995が,一時的に燃料電池を搭載していた.ただし,それは“NE-TRAIN”キヤE991から燃料電池搭載に際して一旦は廃車となり,“機械扱い”として燃料電池を搭載し,この年2009年に蓄電池をリチウムイオンに換装するに際して再登録された車輛がある.
開発に際しての苦労は,純粋に技術的なことがらだけではなく,水素タンクが,圧力容器に該当するものだから……水素ステーションを走らせるようなものである…….消防などの法規制を,どのようにしてクリヤーできる車輛に仕立て上げるか,という点も大きい.
鉄道総研のE991系は,とりあえずは研究所構内だけでの走行だからまだしも(それでも楽ではない様子ではある),乗客を乗せないとはいえ,昼間の本線上で試験運転を行なうのだから,必要不可欠な条件となる.そのあたりは,鉄道総研や水素自動車の実用化がスタートしているトヨタ自動車とも連携しながらの研究開発となっている.
蓄電池と主制御装置…この場合は電力変換装置と呼ぶ……は,FV-E991の床下に搭載している.ともに車体幅一杯の大きさである.
台車は,軸梁式ボルスタレスでDT960系とTR919系である.
電力変換装置は補助電源装置と一体タイプで,形式はSC947,日立製作所製だった.
水素タンクはFV-E990の屋根に4群に分けて搭載されている.この日は見下ろせる場所がなかったので,カメラの可動式液晶モニターを駆使し,両腕を精一杯挙げて撮影したのが,次にお目にかける写真である.
燃料電池装置は電池2基おさめた車体幅一杯の箱を2組,FV-E990の床下に取り付け.起動時に発生する水蒸気の発生実演も行なわれたが,気温が高くなり,とりわけスチールでは印象的な絵柄とはならなかった.ちょっと残念.
タンク(正式には水素貯蔵ユニット)から出ている太い配管が,いかにもものものしい.空調装置は能力38.4kWだから約33,000kcal/h…該当する在来の空調装置はEV-E310系AU736ということになる.
そういえば,どこかで見掛けたことのある車体デザインだと思う方も多いだろう.正解は,思っておられる通り,烏山線で使われているEV-E301系がベースである.製造担当も同じ総合車両製作所である.
大きく異なっているのは,水素タンクを屋根に搭載しているFV-E990が低屋根構造となっていることだろう.
客室の全景.内装もEV-E301系に準じている.試験車では内装は省略または簡素化されることが多いのだが,EV-E103系に準じて設けられた.しかも腰掛の表地には“大自然の山並みと飛び交うHYBARI”をイメージした色と柄が特注されている.
両車とも連結寄りには車椅子スペースも用意されている.側窓には横引きカーテンも取り付けられて豪華だが,実際には試験運転に際して外から中が見えないようにするための実用品だそうである.
愛称は,“HYBARI”.説明資料によれば,“鳥のヒバリは春の訪れを告げる鳥として知られています.HYBARIのロゴも大地に春の息武器を吹き込むイメージをデザインしました”とある.ちなみにフルスペルは“HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehcle for Innovation”とのこと.頭の“HY”は水素とハイブリッドのふたつを兼ね備えている.
さて運転室.どこかで見たことある風景と思ったら,今や南武線の主力であるE233系と,ほぼ同じ機器配置.さらにいえば,EV-E301系とも共通するレイアウトとして,運転士が違和感なく乗務できるように配慮しているのだそうであある.
左手操作のワンハンドルマスコン・ブレーキはJR東日本標準.その他のメーター類も,確かに違和感のない配置である.で,あれ?信号炎管が見えない.見落としたのだろうか.
2030年頃には実用化したいという目標のもと,3月末から始まる予定の実証実験では,南武線の登戸と川崎の間,南武支線の尻手と浜川崎の間,そして鶴見線で実施されることになっている.この試験のために,中原支所と鶴見線営業所,そして扇島の3ヵ所に充填所が設けられる.そのうち扇町駅構内では70メガパスカルで,他の2ヵ所では35メガパスカルでの充填となる.70メガパスカルで充填した場合の航続距離は約140kmである.
どのような走りっぷりを見せてくれるのか,是非とも沿線で観察してみたい.
その報道公開は2月18日,配置区であるJR東日本中原電車区……ではなくて,大船車両センター中原支所で実施された.案内を一瞥して“あぁ,大船へ行かなくちゃ”と早合点した僕がいたというのは,ナイショである.
編成は扇町方がFV-E991,鶴見方がFV-E990.写真は手前がFV-E991で,電動車である.
車種記号はFV-E991がMzc,FV-E990がTzc'ということになる.新機軸システム車輛の形式の与え方については,鉄道各社が苦労されているようだが,どれが電動車でどれが付随車なのか,現物をパッと見ただけでは区別が付かないのは困ったものである.いっそ,JR東海の新特急車のように,記号を堂々と(?)クモハやモハ,クハなどとしてくださるのが,嬉しかったりする.もっとも,外部の人間で困るのは我々のような“好き者”だけかもしれないが.
JR東日本での水素ハイブリッド車輛は今回が最初ではない.2009年10月29日のここで“JR東日本 クモヤE995形 蓄電池電車再来”と題してご紹介したクモヤE995が,一時的に燃料電池を搭載していた.ただし,それは“NE-TRAIN”キヤE991から燃料電池搭載に際して一旦は廃車となり,“機械扱い”として燃料電池を搭載し,この年2009年に蓄電池をリチウムイオンに換装するに際して再登録された車輛がある.
開発に際しての苦労は,純粋に技術的なことがらだけではなく,水素タンクが,圧力容器に該当するものだから……水素ステーションを走らせるようなものである…….消防などの法規制を,どのようにしてクリヤーできる車輛に仕立て上げるか,という点も大きい.
鉄道総研のE991系は,とりあえずは研究所構内だけでの走行だからまだしも(それでも楽ではない様子ではある),乗客を乗せないとはいえ,昼間の本線上で試験運転を行なうのだから,必要不可欠な条件となる.そのあたりは,鉄道総研や水素自動車の実用化がスタートしているトヨタ自動車とも連携しながらの研究開発となっている.
蓄電池と主制御装置…この場合は電力変換装置と呼ぶ……は,FV-E991の床下に搭載している.ともに車体幅一杯の大きさである.
台車は,軸梁式ボルスタレスでDT960系とTR919系である.
電力変換装置は補助電源装置と一体タイプで,形式はSC947,日立製作所製だった.
水素タンクはFV-E990の屋根に4群に分けて搭載されている.この日は見下ろせる場所がなかったので,カメラの可動式液晶モニターを駆使し,両腕を精一杯挙げて撮影したのが,次にお目にかける写真である.
燃料電池装置は電池2基おさめた車体幅一杯の箱を2組,FV-E990の床下に取り付け.起動時に発生する水蒸気の発生実演も行なわれたが,気温が高くなり,とりわけスチールでは印象的な絵柄とはならなかった.ちょっと残念.
タンク(正式には水素貯蔵ユニット)から出ている太い配管が,いかにもものものしい.空調装置は能力38.4kWだから約33,000kcal/h…該当する在来の空調装置はEV-E310系AU736ということになる.
そういえば,どこかで見掛けたことのある車体デザインだと思う方も多いだろう.正解は,思っておられる通り,烏山線で使われているEV-E301系がベースである.製造担当も同じ総合車両製作所である.
大きく異なっているのは,水素タンクを屋根に搭載しているFV-E990が低屋根構造となっていることだろう.
客室の全景.内装もEV-E301系に準じている.試験車では内装は省略または簡素化されることが多いのだが,EV-E103系に準じて設けられた.しかも腰掛の表地には“大自然の山並みと飛び交うHYBARI”をイメージした色と柄が特注されている.
両車とも連結寄りには車椅子スペースも用意されている.側窓には横引きカーテンも取り付けられて豪華だが,実際には試験運転に際して外から中が見えないようにするための実用品だそうである.
愛称は,“HYBARI”.説明資料によれば,“鳥のヒバリは春の訪れを告げる鳥として知られています.HYBARIのロゴも大地に春の息武器を吹き込むイメージをデザインしました”とある.ちなみにフルスペルは“HYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehcle for Innovation”とのこと.頭の“HY”は水素とハイブリッドのふたつを兼ね備えている.
さて運転室.どこかで見たことある風景と思ったら,今や南武線の主力であるE233系と,ほぼ同じ機器配置.さらにいえば,EV-E301系とも共通するレイアウトとして,運転士が違和感なく乗務できるように配慮しているのだそうであある.
左手操作のワンハンドルマスコン・ブレーキはJR東日本標準.その他のメーター類も,確かに違和感のない配置である.で,あれ?信号炎管が見えない.見落としたのだろうか.
2030年頃には実用化したいという目標のもと,3月末から始まる予定の実証実験では,南武線の登戸と川崎の間,南武支線の尻手と浜川崎の間,そして鶴見線で実施されることになっている.この試験のために,中原支所と鶴見線営業所,そして扇島の3ヵ所に充填所が設けられる.そのうち扇町駅構内では70メガパスカルで,他の2ヵ所では35メガパスカルでの充填となる.70メガパスカルで充填した場合の航続距離は約140kmである.
どのような走りっぷりを見せてくれるのか,是非とも沿線で観察してみたい.