2019年1月10日のここで,“JR東日本のATOとヘッドアップディスプレイ試験運転”と題した自動運転試験のレポートをお話した.
 あの時は営業列車運転終了後の深夜に,試運転列車は走った.自動運転の体験もさることながら,普段は目にすることができない時間帯の山手線各駅ホームの表情が,とても印象深かった.
 それから約3年,JR東日本では,今度は昼間の営業時間帯に試運転を実施し,その最終日に報道公開するというので,2月末の慌ただしい時期にもかかわらず,興味津々で参加してきた.2月25日午前のことである.
 前回は大崎駅に集合して出庫してくる列車を待ち受けたのだが,今回は大井町駅集合で,品川電車区…ではなくて東京総合車両センターから出庫列車に乗り込んでの取材となった.
 供試編成はトウ17.ちなみに前回はトウ24編成だった.
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今や希少な存在となった事業用電車クモヤ143の2連が待機する脇を,試験列車は出庫して行く.ちなみに右が143-8,左が143-9だった.

出庫後は,そのまま外回りの本線へ.1号車であるクハE234-17が先頭となっての運転ということになる.
車内では幾つかのグループに別れて順番に説明や観察を体験することになる.僕のグループは最初にATO(Automatic Train Operation)で実現できる省エネルギーについての説明,次が実運転における欄カーブの実際を大形モニターで観察,そして最後が運転室撮影の純だった.
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加速度は従来と同じだが,これまでの最高速度に達する前にノッチオフとして惰行運転の時間を長くし,そしてブレーキをかけはじめるタイミングを遅く,減速度を高くすることでと同じ表定速度を確保する.これによって消費電力を節減…従来と比べて10%程度は楽に省エネ運転を実現できる.と説明してしてくださったのは,運輸車両部次世代輸送システム推進センターの鈴木康明次長.

説明を受けている間,各駅に停車するたびに,前駅からの所要時間と停止位置目標とのずれが報告される.所要時間は,所定が何分なのか知らないのでどの程度正確なのか不明だが,停止位置のずれは,小さい場合には数センチ以内,大きくて10数センチ,ほとんどは一桁センチだった.まことに優秀といわざるを得ない.
 とはいえ,それを実現するために加減速がぎくしゃくしてしまっては,及第にはならない……体感では,加減速は極めてスムーズで,ノッチオフブレーキの欠け肇のショックもほとんど感じられない.唯一停止直前のブレーキの抜け方が,ベテラン運転士に比べると,ちょっと少なめで“カクン”と停止するような気がしたのは,気のせいだろうか.

続いて,そのスムーズさをモニターで観察する.
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モニターを前に,刻々と変化する状況を説明し,その様子を解説してくださったのは,次世代輸送システム推進センターのチーフエンジニアである横山啓之さん.現在のデジタルATC(D-ATC)によるパターンと実際の加速具合などとの違いを,一目で理解できた.
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モニターの傍らでは日立製作所のユニホームを着用した係員がデータ採取と確認に大童.前回は三菱電機と日立製作所のシステムが試験されたが,今回,少なくともこの日は日立製のシステムでの試験だったのだろう.

そしていよいよ運転室添乗.与えられた区間は鶯谷秋葉原駅到着まで.前回は日暮里から上野までの間だった.奇しくも,ほぼ同じ区間での乗車体験ということになる.
 ちなみに2社でペアを組んでの添乗.僕がコンビを組んだのはI社のIさん.かつてノ^とパソコンの解説で健筆を揮されていて,PCについての知識を,誌面を通じてたくさん学ばせてもらった方である.
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鶯谷と上野の間を走行中.左手はコンソール上にあるがただ手を置いているだけでなんのレバーもスイッチも操作していない.画面手前の緑色のボタンを3秒程度押すことによって列車は発車する.本来は誤操作を防ぐためにツーボタン操作でのスタートとなるべきだが,試験ということで“インチング”スイッチを活用している.これは前回も同様だった.

インチングとは,停止位置が少しずれた時に操作して正しい位置に修正するための機能である.山手線では停車時にTASC(Train Automatic Stop Control=定位置停止装置)を使っているので,停止位置はかなりの精度が保たれているわけだが.
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秋葉原駅での停止位置目標と実際のずれは,たったの約3センチだった.

そして14時前,2時間とちょっとの山手線2周の旅を終えたトウ17編成は,大崎駅から東京総合車両センターの地下線へ到着した.
 そこでJR東日本の代表取締役副社長で鉄道事業本部長でもある市川東太郎さんから締めくくりの挨拶ああり,取材陣からの質疑応答が行なわれた.
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加速や減速,乗り心地はよくなってきているので,今後さらにレベルアップしたいと挨拶する,市川東太郎副社長.

今後の目標としては,2030年頃までには山手線でのATO運転を開始したいとのこと.同時にワンマン運転も推進することになるが,ATOが優先されるだろうこと,さらにその後には無人運転の実現を目指しているとの豊富が語られた.
 これからの,技術の進展と熟成を見守り続けるのも,趣味のひとつといえるだろう.