3月20日の午後,京都市内の山陰本線円町駅に近い京都アスニーこと京都市生涯学習総合センターで,鉄道友の会の島秀雄記念優秀著作賞贈呈式が催された.本来ならば東京で受賞者一同が会して行なわれるのだが,昨年に続いて,COVID-19感染拡大に伴う諸制限の影響で各地分散開催となったものである.
 この会場で贈呈されたのは,今年1月13日付けのここでお伝えした,レイルNo.116所載の“京都電気鉄道電車 京都市交通局2号電車について”に対して,であった.著者は小野田滋,加藤幸弘,遠藤晃一,大菅 直の4人.小野田さん以外は京都にお住まいということで,京都支部例会の場を利用しての開催となった……はずが,1月からの蔓延防止等重点措置のあおりを受けて,例会はお休みとなってしまった…….どうなることかと思っていたのだが,同じ日の同じ時刻に,同じ場所で贈呈式だけを開催するということに決まったのは,3月に入ってからのことである.
 前回,高田 圭さんによるレイルNo.109の時も,高田さんの地元である京都支部例会の場での贈呈式だった.

実はこの賞では,受賞作品を出版掲載した出版社にも記念のプラーク(盾)が贈呈されることになっていて,レイルNo.103の,中山嘉彦さんによる“日本初の連節車 京阪電気鉄道60型・びわこ号”が受賞した時には,東京都内の会場で,僕もご相伴に与った.前回は理事である小野田滋さんと鹿山 晃さんが事務所へ出向いてくださって,ありがたく頂いたものであるる.
 そして今回.なにしろほとんどの著者が京都にお住まいで,さらに小野田さんも鉄道友の会理事として同席される……となれば,僕もその場にいなければ不自然ではないか.
 ということで,他の用事を済ませることも兼ねて,半年ぶりの上洛となった次第.

贈呈式は20日の午後の開催であるから,それまでどこでどう過ごそうかと思案していたら“梅小路公園の広軌1形の観察会をやります”と,お声がけをいただいた.これは行かずばなるまい.幸いにして取った宿が京都駅八条口の西側,堀川通りに面していたから,電車やバスに乗るまでもない.のんびり散歩で大宮通りを渡ればもう梅小路公園の東端.
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公園の北辺中央には“市電ひろば”があって,505,703,1605,890の4輛が保存されている.一部は店舗として活用されていて内装などに手が加えられているが,解体の憂き目にあうよりは……と思うことにしよう.

そのすぐ横にはチンチン電車のりばが.N電27号が動態保存されている.最初は梅小路機関区の扇形庫周囲を走っていたのだが,この公園が整備されるに際して軌道を新設し,“最新”の架線レス蓄電池電車に変身している.
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反対側のチンチン電車のりば.立派な上屋つきである.運行は週末と夏休み時期の一部平日.運賃は片道150円,1日乗車券が310円.この日は想像していたよりずいぶんと頻繁に運転されていた.

そして上の写真のすぐ左手に車庫があって,広軌1形29号が鎮座していた.
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29号の全景.今回の4人の著者に京都市の方も加わって,“あーでもない”“こーでもない”と,保存状況や改造交換部品の状況,翻ってどの部分がオリジナルを保っているのか……賑やかな観察会であった.

京都市電1形といえば,いわゆるN電の印象が深い.それもそのはずで,広軌…1,435mm軌間の1形は昭和20年代半ば過ぎに営業から退いてしまっているから.その意味で,よくぞこの29号が解体を免れ,なおかつ復元整備が実施されて保存されていることは,まことに意義深いことである.これからも大切に保存の上,なんらかの文化財指定がなされることを,大いに期待したい.

“観察会”がお開きとなったのは,もうお昼前.中央卸売市場の敷地の一部を活用したホテルの食堂街で昼食を摂り,久し振りの山陰本線で円町へ向かうことになった.しかし確か,丹波口の駅は高架化で北のほうへ移転したはずなのに,目の前には,立派な駅が.? と思ったら“梅小路京都西駅”が開業していたのだった.その駅に向かう途上で渡った歩道橋が,妙なカーブを描いていると思ったら,なんと,元の貨物連絡線の跡地だった!
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“怪しげなカーブの道を見たら廃線跡と思え”というセオリー(?)は,歩道橋にも適用されるのだった!
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南を振り返るとこの風景.間違いなく貨物連絡線である.画面左手が梅小路機関区の扇形庫である.夏にはビヤガーデンとして活用されている(目の前の小屋に“KIRIN”の文字が)から,廃線跡歩きも,可能といえば可能である.それにしても,“スラブ軌道の廃線跡”って…….

ようやく円町に辿り着いた.支部例会ではなくなったものだから,全くの“無観客”かと思ったら,そうでもなくて,多くの有志会員がお祝いに駆けつけてくださっていた.その中には,N電のグラフ頁へのたくさんの写真提供や撮影場所鑑定に多大の協力をしてくださった福田静二さんや,前年度受賞者である高田 圭さんなどの姿も,あった.

贈呈式は京都支部支部長である加藤幸弘さんによる前説に続き,小野田滋さんの司会で始まった.
 最初は京都育ちで市電にも造詣が深く思い出もたくさんお持ちの,須田 寛会長によるご挨拶.
 表彰状は小野田さん,加藤さん,遠藤さん,大菅さんの順に授与された.記念盾は遠藤さんが代表として受領.
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須田会長から表彰状を受け取る遠藤晃一さんと,記録写真撮影中の三増晃嗣会員.ホワイトボードに記された“島賞”のレタリングは須田さんの作品である.

授与のあとの松田清宏副会長のご挨拶の中に,京都支部が関与する島賞受賞は今回が3作目であるとのお話があった.と,いうことは,あれ?全部,レイルに掲載させていただいた稿だということか.それは思いつかなかった!
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そして最後に記念写真.左から大菅さん,加藤さん,須田会長,遠藤さん,小野田さん,そして松田副会長.※記念写真撮影の時だけマスクを外しています.

レイルを造り上げるのに協力してくださっている方々,レイルを購読していただいている皆さん.そして今これを読んでくださっている,全ての皆さんに,心から感謝申し上げます.ありがとうございました.これからもご指導賜りますよう,お願いいたします.