雪まじりの雨が降る今朝の大宮.普段は使われることの少ない新幹線16番線に,異様な人だかりが…….“正体”は,報道機関向けの試乗会への参加者たちで,僕もその中に含まれていた次第.
  1月下旬に案内をいただいた時にスケジュールを見てびっくりしたのは大宮から金沢までの所要時間.なにしろ9時40分に出発して,11時50分には金沢に 到着するというのだから.もちろんそんなことは,既に発表されている営業列車の時刻表で先刻ご承知のことではあるのだけれど,いざ,まのあたりにしてみれ ば,やっぱり信じがたい事実であった.つい数年前まで走っていた“夜行列車”,“北陸”や“能登”の存在は,なんだったのだろう…….

と,“理不尽”な愚痴をいってもはじまらない.とにかく体験するしかない,というわけで,“とれいん”の追い込み作業真っ盛りの時期にもかかわらずの参加決定であった.

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大宮駅新幹線16番線に停車中のE7系試乗列車.F13編成で,乗ってから銘板を確かめたら日立製作所製であった.報道関係者に囲まれつつ17番線から発車していくのは,E6系(Z17編成)とE5系併結の盛岡行き“やまびこ43号”.

定 刻に大宮を発車した試乗列車は.どんよりとした低い雲がたれ込める中をひたすら走り続けて長野に到着した.実はここまでの区間が,在来線のころとの到達時 間差がもっとも大きい区間でもあるのだけれど,その変化からは既に長い時間が経過しているから,まぁ,受け入れることができる.
 なお,上越妙高駅までの列車を除き,乗務員は運転士も車掌も,ここでJR東日本JR西日本の乗務員が交替する.
 右手に長野工場…ではなくて長野総合車両センターと長野運転所…でもなくて長野総合車両センターを,左手に長野新幹線車両センターを眺めるころには,空の色は急速に青味を増し,飯山を過ぎる頃には,すっかり青空となった.地面の真っ白な雪が目に眩しい.
 長野総合車両センターの留置線には,豊田の115系や南武線の209系(京浜東北線から転入の2200番代?).さらにその奥はサロ213-1104などの姿が.各地での役者交替を感じさせてくれる情景であった….

それにしても長野と飯山の間が9分,飯山から上越妙高(今日現在は脇野田だが)までが8分とは….なんだか“数字の桁”が違うのじゃないかと,実際に体験していてもなお,思わざるを得ない.

そ して11時6分,ついに海…日本海が目に飛び込んできた.水平線までくっきりと見通せる.ほどなく糸魚川を通過し,姫川を渡る.この先しばらくの間,海は トンネルの闇の合間に見えるだけ.親不知も知らぬまま,次に視界が開けたら,富山平野.右の海に加えて,左にはくっきりと稜線を見とおせる北アルプス…立 山連峰.
 これは本当に感激というか驚きというか.在来線の速度では,少しずつ少しずつ近づいて来ていたのに,新幹線では突然いきなりの登場となる.これこそが,時速260キロならではの演出.

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姫川を渡る.真冬のこの時期に,日本海の水平線を見渡せるというのは,僕にとっては,奇跡.河口近くに見えるトラス橋は県道.防音壁の上端はアクリル板だろうか,透明の素材が使われていて車窓風景が確保されているのが嬉しい.

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黒部川越しには北アルプス…立山連峰がくっきりと.大宮を発ってから1時間40分でこの風景,あなたは信じることができるだろうか.

そして11時50分,定刻に金沢着.在来線ホームには北越急行の683系がちらりと見える.落成から約10年の間,重責を担ってきたこの電車も,3月にはJR西日本に移管されることが決まっている.北越急行線そのものの行方も,大いに気になるところである.

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金沢駅到着.大宮出発から2時間10分後のことであった.在来線ホームにはこれまで東京と北陸を結ぶ重責を担ってきた北越急行の683系と,これからの地域 輸送を引き受ける521系電車がなかよく並んでいた.それをE7の座席から見る…偶然とはいえ,象徴的な光景ではあった.

金沢駅の新幹線部分は未開業ということで,意匠を凝らした待合室やコンコースなどもまだ保護シートに覆われていて,充分に観察することは叶わなかった.
 これはきっと,“開業後に改めていらっしゃい”ということなのだろうと自分に言い聞かせつつ,大宮へ戻る列車に乗り込んだことである.

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金沢開業後には,E7系とW7系でも全線直通列車のグランクラスで,アテンダントサービスが始まる.東北新幹線より格段に短い所要時間の中での,スマートなおもてなしを大いに期待したい.