12月20日,東京駅は開業100周年を迎えた.前日には式典が開催され,記念としてリバイバルの特急“富士”が伊東まで走った.めでたいことである.
 その100周年に関連した鉄道の催しとしては,大宮の鉄道博物館における“100年のプロローグ”が11月22日から開催されているが,続いて12月9日からは,旧新橋停車場鉄道歴史展示室でも“東京駅開業とその時代”が始まった.初日に訪問したかったのだけれど,新年号の追い込み真最中とあればそうもいかず,101年目に踏み込んだ翌日,ようやく観覧することができた次第.

MT-20141225-1
会場入り口近くに展開するのが大きなガラスケース.中には明治から大正にかけて各駅で販売されていた“汽車土瓶”とそれぞれの駅の絵葉書や写真,そして駅弁の掛け紙.遠く下関から横浜までの27駅分がある.

この汽車土瓶,よく蒐集されたものと感心していたら,多くは東京駅の工事に際して出土したものだそうだ.東京駅に到着した客車を清掃した際に集められたものが集積されていた……すなわちゴミ捨て場が発掘されたことになる.まぁ,近代の“貝塚”といえようか.
 それにしても,土瓶だけで済まさずにそれぞれの駅の写真と駅弁の掛け紙を完璧に揃えているのが凄い.担当学芸員さんの熱心さというか,気迫を感じさせてくれる展示である.

壁面には東京駅開業と旧新橋駅との関わり,そして開業の賑わいや人々の喜び振りを物語る写真や資料が列挙されている.東京駅の内外の様子も,改めて絵葉書などで紹介しているが,鉄道博物館の展示とほとんど重複していないのが,すごいと思う.

MT-20141225-2
第2の壁面には完成した東京駅を写真と図面で展示.中央の,列車が出発する光景は黒岩さんから引き継いだコレクションからの1枚だが,“開業直後”の風景と 思っていたのだけれど,大きく引き伸ばして観察したところ,画面手前のマイルポストの存在や,ホームに留置中の客車の様子などから,“開業直前”かもしれ ないということが判明した.ちなみに写っている機関車は8850形の8860.画面右の大きな建築模型は平成2/1990年に岡田幸人という人が製作して 東京ステーションギャラリーに寄贈された,とても味のある仕上がりの作品.

MT-20141225-3
そして第三の壁面には,東京駅と新しい新橋駅との間の煉瓦造りの高架橋…いわゆる新永間高架橋に関する写真と資料を展示.大震災前のこの周辺の,絵葉書では ないスナップ写真は極めて貴重なものといえよう.そして,あまり知られていないことだけれど,東京駅と同じ年に製造が始まった機関車8620に関する解説.

MT-20141225-4
8620については,各時代のトップナンバー機の写真とともに,鳥取県の元機関士である山下 勇さんが製作した1/10模型が会場を和ませてくれている.

ぐ るっと巡る会場……担当の学芸員さんは“他のふたつの企画展より鉄分を薄くして周辺の文化などに力を入れてみました”とおっしゃるのだけれど,とんでもな い.なんといっても絵葉書蒐集の泰斗である白土貞夫さんのコレクションが,これだけ大量に観覧することができるなんて,おいそれとないチャンスでもあった りするし.

この旧新橋停車場歴史展示室に続いて,東京ステーションギャラリーでは12月13日から“東京駅100年の記憶”と題する企画展が始まっている.
 鉄道博物館の展示の時にも記した通り,これら3つの企画展をすべて巡ることによって,東京駅の前史から完成,現状,そして文化的関わりなどのすべてが,理解できるこというになる.ぜひ,巡回をお薦め.

MT-20141225-5
そして帰り道,10月から走っている山手線の東京駅100周年記念ラッピング編成に,ようやくまともに対面することができた.折りしも12月18日から1月1日までは車内も特別装飾期間.ということで,ぐるっと一周してくるのを待ってしまった…….

会 期 2014年12月9日(火)~2015年3月22日(日)
会 場 旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
〒105-0021 東京都港区東新橋1-5-3 電話 03-3572-1872

開館時間 10時-17時(入館は閉館の15分前まで)
休館日 毎週月曜日(ただし祝祭日の場合は開館で翌日休館)
年末年始・展示替え期間中
入場料 無料

※ここに掲載した写真は,このブログに掲載するために予め許可をいただいて撮影したものです.会場内は撮影禁止です.

そして今日が,僕の今年の最後の定例の書き込みとなる.1年間,ご愛読ありがとうございました.来年もお引き立てくださいますよう,お願い申し上げます.

※2014.12.26:汽車土瓶の出土地訂正.ほか一部語句修正.