本誌2021年9月号の“いちぶんのいち情報室”2021年7月8日のここで“伊豆急行にやってきた209系電車”と題してその到着を,そして4月号で愛称や外観デザインをお伝えした,伊豆急行の新形電車3000系が,4月1日に報道公開及び一般公開された.

愛称は“アロハ電車”.
 60年前の開業時から,伊豆急といえば“ハワイアンブルー”.最初の100系電車に採用され,その後の“リゾート21”や,JR東日本から譲り受けた元113・115系の200系,東急電鉄からの8000系にも,カラーリングデザインの要として採用されてきたイメージが“ハワイアン”.今回もそれが継承されたというわけである.
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伊豆高原駅3番線で展示中の3000系.伊東方先頭車はスカートと正面窓下がハワイアンブルー基調の塗装とラッピング.海側側面には白地に赤のラッピングが施されている.
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海側の赤に対して山側はハワイアンブルーが基調.そして一面に描かれているのは,ハワイ周辺の海に棲息する“ホヌ”と呼ばれるウミガメを中心に,ハイビスカス,イルカ,モンステラなどのイラストが散りばめられている.

扉の脇に貼られているのは,アロハ電車と伊豆急の社名を英語で表記した周囲をオリーブで包み込んだエンブレム.
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伊豆急下田方先頭車は,スカートと正面窓下が赤地となっている.


これらのデザインは,“非日常”を強調したという.この車輛が,元来はJR東日本の通勤電車であったことを,乗客たちに忘れてもらおう,という意図があるのだという.

意表を突いたアイデアは外観にとどまらない.

車内に入れば,座席配置などは見慣れた風景だが,側扉の内張りに,“南国伊豆”のさまざまな海岸風景が描かれている……ラッピングされているのだ.
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弓ヶ浜海岸.
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白浜大浜海岸……全部で12種類の,伊豆の風景が客室に出現する.全体の約半分の扉に,合計12種類のラッピンが施されたことによって,ムキ質ナステンレス鋼地肌の面積が大幅に減って,種車の面影を薄めることに成功している.

このラッピング,全部で12種類だという.1輛当たり4枚の扉に施されているから,4輛編成で16枚.ということは,4枚は同じ絵柄が登場することになるわけだが,一挙に見渡すことができるわけではないから,全く気にならない.
 どの扉にどこの風景が描かれているのかは,乗ってみてのお楽しみとしよう.
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ようやく客室全景.座席配置から,ようやく209系の面影が感じられることだろう.

この,元JR東日本の209系2100番代,今回譲り受けて3000系となったのは4輛編成2本の8輛である.新旧番号対照は下記のとおり.

Y-1編成(1996年 JR東日本新津車両製作所製)
伊豆急下田方からクハ3051(クハ208-2109)+モハ3201(モハ208-2118)+モハ3101(モハ209-2118)+クハ3001(クハ209-2109)

Y-2編成(1994年 東急車輌製)
伊豆急下田方からクハ3052(クハ208-2101)+モハ3202(モハ208-2102)+モハ3102(モハ209-2102)+クハ3002(クハ209-2101)

そして元来は6輛編成のC609編成であるY-1編成の残り2輛,モハ209-2117とモハ208-2117も,予備車……部品確保用だろう……として譲渡されている.なおY-2編成も,6輛編成のC601編成だったわけだが,こちらは伊豆急へやって来る前に中間車は抜かれている.

なおY-2編成のクハ3052の室内には“1”の,Y-1編成のクハ3001には“8”の号車表示がある.ということは,4輛編成2本ながら,実質的には8輛固定編成での運用が前提なのだろうか.伺ってみると,基本的にはその通りなのだが伊豆急線内では過剰な輸送力となる可能性もあるので,実際の運用方法などは,現在なお検討中とのことだった.

この新しい3000系電車,4月1日午前には伊豆高原での報道公開に続いて一般見学会が行なわれ,午後も会場を伊豆急下田に移動して見学会が実施された.そして4月3日の日曜日には伊豆高原車両基地で車輛撮影会も実施された.

そして4月30日には営業運転が始まる予定である.

僕たちにとって気になるのは,この3000系は,これからどのぐらい増えるのだろうかということ,そして同時に現在の8000系や2100系に,どのような影響を与えるのか,ということである.
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伊豆高原駅構内で洗車機を通るクモハ8257の編成.中間車はモハ8101,伊豆急下田方はクハ8001だが,東急電鉄でのクハ8001ではない.そしてクモハ8257はクハ6017を電装した車輛で,東急時代はクハ8015……変遷は複雑である.今後さらに変化するのだろうか.