とれいん12月号では,MODELERS FILEとして,箱根登山鉄道3000形を掲載したのだが,もうご覧いただけただろうか.
  僕と箱根登山鉄道との半世紀前のなれそめや思い出はCoffee Cupに記した.日本有数の山岳路線として,大阪の鉄道好きの子供でも存在を知っていたこの鉄道だが,昭和40年代の,モータリゼーションによる影響を乗 り越えて,現在も賑わいを得ている.ここへ至るまでには,各方面の長年にわたる地道な努力があったことはいうまでもないこと.
 その繁栄を,より確実に持続させるために投入されたのが,今回の新造車ということになる.

こ の3000形,最初の1輛は春に落成していて,入生田(いりうだ)の車庫で報道公開も行なわれた.ただ,ご存じの方はご承知のとおり,この車庫は広くない ので,僕たちが好むような車輛写真の撮影には向いていない.従って,車内や細部に力を入れて撮影しておいたのが,後に役立つことになる.
 この鉄道では沿線での真横写真撮影好適地が少ない,というのも判っていたものだから,せめてどちらかの真横は……と思っていたら,最後の最後になって,超広角レンズでなら,山側の真横を撮影できることになった.
 本誌に掲載した写真は,DTP担当の脇が気をきかせてくれたお蔭で,超広角レンズ特有の歪曲がほぼ補正されている.チャンスがあれば見比べてみてくださると嬉しい.

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本誌に掲載した山側(箱根湯本において北側.左が小田原で右が強羅方)真横写真のノントリミング補正前原画.レンズはライカ判で18mm.車体全体が樽型に歪曲しているとともに,上すぼまりとなっている.

2輛目が納入されて本線での昼間の試運転が始まったら本格的な取材……と目論んでいたが,なんだか箱根訪問の時間を捻出できず,悩みの日が続いた.
 そうしたところへいただいたのが試乗会のご案内.期日は10月8日.この日に撮影して10月発売の11月号に掲載するのは,天候の急変などを考えると,あまりにもリスクが大きい.ということで,11月発売の12月号への掲載に向けて,種々の段取りを決めたのだった.
 試乗会では,川側の真横は強羅駅停車中に撮影できたものの,当日の行程から充分に予想できた通り,MODELERS FILEでは必須の屋根上写真は,撮影することができなかった.
 しかし一方では,一般のお客さんの目を気にせずに撮影できるのが試乗会.その成果が扉写真と記事冒頭の運転室越しの前方展望写真だった.
 加えて午後には沿線での撮影会も設定されて,この種の催しでは極めて例外的な,いたれりつくせりの内容だった.

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急カーブを行く試乗列車.大きく開く側窓があってこその写真だが,通常営業時にはこんな大胆な撮影はできない.

試乗列車の車内では,小田原の老舗かまぼこ店である“鈴廣”から新発売の“箱根登山電車かまぼこ”のプロモーションも行なわれた.

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鈴廣の天野友博さんによる“箱根登山電車かまぼこ”セールスプロモーション.3000形とモハ2形103号,109号をモチーフにしたパッケージの中に,手 のひらサイズのかまぼこが.価格は3色セットで900円(税別).小田原鈴鹿直営店,鈴廣出店の各百貨店,小田原箱根方面各土産店,高速道路のサービスエ リアやパーキングエリアで発売中.

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その中身とパッケージ.味も“鈴廣”のブランドの,そのままであった.

そして箱根湯本へ戻って“箱根湯寮”で一休み.ここは箱根登山鉄道のトンネルの真上に建つ日帰り専門の入浴施設で,そして数多い個室の中で電車を眺めることが可能な部屋がただひとつだけあるというのだ.その部屋の名は“山法師”.

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“箱根湯寮”の“山法師”から眺める箱根登山鉄道の線路.折りしも3000形“アレグラ”が箱根湯本目指して通過していった.

“こ こで屋根上が撮れるじゃないか!”とは思ったものの,実際にはご覧の通り,木立の向こうに見えるだけで,MODELERS FILE向きではなかった.ということで,日を改めての取材となったわけだが,首尾は本誌をご覧いただければ幸い.苦労は多かったけれど,それ以上に,モ デラーの皆さんの参考になる写真が撮れたと思っているのだが.


最後にお詫びをひとつ.


本文最後の頁(41頁)に掲載した諸元表の見出しが,手違いにより間違ってしまったのだった.12月号紹介の項へのご指摘に対するコメントでも記した通り,内容は箱根登山鉄道3000形の数値であります.まさに“画竜点睛を欠く”.お恥ずかしい限り.そして大変失礼いたしました.