夏の終わり頃から我が家はチーズ三昧.ことの起こりは,8月号のCoffee Cupに記した通り,フランス観光開発機構の催しにお邪魔したらチーズプレゼントに当選してしまったというお話.
既に3ヵ月間をチーズづくしで過ごしているわけで,もっと早くにご紹介したかったのだけれど,先月から今月にかけては鉄道そのものの話題が多くて,なかなか順番が回ってこなかった.それでようやく今週,というわけである.
ナチュラルチーズの専門店であるフェルミエから毎月届くチーズは,実はフランスばかりではなく,僕がこれまで知らなかった英国やスペインやベルギー製も少なくない.もちろんフランスも一大勢力を占めている.
さて,最初にご紹介するのは,フランシュ=コンテ地域圏の産.この地域の中心都市であるブザンソン(Besançon)は,日本では,かつて小澤征爾が優勝した“ブザンソン国際指揮者コンクール”の開催都市として知られているそうだが,奇しくもこの夏にトラムが開業したばかりの町として僕の頭には入力されている.
この新しいトラムは,延長約14.5kmでふたつの系統を持ち,31の停留所があるという.ややこじんまりとした路線だけれど,人口が約10万人だと聞け
ば,なるとほど思う.むしろ,そんな規模の都市でトラムを運営して行くことができるのだろうかと,余計な心配をしてしまう.
このトラムの特徴は,地元フランス製ではなくてスペインの鉄道車輛メーカーであるCAF製だということ.そんなあたりで建設コストを圧縮しているかもしれないとは思うのだが.
車輛は3車体で両端に動力車輪を置いた超低床車.全長は約23m,最高速度は70km/h.座席定員は152名だという.電気方式は直流750V.甘い水
色と黒で装われた電車は,古都の街並みとは対称的で,お洒落さが際立っている.残念ながら町中を走る写真は入手できなかったが,CAFのプレスフォトは手
に入れることができた.

3車体100%超低床のブザンソン市電.中間車体は車輪なしで,両端車体の各2軸が動力車輪.19輛が納入された.CAFは,本誌読者にはハンガリー向け客
車でおなじみかと思うが,トラムの世界でも躍進著しく,ストックホルム,エディンバラ,ナントなど各国各都市に,続々と納入しているとい
う.Photo:CAF/Karlos Corbella

そのモダンな電車が走るブザンソンの,ドゥー川沿いの町並み.Photo:'Atout France/CRT Franche-ComtØ/H. Hugues
とっ ても行ってみたくなる風景ではないか.パリ・リヨン駅からTGVに乗って約2時間半.充分に日帰りができる…….と,いつもながらにチーズの話がどこかへ 行ってしまった.さきほどの“コンテ地方”という単語から,チーズ好きの方には今日の話はすべてお見通しのことと思う.“コンテチーズ”である.でも, ちょっとひねりを利かせた,モルビエ レクリュ(Morbier Lait Cru)なのだという.

本体の色は,普通のチーズなのだけれど,中間にある黒い帯が特徴的.解説を読んでみれば,コンテチーズを作っているナベの底に残った凝乳の表面に煤を振り掛
け,翌日の朝に牛乳を足して作った,自家用が始まりだそうだ.黒い帯はその煤というわけだが,今では食物性添加炭を使って帯を“作って”いるそうである.
炭の苦みと本体の甘さの取り合わせが面白くて,あっという間に平らげてしまった.
なんだか思いの外長くなってしまった.二つ めはクロタン シャヴィニョル(Crottin de Chavignol)の12日熟成タイプだという.原料は山羊の乳.サン サトュル(Saint Satur)という村のデュポワ家で作られたチーズ.この村はロワール地域のサントル圏に属する,白ワインの産地でもあるそうだ.

薄い表皮の具合が,まるで甘いケーキのような風情のクロタン シャビニョル.

切ってみたら,中はやっぱりクリームのような…….でも実際には少し酸味があって,思わずワイングラスに手が伸びてしまう風味.
この地域の主要都市はサン テチエンヌ大聖堂が有名だというブールジュ(Bourges).サン テチエンヌといえば,フランスで数少ない,昔ながらのトラムの運営を継続した町が頭に浮かぶが,あちらはリヨンの北にある町で,今回は関係がない.
ブールジュへはパリから急行コライユ・テオズ(Corail Teoz)でオステルリッツ駅から元のPOの路線を通って約2時間.サン サトュルはブールジュの北東約50キロで鉄道は通っていない.
それにしても,なんでもかんでも頭の中で鉄道と結びつけてしまうこの習性,なんとかならないものか.我ながら.