昨日,お誘いを受けて,東京の麻布十番にあるリスト・ハンガリー文化センターを訪問してきた.
 目的は,昨日から始まった“人生で一度乗ってみたい「ハンガリー鉄道」~親子で楽しめる鉄道展~”の開会式.
 ハンガリーが生んだ希代のピアニストであるフランツ・リストの名前を冠した……僕にとっては,かつてドイツやオーストリア国内で何度も出会った,ブダペスト発着の国際列車の名前でもある……この施設は,3年ほど前にオープンしたばかり.“小粋な”という形容がぴったりのたたずまいで,賑やかな横丁の一角にあった.
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2階の窓には,実においしそうなグヤーシュとパプリカ,牧草地,温泉,そしてヘレンドの磁器などの写真が掲げられて,行き交う人々をハンガリーへといざなっている.

そして一歩中に入れば,こじんまりとしたホールには,11年前に訪問した懐かしいハンガリーの鉄道風景が溢れていた.その時の訪問記は2011年のとれいんに連載した.ハンガリー編は9月号11月号12月号(残念ながら11月号は売り切れ).
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中央の大きな写真は,丘陵地を行く旅客列車.牽引機は旧ソ連製の電気式ディーゼル機628形の重連.天井の照明は,ハンガリー特有の刺繍模様……カロチャだろうか……をモチーフにしているという.なお,テーブルに載せられたハンガリー風軽食(とてもおいしかった)はセレモニーのために用意されたもので,残念ながら,普段は存在していません.
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セレモニーはパラノビチ・ノルバート(Norbert PALANOVICS, PhD)駐日ハンガリー特命全権大使の挨拶で始まった.背景はバラトン湖の畔を行く2階建列車.
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司会は,とても解りやすく美しい日本語を操る,文化センターの所長,ナジ・アニタ(Anita NAGY)さん.在日歴14年だという.“ナジが名字です”と強調されていた.そういえば,大使も同じことを…….

少しでもハンガリーに興味と関心があれば,この名字・名前問題は周知のことなのだけれど,日本の多くの人には,未知のことなのだろうか.

セレモニーは形通りに乾杯へと進むわけだが,振る舞われた白ワインの豊かな香りが,一刻も早い“乾杯!”を催促する.
 日本ではハンガリーのワインといえば“トカイ(Tokaji)”がかろうじて,ときおり,店頭で入手できるに過ぎないけれど,実は古い歴史を有している,らしい.らしいというのは聞きかじりだからであって,その情報源のひとつが,ここ.リンクをクリックされれば,きっと“あれ?”と思われるロゴマークが見える.そう,自動車メーカーのスズキが開設しているのだ.そういえばハンガリー国内ではスズキの新車を輸送する貨物列車が,たくさん行き交っていた.それらはハンガリー製なのである.そのご縁でのハンガリーワイン販売というわけである.
 それで,“香り立つ”白ワインの正体は……帰宅してから調べてみたら,ハンガリー西部のバダチョニ(Badasony)産で,イタリアのリースリング(Olaszrizling)という品種なのだとか.でも“イタリア”とはいってもイタリアとはなんの縁もなくてハンガリーやクロアチアで主に栽培されていて……いけない.どんどん鉄道から離れていってしまう!

会場風景は……全部をお目にかけてしまったら,これから観覧に向かうだろう皆さんには興醒めなことだろう.
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だから1枚だけ.左は赤や黄色に色づいたバコニイ山中を行く列車.右上はブダペスト東駅に停車中の列車,右下は雨に濡れた西駅ドームと市電.
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そして,窓際にさり気なく展示されていた歴史的資料.右は1973年に100周年を迎えた時のブダペストの市内交通の本,その左は,第2次欧州大戦が始まる直前,1939年の時刻表である.現在とは異なったハンガリーのテリトリーが中に秘められているはずである.

ハンガリーの鉄道,今年は唯一の幹線私鉄であるGySEV(ジェシェヴ)の開業150年の節目にあたるという.ちなみにハンガリー国鉄の開業は1868年.日本の鉄道とほぼ同じ時間を刻んでいることになる.

なお,ハンガリーでは2022年3月7日以降,入国に際しての制限は撤廃されている.と聞いてしまうと,行ってみたくなるではないか!

「人生で一度乗ってみたいハンガリー鉄道」
期  間:6月1日(水)~8月26日(金)
開館時間:11時~17時(※最終入館16時45分)
休 館 日:毎週土曜日/日曜日/日本とハンガリーの祝日(6月6日、7月18日、8月11日)

会  場:リスト・ハンガリー文化センター
住  所:東京都港区麻布十番3-8-1 日比谷麻布十番ビル1階
電  話:03-6459-4931(代)
アクセス:東京メトロ南北線・都営大江戸線「麻布十番駅」徒歩3分

会期中にはざまざまなイベントも企画されているので,お楽しみに!