大阪万博の時代,僕は高校生だった.その万博が終わるとともに聞こえてきたのが,永六輔の“遠くへ行きたい”の曲と“DISCOVER JAPAN”という言葉だった.
 折りしも,僕が旅の費用をアルバイトで稼いで自力で,なおかつ一人であちこち出掛けることができるようになったのが,この時期.まさに“知らない”“遠く”へ行きたい僕なのであった.
 小説家の川端康成も登場するこの大掛かりなキャンペーンは,天下の広告代理店,電通がプロデュースしたものだったということは,当時の僕は,知らない.
 キャンペーンに乗ったつもりもない僕だけれど,あちこち出掛けはじめた時期が一致したことは事実.日本中,行く先々で矢印マークとDISCOVER JAPANの文字に出会うことになる.
 そしてこの頃というのは,国鉄の財政赤字が大きな社会問題になってきたという,そういう時代でもあった.“赤字を増やしたくないのだろうけれど…”などと,ちょっと斜に構えた見方もする,ひねた高校生でもあったわけだが.
 さらにいえば,国鉄の労働問題が極度に悪化しはじめたのも,このキャンペーンの始まる,ちょっと前あたり.電車にアジビラ(という言葉は,もう古語かもしれないけれど)が貼られているのを,初めて目撃したのは,昭和40年代に入った直後の中学生時代であった.
  そんなこんな,実は電通が仕掛け人だというよりも,国鉄の旅客局あたりが主導して展開したのだというが,そんなことは知らなくても,“日本国有鉄道”が全 力を挙げて旅客誘致に乗り出したのだという,気迫というか勢いというか,あらゆることを撥ね除けたいという気持ちの顕れであろうことぐらいは感じることが できた.

と……なんで今,DISCOVER JAPANなのかといえば,題名のとおり.東京ステーションギャラリーで“ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい”展が始まるから.で,今日,そのプレビューがあったので,なにはともあれと,駆けつけた次第.

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展示のメイン部分.天井からは大きな“DISCOVER JAPAN”のタペストリーが下がり,壁面には歴代ポスター.中央部のケースには駅弁の掛け紙や記念乗車券などの現物を展示.

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DISCOVER JAPANで広く知られるようになったのが,駅の記念スタンプ.キャンペーンに対応して,1,000以上の駅に備え付けられたのだという.二番目の小部屋 は,その,スタンプのコーナー.もっとも目立つところには,岩泉線の岩泉で最後まで現役だった専用のスタンプ台が.わが社の脇は,このスタンプ台の現役時 代を知っていた.流石に“ワキポン”である.壁面の各駅のスタンプ群は,担当学芸員さんのコレクションだという.

途中,この キャンペーンが若い女性にいかにアピールしたかを検証するため,“アンノン族”の語源のひとつとなった女性向け雑誌“anan”が展示されていたり,当時 のフォトグラファーに,大きな影響を及ぼしたかを示す写真展示があったり,絵葉書のコーナーが設けられたりしたあとにあるのが“遠くへ行きたい”.

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部屋の両壁面で映像が異なっている.片方は伊丹十三出演分のダイジェスト版.反対側は稲沢の山奥,上村下栗編.楽屋落ちというか,最後に“演出”ということの捉え方についてのネタばらしがあって,ちょっと笑わせてくれる.政治的な思考は別として.

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締 めは現代のJRによるキャンペーンから,DISCOVER JAPANとの共通性を探り,発展振りを考える.金沢の老舗の飴屋である俵屋前での女性旅行客のスナップ…という構成が,完全にDISCOVER JAPANポスターのパロディであることを,再認識させてくれる.

東京ステーションギャラリーでは,11月と12月にも“鉄道”そのものをテーマにした企画展が開催される.ふだんは鉄道関連の展示は旧新橋停車場鉄道博物館に譲っている(?),このギャラリーにしては珍しいこと.でもそれにはもちろん理由がある.キーワードは,“東京駅開業100周年”.いずれまたここや本誌でご紹介することになるだろうが,当面は,それぞれの会場のウェブサイトをご覧いただきたい.
 12月には3つの施設がそれぞれに工夫を凝らした企画展が予定されている.今年の年末は,忙しい.

ということで,このブログでは駆け足での紹介になってしまったけれど,観覧時には,たっぷりと時間の余裕をもって東京駅へ向かわれるのが,吉.

日時:平成26/2014年9月13日(土)~11月9日(日)
開館時間:10時~18時(金曜日は20時まで・入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館.翌火曜日に休館)
入館料:一般900円 高校・大学生700円 小中学生400円
※20名以上の団体の場合は100円引き 障碍者手帳持参の方は100円引きで介護者1名は無料
問い合わせ:電話03-3212-2485

※会場内は撮影禁止です.ここに掲載した写真は,報道公開に際して予め了解を得て撮影したものです.