東京メトロ…東京地下鉄千代田線の車庫は,開業以来,綾瀬駅の北,約2キロの地点に位置している.正式名称は綾瀬検車区.その間には入出庫線が存在するが,車庫周辺の人口増加に伴って旅客営業を望む声が強くなり,昭和54/1979年12月に営業線に昇格した.それが北綾瀬支線.
 この区間の営業用電車は,開業時から5000系アルミ車と,6000系の最初の試作編成を3輛に組んで使われてきたが,このほど,ようやく世代交代となった.それが,表題の05系.

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ニュー フェイス.3輛編成の05系.全部で4編成が改造されたが,いずれも元番号を引き継ぎ,飛び番となっている.写真は13番編成.改造は単に途中の7輛を抜 いたものではなく,主電動機の移設にはじまり,主制御装置や空調装置も新調し,内装も一新するなど,大掛かりなものとなった.平成26/2014年6月4 日 綾瀬検車区

改造の対象となったのは1番,3番,6番,13番の4編成.
 中間の05-300から05-900ま で7輛を抜き,綾瀬方先頭車となる05-100を電装した2M1Tに仕立てている.ただし,元々の電動車である05-200の主電動機は4基から3基に変 更,新しい電動車05-100も主電動機は3基で,3輛で電動車と付随車の比率が1:1となるように配慮されている.主電動機は,2輛ともに北綾瀬方台車 の外側軸と綾瀬方台車の2軸に装架されている.これは方南町支線の02系80番代とは異なる方式である.
 台車は付随車である05-000を含めてすべて電動車用のSS112Bを使用している.
  空調装置は50000kcal/hの新型に交換,パンタグラフは従来に菱枠タイプを使っている.前面の行先表示装置は8色カラーLEDに交換.側面表示装 置は撤去されたが窓そのものは残されている.その横の車外スピーカーもカバーが残っているだけで,本体は空調キセの中に移動している.

制御 装置も,オリジナルのチョッパからインバータ制御に更新.しかもSiC(シリコンカーバイド)モジュールを使った最新タイプ(三菱製MAP- 196-15V257)を採用した.装置は1C3Mの2群構成として中間車に取り付けている.主電動機は三相交流かご型誘導電動機で1時間定格出力は 185kW.
 床下ではその他,ブレーキ装置や補助電源装置(三菱電機NC-GAT150A),電動空気圧縮機,制御指令伝送方式も一新されている.

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16000 系と見紛うばかりの客室.内張り,腰掛け表地,袖仕切り,天井見付を一新.スタンションポール,扉開閉表示燈を新設,上方表示装置をワイド画面LCDに更 新している.吊り手の取り付け高さも変更されている.支線内では綾瀬も北綾瀬もホームが同じ側にあるので床の黄色いラインは片側にだけ入れられている.

改造前から設置されていた6番編成以外の3編成では中間車に車椅子スペースを新設している.照明は東芝ライテック製のLEDを採用.
  運転室もブレーキ弁,マスコンハンドルが縦軸から横軸のT字形両手操作ワンハンドルに更新され,まるで新車.保安装置は千代田線の受信速度照査一体型 ATCと副都心線と同仕様のトランスポンダ式ATOに取り替えられ,ワンマン運転対応のホーム監視用CCTVなども備えた.

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両手操作のT形ハンドルに更新された運転台.保安装置類も新しく,まるで新車の運転室のよう.画面右側の仕切り内に避難はしごを収納している.

さ てこの支線専用05系,改造は同社の新木場CR(工場)においてメトロ車両が担当した.今年はじめ頃から深夜の本線で試運転を開始し,営業運転開始は4月 末だった.5月末には全部が05系での運転となり,5000系と6000系は引退している.在来車は全部廃車となる予定.6000系は,東京地下鉄にとっ て画期的な車輛のプロトタイプなので,今後,保存されるかもしれない.

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北綾瀬駅に到着する1番編成.3番編成とともに,正面窓の高さが他の2編成より,ほんの少し低い.これは新造時からの特徴.北綾瀬駅では今後,これまでの入出庫列車でも営業運転ができるように,ホーム延長工事が行なわれることになっている.