ほぼ2年前,2012年06月07日のここで,“もうひとつの 開業時からの東京駅構造物”と題し,東京駅5・6番線のホームに残る開業時からの上屋柱と架線柱を話題にした.
 その文章の最後には,“これらの構造物,これからもずっと大切に使われれ続けることを願っている.”と記したのだが,ついに現役を引退する日が近づいたようである.というのも,4月15日,6月にこのホームの上屋の改修工事に着手することが,JR東日本から発表されたからである.
 それによれば,新しい上屋は,現在の上屋を覆うような形で設けられ,それが完成してから,現在の上屋を撤去するのだという.撤去後は,現存する14本の開業時の柱のうち,駅事務室に隣接する2本を保存,残り12本については,扱いを検討中とのこと.

と いうことで,そのリリース(ウェブサイトには掲載されていないようだが)を受け,ちょっと暇を盗んで最新状況を観察してみた.前回掲載した写真は平成 20/2008年8月現在の状況だから,そういう意味では6年を経過しているわけである.発着する電車は,京浜東北線はE233系になり,山手線からは6 扉車が姿を消した.隣りの湘南電車からは211系がいなくなり,E233系がニューフェイスとして登場している.
 そして肝心要の柱の状況だが,状況は悪化しているようで,柱番号10~15と23のうち,10番西側,12番東側,14番西側の柱には真新しい補強具が増えていた.今回の発表は,この状況を踏まえてのものなのだろう.きっと.

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前回の1枚目とほぼ同じ角度から撮影した写真.ただし,ずっと後方へ下がって手前の木造柱10本(柱番号16~22,24~26)を画面に取り込んでいる.

木造の柱は,戦後すぐ,応急的に復旧されたものである.その時点では約70年間も使われることになろうとは,誰も思わなかったことだろう.

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駅事務所に隣接した柱というと,南端の10番か,この11番ということになる.しかしこの柱にも(10番の柱にも)古くから補強材が取り付けられている.

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補強材がなく原形を保っているのが,この13番の柱.地盤沈下とホーム扛上の結果,根元は“埋まって”いる.

この上屋の意義は,柱だけではなくて,その周辺の方杖や梁(母屋),オリジナルのままと思われる屋根板(野地)などが揃って残っていることにある.どのような保存方法が構想されているのか,これから工事の進捗具合に注目したい.

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保存されると思われる11番の柱の横を発車していく京浜東北線南行きE233系.柱の根元に“明治四十一年一月 株式会社東京堅鉄製作所”という製造所の銘が,部分的に見える.

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附録:前回触れることができなかったホーム南端.元の荷物扱所.ここは柱が古レール製.立ち入ることができないので,銘を読むことは難しい.