去る4月8日から,東京汐留にある旧新橋停車場鉄道歴史館で企画展“富士山と鉄道”が始まった.
 この旧新橋停車場鉄道歴史展示室での企画展は,過去に何度もここでご紹介しているから,既におなじみの読者が多いことだろう(最初は平成21/2009年8月の“燕とその時代”だった).
 今回は,題名にも記した通り,ユネスコ世界文化遺産に登録されたばかりで話題となっている,富士山.
 富士山といえば,僕が担当しているレイルでも昨年秋刊行の№88でテーマとして採り上げるほどに,世間一般にさまざまな企画が溢れている.そんな中でどのような趣向が凝らされるのか,興味津々.
 なにしろ主体である東日本鉄道文化財団の母体はJR東日本.静岡県から見た富士山ばかりを採り上げるわけにもいかないだろう…中央本線からの富士山は視点が限られるし,少し遠いよなぁ……と.
 そうしたら,富士急行の後援を得ての展開だという.なるほど!であった.確かに,冨士山麓電鉄の時代から国鉄の列車が乗り入れしていたし,関係は深い.

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入り口から見た会場全景.壁面は白基調.主に富士の雪の白を意識したという.余分な先入観のない“白い状態”で展示を見ていただきたいという願いも込められているそうだ.中央の装束は富士山参拝のためのもの.大人と子供のセットで保存されている例は極めて珍しいという.

今 回の企画立案に際しては,担当学芸員Bさんから“黒岩さんと宮脇さんのコンビで出された,富士山と鉄道にまつわる本のことに触れたいから協力して欲しい” との依頼があって,なんと(!)図録に一文を記すことになった.僕などでよければ,ということで(内心は,喜んで!)お受けした.文字数の制限がきびし く,いつも“書き過ぎる”僕には,とっても難しい一仕事となったのだけれど,なんとか及第点をいただけたようで,ほっ.
 どうせなら原画を展示されたらいかが?と提案し,黒岩さんのお宅から,象徴的な4点を拝借した.
 それでどんな内容の文章を書いたのかって?それは,会場へ足を運んでいただいたうえで,図録(税込み700円)をお求めいただければ…….

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展示された黒岩さんの原画と,“夢の山岳鉄道”と“御殿場線ものがたり”の原本.展示に際しては,黒岩さんの奥様やご子息の了解はもちろん,各出版社及び宮脇さんのお嬢様からの協力も得て実現した.御殿場線ものがたりの原画は,会期中に他の絵と差し替えの予定.

僕にとって福音館書店から発行された“御殿場線ものがたり”は,少しばかりお手伝いさせていただいた思い出深い本.ほぼ並行してうちの会社での“箱根越え”の編集も進められていて,黒岩さんに同道して沼津へも通った.
  それにしても驚いたのが,財団の担当者Hさんのひとこと“僕が小学校のころに買ってもらって,それ以来大切に持っているんですよ.なんども読み返したので ボロボロになってますけれど”という言葉.さらに加えて“自分の子供に見せたら,夢中になって,ボロボロ度が進んでしまいました”.親子二代にわたって楽 しめる絵本.なんと幸せなことだろう.
 それにしても,今やバリバリの中堅であるHさんなのに,あの本が出たころにはまだ“小学生”だったという 事実に改めて感慨一入.いつもは時間の流れに対して客観的に反応する僕なのだけれど…….それはともかく,親子二代で楽しんでもらうことができただなん て,本にとっては本望だったことだろう.

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会場の一番奥.この展示のキーともいうべきポイント.中川浩一さん撮影の昭和20年代の国鉄からの著通列車の様子がが展示され,壁面には富士山をめぐる観光 地図,そして岡田紅陽が昭和10年頃に撮影した富士山の写真がオリジナルプリントによって展示されている.原版は名刺か手札か,フィルムか乾板か,写真的 に興味深い.

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昭和20年代の富士急行沿線写真.地元写真館が撮影して保存していたものだが,こういう記録の発掘も,企画担当者の才覚によるところ大である.

企画全体の流れは“冨士講”という富士山信仰に始まり,中央本線の開業,馬車鉄道の敷設,冨士山麓電鉄の建設と歴史を説き,鉄道の開業によって富士山が,より一層,人々にとって身近な存在となったことを認識させれてくれる.
 富士吉田市の写真館撮影による昭和30年代の富士急行沿線写真や昭和40年代の国鉄企画列車“ワッペン号”のワッペンや“エック”の切符,乗客誘致のためのパンフレット類,そして現代に至るまでの歴史を,極めて手際よく解説し,展示している.

会期は7月21日まで.入館は無料.黒岩さんの原画はもちろん,各時代の中央本線や富士急行の記録写真など…….そして岡田紅陽撮影になる昭和10年代の富士山周辺なども含め,絶対的お薦めである.

開館時間 10時~17時
(入館は閉館の15分前まで)
休館日 月曜日 ただし祝祭日の場合は開館し翌火曜日が休館


※いつものことながら,このブログに掲載した写真は,予め許可をいただいて撮影したものです.展示場内は原則として撮影禁止です.