今日の午後,ドイツ観光局のプレス発表会が開催された.会場は,すっかりおなじみとなった(?)ドイツ大使館事務棟のアトリウム.約10ヶ月ぶりの訪問だが,少し内部の様子が変ったのに気づいた.
  壁面に取り付けられていた“ローマ人の山”のプレートがなくなり,その代わりに,何人もの古めかしい姿のドイツ人の肖像写真が掲げられている.よくわから ないけれど,どうやら明治から昭和初期にかけての歴代ドイツ駐日大使の写真のように思えた.誰かに訪ねようかと思っているうちに発表会がスタートしてしま い,確かめるチャンスを失った.次のチャンスにはぜひ訊ねてみたい.

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装いを新たにしたドイツ大使館事務棟アトリウムの壁面.全部で15人のドイツ紳士の肖像写真が飾られている.

さて,いきなり話しが脇道にそれた.
 今回の発表会は,最近の訪独観光客の動向報告と,2014年ドイツ観光のメインテーマである“ユネスコ世界遺産”についてのプレゼンテーション.

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最初の挨拶は駐日ドイツ共和国臨時代理大使シュテファン・ヘルツベルクさん(写真右).続いてドイツ観光局アジア・オーストラリア地区統括局長のペーター・ ブルーメンシュテンゲルさん(左).いずれも含蓄のあるスピーチで,“観光”や“ユネスコ世界遺産”に対する認識を新たにさせられたことである.

本題のプレゼンテーションは,これも恒例の,西山マネージャーが担当.ドイツに存在するユネスコ世界遺産について,これまでは漠然と把握していただけだった概要の,正確な数や内容を再確認することとなった.具体的には,全世界の総数981に対して38.日本は約半分の17なのだそうだ.
 ユネスコ世界遺産には“自然遺産”,“文化遺産”,そして“複合遺産”の3つのジャンルがあることは知っていた.富士山が自然遺産としては認められず,周辺の諸々を包括して文化遺産として登録されたことは,記憶に新しい.
  プレゼンテーションで強調されたのは,ドイツの世界遺産には自然遺産の比重が,世間の認識よりもずっと高いということ.メッセルピット(Messel Pit)の化石地域からライン川中流域,ムスカウ公園(Muskauer Park),古代ブナ林群,北海に面したワッテン海(Wattenmeer)……
 ライン川といえば,かつてドイツの花形列車が両岸を行き交ったことで僕たちにも馴染みぶかいし,ムスカウといえば森林鉄道(Muskauerwaldbahn)の蒸機たちが頭に浮かぶ.
  町並みなどが登録されているところなら,欧州大陸に興味と関心のある鉄道好きならば一度や二度は耳にしたことのある名前ばかりだろう…こういう切り口での ドイツの鉄道紹介記事もできるよなぁ…などと思いながら聞いていたら,話は早くも終盤“今後の世界遺産”.ドイツでは現在,10件が暫定リストに挙げられ ているというのだが,その中に“ハイデルベルク”がずっと以前から含まれているというのにはびっくり.

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ケルンの大聖堂とライン川に架かる鉄橋は,鉄道に興味がなくとも,ドイツといえば多くの人が思い浮かべる光景に違いない.Photo:Koeln Tourismus GmbH/DZT

質 疑応答では,日本からの旅行者数が減少しているのだけれど,その理由が“謎”であること.ケルンの大聖堂が一時期“危機遺産”になっていたのが解消した理 由は?などと“真面目”なやり取りが交わされたのだが,最後の質問時間が空いたのを期に,“オーストリアのセメリンクやインドのダージリンのように,鉄道 遺産を登録しようという動きはないのか?と質問してみた.局長の答えは,“残念ながら具体的な動きは知るところではない.けれど,ドイツでは必ずしも世界 遺産への登録にこだわらず,歴史の記憶の保存は日々の活動の中で行なわれている…”.
 確かに,ドレスデン市街とその周辺は,実生活の便をはかるための架橋を実現するために,ユネスコ世界遺産ではなくなった.そのあたり,実生活と遺産と,どうやって折り合いをつけているのか,ちょっとでも興味を持った方は,すぐにでも,ドイツへ,どうそ!