今,日本中のホテルで“流行り”となっているのが,電車のゲームマシンを備えつけたり,Nゲージなどのレイアウトを持ち込んだり,インテリアを電車風にしつらえたり,という“鉄道ルーム”.
 東急ホテルグループのひとつである渋谷のエクセルホテル東急でも,これまでにジオラマルームやトレインシミュレータールームなどを展開してきた.
 今回……明日,10月21日から新たに加わるのが,“東急8500系電車コンセプトルーム”.
 創立100周年を迎えた東急グループ各社が協力して企画,設計し,スーペリアツインルームに設営したという今回のコンセプトルーム.お招きをいただいてオープン前日,取材してきた.
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最初は1721号室.扉を開くと目に入ってくるのは壁面に掲げられた,たくさんの東急電車の写真,8500系の腰掛,8500系で見慣れたオレンジとレッドのベッドカバーとピロー.そして本来ならデスクがあるような場所には8500系8635の運転台!
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TVモニターの前にも腰掛があり,その上には荷物棚と吊り手.もちろん8500系で使われていた,本物.その脇には東急のロゴと鉄道友の会ローレル賞プレート.その下の1721という部屋番号は車外の号車札.

クローゼットを開くと,そこにも吊り手が設えられているのが見えると同時に,ドアエンジンの音が聞こえてくる!
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極め付けはバスルーム,タオル掛けが吊り手であるというのは,もう慣れっこ(!?)だが,壁面の8631と8537が並んだ写真には,惹きつけられてしまう.離合かと思ったらそうではない.“いつ,どこで?”と詮索をしてしまうのは,“好き者”の性だろう.
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天井には運転室用と客室用の扇風機が2基.写真はやや小振りな運転室用である.操作は壁に新設された,昔懐かしいトグルスイッチである.

続いては1722号室.
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扉を開けたらいきなりヘッドライト!
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8636は海側の真横を撮っていた.東武動物公園-姫宮 2018-4-13

東急電鉄8500系という電車は,僕にとってデビュー当時はそれほど馴染み深い存在ではなかった.けれどこの10年ほどは,しばしば,他の電車の撮影に際して記録することも多かった.その成果のひとつが,今年3月号のMODELERS FILE“東急電鉄8500系8630・8631・8637編成”である.
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こちらの部屋には運転台はない.荷物棚や吊り手による演出は同じである.壁面の写真は,まったく異なっている.置かれた腰掛はバケットタイプ.座面の下の蹴込みも,本物である.

腰掛の右に見えるヘッドフォンは,空間音響技術による8500系の走行音体験用.渋谷駅発車前の本物の車掌のアナウンスに始まり田園都市線での走行音をたっぷり楽しむことができる仕掛け.音を楽しむだけなら,ほかでもできそうだが,ポイントは“空間音響”と銘打たれている通り,ヘッドフォンを通して耳に入ってくる音の,臨場感の高さといったら……方向性だけでなく,距離感のリアルな再現には驚かされる.
 実は今回のコンセプトルームで最大のセールスポイントは,クレプシードラという会社が開発した,この“音”かもしれない.

この8500系コンセプトルームはホテルの建物の南に面しているから,電車はよく見えない.ただ,廊下からは,大変貌を続ける渋谷駅周辺が,とてもよく観察することができるのだ.
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聳え立つ渋谷HIKARIEの足元では,解体の済んだ東急百貨店跡地や,年明け早々に予定されているホーム移設を控えて大改造真っ盛りの山手線渋谷駅,関連して工事が続く東京地下鉄銀座線渋谷駅の様子が,手に取るように観察することができる.

この\8500系コンセプトルーム,いまのところ2023年8月31日まで開設の予定だという.宿泊のみ1室1名で19,100円(宿泊税別)からのほか,食事付きプランやランなどが各種用意されている.

具体的には予約サイトをご覧いただきたいと思う.