行き先によって編成を分割し,また併合するという運転方法は,かつて日本全国の国鉄私鉄で見ることができた.国鉄には“多層建て列車”というのもあって,1本の編成として出発した列車が何度も分割を繰り返す列車があり,そうかと思えば,山陰本線と山陽本線の間では,一旦分割された列車が再び出会って併結……などという神業的運用もあった.“さんべ”である.この列車の夜行版は客車列車でオロハネを組み込んでいて,それはそれでユニークだったのだが,昼間の気動車列車では,始発の熊本から下関まで走って山陰本線経由と美祢線経由を分割,長門市で再び併結するというもの.さらに益田では小郡発の編成を併結して米子まで,延々10時間走り続けた.もちろんその逆も同様である.
 このような複雑な運転をする列車は次第に姿を消していったが,逆に新幹線では“新在直通”の名の下,福島と盛岡で日常的に行なわれるようになったのは,ご承知の通り.
 私鉄の一般列車でも,関東地方では西武の拝島・多摩湖行きや三峰口・野上行きとか,小田急の江の島・小田原行き,国鉄では青梅・五日市行きなど,あちこちでみることができた.ところが気がつけばあちらもこちらも廃止されてしまい,残っていたJR東日本の青梅・五日市行きも,3月18日実施予定のダイヤ改正で取り止めになってしまうという.青梅と奥多摩の間でワンマン運転を始めるから,というのが大きな理由.
 “まだ時間はある”とは思ったものの,今残っている分割併合列車は休日の“ホリデー快速”のみのようだから,チャンスは休日しかない.となれば,“気がつけば……”のパターンに陥る危険性も高い.ということで,3月号の締め切り明けの日曜日,眠い目をこすりながら,久し振りの拝島行きを“決行(ちょっとおおげさ)”した次第.

それで拝島に到着してみたら,
DSCN8262
E233系のラッピング編成がやってきたものだから,そのまま青梅まで乗って行ってしまった.ワンマン運転に備えたホーム状況観察用カメラが見える.同様のカメラは既に常磐線E531系や,相模線房総地区宇都宮地区のE131系にも装備されている.

遭遇したのは“夏”編成.編成番号でいえばP523.青梅までやってきたのは,他の季節のバージョンを見ることができるかもしれないと思ったから.
 このラッピングは,JR東日本八王子支社が,愛称名“東京アドベンチャーライン”の四季をPRするために展開しているもので,実は1月25日に豊田車両センターで“春”編成の撮影取材をさせていただいた.
K8A_0935
豊田車両センターで撮影させていただいた“春”編成.編成番号はP518.手前が高尾,青梅,五日市方.各車の戸袋部分に片側5枚ずつの絵柄がラッピングされ,シンボルロゴを両先頭車先頭部の戸袋と全ての車輛の腰板に“東京アドベンチャーライン”のロゴが配されている.ヘッドマークは編成…季節ごとに背景の色が異なっっている.

今月21日発売のとれいん3月号“いちぶんのいち情報室”で採り上げたが,大きく掲載することができなかった.せっかく,行き届いたセッティングをしてくださったのに.
 そこで,いずれそのうちに詳しく…と思っていたところへの遭遇だったこともあり,ならばこの日に四季をフルコンプリート,とまでは行かなくても,何本か撮ることができれば…と目論んだわけである.
 しかし青梅線内折り返しの列車を2本待ってみたものの,どちらもノーマルの編成だということが判明.ならばということで,もう少しこの“夏”編成を追いかけてみることにした.青梅と立川の間のピストン運用だから,やってくる時刻は推定しやすい.ただ,この運用は10輛編成で,この日は青梅線用の青666編成6輛が東京方に併結されていたから,P523編成が頭に出るのは青梅行きだけとなる.うむ.
K8A_1250
ということで“かぶりつき”の末にやってきたのが小作の羽村方.脚立など持ち合わせていないカメラハイクだから,これが精一杯.

E233系の正面や側面のLED表示は1/100程度のシャッタースピードでないと文字がほとんど見えないのが,ちょっと悲しい.

そうこうしているうちに,時計の針は3時を過ぎた.拝島の駅に戻ったら,立川行きとして姿を見せたから,先ほどの反対側面を記録することも,できた.

そして16時10分,H56編成4輛6輛編成の“ホリデー快速 おくたま2号”がやってきた.
K8A_1321
シャッタースピード1/250秒でも,この程度しか文字は見えない.そう書いてあると知っていれば,辛うじて“おくたま”とか“東京”が判読できるかもしれないが.
K8A_1349
定刻より2分遅れの16時17分,H56の6輛輛編成の“ホリデー快速 あきがわ2号”が到着.シャッタースピード1/125秒で,なんとか文字は判読できるようになった.背後の建設現場は12輛編成化に備えたホーム延長工事.
K8A_1383
電気連結器付きの密連だから,併結作業といっても地上係員は誘導の駅員だけ,あっさりしたものである.
DSCN8345
1/50秒で撮影した側面の“ホリデー快速 あきがわ”の表示.
K8A_1408
そして16時20分,やはり2分遅れで次の停車駅である西立川目指して発車して行った.

3月18日からは,“ホリデー快速 あきがわ”は廃止,“おくたま”は青梅止めとなり,それ以遠の青梅線内は観光シーズンに運転の臨時列車として新宿発に接続して奥多摩までの運転となる.

さて,3月19日以降の東京圏では,“付属編成の解結”ではなく“列車の分割併合”は,どこかで見ることができるだろうか?

※2023.02.19:それぞれの“ホリデー快速”輛数修正