先週末に発売となった,とれいん10月号.もう見ていただいただろうか.
 今年の大特集の課題(?)だったわけだが,昨年末までに一応の方向を決め,年明けから具体的な作業に取り掛かって,ようやく完成した次第.

“1M方式新性能国電”……新性能ったって,今となっては吊り掛け式がカルダン駆動になった程度の違いとしか思われないかもしれないが,のちの101系とそれ以前とでは,あの頃としては画期的に違いがあったのだった.
  まぁ,今となっては“国電”という言葉そのものが古語,あるいは死語になりつつあるわけで,隔世の感一入.国電というのは国鉄電車の略語なのに,“国電っ て,通勤形のことをいうんでしょ?”と思っている若い人もいるとか.通勤形のことは“ゲタ電”と呼ぶ.“ゲタを履いて乗るぐらいに気軽な存在”が語源だけ れど,これまた今やゲタの方が靴より特別な存在になってしまった.

さてその新性能国電.定義(?)のひとつとして,MM'方式が挙げられ る.すなわち,電動車は必ず2輛がユニットを組んで,各機器を分散して搭載している.長編成を組むのには合理的なシステムだけれど,短編成には向かない. クモハ+クモハにすれば不可能ではないけれど,それでは過剰性能.地方線区の旧型釣り掛け車の処遇は先送りされたというわけである.

けれど1970年代も終わりに近づいた頃,いよいよ釣り掛け車の淘汰が避けて通れない状況になって開発された“1M方式新性能国電”が,105系,続いて登場したのが119系というわけである.
 もっとも“1M方式”は105系よりもずっと前,昭和40年代はじめには郵便電車クモユ141として既に登場,引き続いてクモニ143なども開発されている.それらと105系とはどう違うのか,そのあたりは,本文中,入江孝徳さんの稿を,とくとお読みくださいませ.

さ て,本文中のCoffee Cupでも少し触れた通り,105系や119系という電車が登場した頃,国鉄の行方は全く不透明となっていた.財政的その他,多くの制約がある中での創意 工夫によって開発された.30年以上経った今でも,さまざま複雑なできごとや思いが,頭の中を駆けめぐる.

105系という電車は,残念なこ とに新造時に観察するチャンスを失った結果,どちらかといえば縁の薄い車輛となった.本来なら,特集に際して20年振りに宇部小野田線を訪問したかったの だけれど,主に時間的な都合で果たすことができなかった.けれど,結果的には永尾信幸さんが撮影された膨大な写真を活用させていただくことで,誌面はむし ろ充実した.

一方,119系は登場直後から,飯田線や静岡県内の東海道本線で乗ったり撮ったり,触れ合う機会が多かった.JR東海の線路か らは昨年の春に姿を消してしまったが,えちぜん鉄道の7000系として大幅リニューアルの上で再登場した.なんとも大胆な“キットメイキング”の様子は, まさにモデラー向き.ということで,同社の全面協力の下,詳しく取材することができた.前納浩一さんも解説に力を入れてくださった.こちらも,誌面をじっ くりとご覧いただければ幸い.

さらにえちぜん鉄道の現在の主力となっている,愛知環状鉄道から譲受の6001形と6101形.これも1M方式新性能国電の兄弟姉妹だろうということで,詳しく観察.

107系電車が登場したのはJR東日本発足後のことである.だから“国電”ではない.ないけれど,どう見たってシステムの基本は105系であり,外観的にも105系のモディファイであることは明らか.北関東一円での活躍振りといい,外すわけにはいかないではないか.

…… と,範囲がかつてなく拡がった今回の特集テーマ.ひとつひとつについて,もっと掘り下げたかったけれど,そうすると頁数も際限なく増えてしまう.とりわけ 105系などは,まだ多くがJR西日本の管内で活躍中だから,皆さんが現地に出向いて観察していただくための呼び水的な展開という,これまでとはひと味違 う仕上がりになっている.

この特集を切っ掛けとして,皆さんが実際に行動を起こしてくださるのが,担当者としての最高の喜びである.ぜひ,アクションを!

MT-20130926-01
今日の1枚は日光線107系.大船工場での落成から最後まで,折りに触れて撮影の機会があっただけに,名残惜しかったが,時の流れは止めることができず…….
今市-日光 平成25/2013-1-15