稲荷町といえば,東京の人には地下鉄銀座線の駅のことかもしれないが,それ以外の大多数には,富山地方鉄道の車庫と工場の所在駅だろう.
 僕がこの駅を初めて訪問したのはいつのことだったか……多分,昭和53/1978年の夏のことだったと思う.
 その頃は,同社オリジナルのモハ14760系がバリバリの新車で,紺色に塗られた元名鉄の電車がラインナップの一翼を占め,そして大統合以前の古参もまだ元気な姿を見せていた…そんな時代だったと思う.
  それから何度か訪れた,稲荷町駅だが,今回,京阪電鉄から購入した2階建車8831の取材のために,久し振りに訪問した.当日は生憎の雨模様だったのだけ れど,駅背後の工場が公園に変貌していたこと以外は,35年前とほとんど変らない佇まいで,とても懐かしく思ったことであった.

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真正面から見た富山地方鉄道稲荷町駅本屋.羽目板や窓枠など各部に“近代化”が施されているけれど,オリジナルの雰囲気はよく残していると思う.画面左にみえる木立が,元の燐化学工業の工場.現在の稲荷公園である.

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電鉄富山駅方から見た本屋.なにかひとつ足りないと思ったていたのだが,この稿を書くために改めて眺めたところで,それが郵便ポストであることに気づいた.いつまでもこの雰囲気を残していて欲しいものである.

富山地方鉄道には,数多くのいいムードの駅が残っている.それらのうちのいくつかは,脇が平成22/2010年4月19日のここと,5月31日のここで紹介してくれている.
 鉄道側にいわせれば“やむを得ず,なんですよ”なのかもしれないが,不自然にならない程度に手入れして,長く歴史の証しを残していただきたいものである.

さて,訪問の主目的の成果はどうだったのかって?それは21日に発売される9月号で,とくとご覧くださいますよう.