東武鉄道グループでは,昨年春の東京スカイツリー完成以降,さまざまなアイデアによる多くのイベントを催してきた.東武鉄道でも6050系を大幅改装して展望電車634型“スカイツリートレイン”を製作したり,8000系の原形顔保持車を先頭車に持つ8111の編成を旧塗装に戻し,こともあろうに東武博物館の所有として,我が国初の博物館所有動態保存電車を実現させるなど,大きな話題を振り撒いてきた.
 そして今回は,本当に久し振りとなる,野田線への新型新造車投入である.

そんな,画期的な存在である60000系電車のデビューを記念して開催されたのがこのイベント.6月9日の日曜日に実施された.
 東武大宮駅と東武船橋駅の両方から,車両基地のある七光台(ななこうだい)まで新型車60000系に乗って旅をするというツアーが組まれたのだった.と,いうことは,この日が60000形にとっての初営業日ということにもなったわけである.
 ツアー募集は5月8日に発表,10日から応募受け付けが始まったが,あっという間に600名もの定員が埋まってしまったというから,世間からの注目度をうかがい知ることができよう.

そして当日.いかにも暑くなりそうな空を眺めながら大宮へ.指定された時刻より,随分早かったつもりなのに,コンコースはもう参加者たちで満ち溢れていた.ますます暑い.

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受け付け開始を待つ間には,野田線では新顔の10030系も姿を見せた.

そして9時22分,定刻に発車した特別列車は,順調に七光台を目指す.先頭車の“かぶりつき”窓は既に定員オーバー状態.しかたないので沿線に目を移すと,こちらは,いかにも“普通の沿線の人たち”で溢れかえっている.

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先頭車の特等スペースはご覧の通り.僕が入り込む余地は,全く存在していなかった.

あっという間に到着した七光台…と思ったら,列車はそのまま野田市へ向かう.行違い列車あって,そのまま車庫線に入ることができず,引上げ転線を兼ねての野田市行きとのこと.で,折り返して,今度は晴れて入庫線へ.もちろん“初乗り”区間である.

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左が,僕が乗ってきた大宮からの第1編成,右は,船橋から到着する第2編成.記念ヘッドサインは,両編成でデザインが違うという凝りよう.なお,このサインは一般営業運転開始後,しばらくの間は貼付して運転するという.

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このイベントの目玉のひとつ,60000系2編成と野田線用10300系,8000系トップナンバー,8111編成の5本並び撮影会.画面右端は特別参加のマルタイとバラストスイーパー.8000系ではこのあと,さまざまな行先や列車種別が表示されて参加者は大喜び.

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そ して花上嘉成さんと史絵.さんによるトークショー.“むかし,この車庫の周囲では野草とか,たらの芽なんかが採り放題で昼ご飯に……”“花上さん,電車の 話を!”などというやり取りもあって,観客は大爆笑.でも,これも野田線の歴史を振り返るのに,大切なエピソードなのである.

ということで,気がつけば終了の14時がもう間近.ツアー形式の車庫公開というのは初めて参加したけれど,今回のように進行がきっちりしていれば,なかなかいいことではないか,というのが感想.
 これが切っ掛けとなって,東武鉄道では3番目(かな?)の定例現場公開イベントとなるかもしれないと思ったことである.

なお,本誌では今月21日発売の7月号で60000系を徹底取材したMODELERS FILEを掲載します.ご期待ください.