先日,栃木件真岡市役所から1通の案内状が届いた.本誌5月号の“いちぶんのいち情報室”に掲載した,真岡駅前に移設の9600を一般公開の前に報道公開するというのがその内容.勇んで駆けつけたのは,いうまでもないこと.その模様を,とりあえずここでお目に掛ける次第.
さて,24日は朝から生憎の雨模様だったが,期待の大きさは天候など関係なく上回る.到着した真岡鐵道真岡駅前には,駅舎と同じく蒸気機関車風モチーフの外観で新築された“SLキューロク館”がそびえていた.
建物のなかに一歩中に足を踏み入れると,最初に目に入ってくるのは9600ならぬスハフ44.先年まで羊蹄丸の船倉内に保存されていた客車である.羊蹄丸が解体されるということで運命を案じていたのが,真岡市によって救われたというのは,昨年8月号“いちぶんのいち情報室”でお伝えした通り.到着後の模様は10月号に掲載した.
お目当ての9600はその奥に,頭を南に向けて僕を待っていた.
その外観は,上廻りも下回りもピカピカ.テンダー炭庫内に積まれた電動のコンプレッサーが異彩を放っているほかは,手入れのよい現役機,そのもの.

新築の“SLキューロク館”に展示された49671.スハフ44はその奥に置かれている.
今 回お披露目された9600は,大正9/1920年の川崎造船製49671.一貫して北海道で働き,昭和51/1976年3月の廃車後,真岡市の井頭公園で 保存展示されてきたものである.真岡市では平成23/2911年にJR東日本からこの機関車を譲り受け(それまでは無償貸与),空気圧で走行できるよう, 整備してきたものである.

館外に走り出てきた49671.しかしスチールでは,“新しい展示場所を得た49671”にしか見えないのがつらい.
こ
の49671.ずっと北海道で過ごしたというだけでなく,昭和19/1944年から昭和43/1968年までの20余年間を五稜郭で過ごし,入換作業に従
事したという経歴を持つ.五稜郭配置の9600といえば,桟橋の構造上,左側運転台では見通しが悪く,右側へ移設されていたことで,現役時代は有名だっ
た.併せて動力逆転機を取り付けているが,こちらは他地区でも入換専用機では装備した機関車が少なくない.
そんな49671が,極寒地向けの二重窓を備えたスハフ44と真岡の地で巡り合うことになったというのは,本当に不思議な縁としかいいようがない.
この日のハイライト,空気圧による走行デモンストレーションは,真岡市や真岡市観光協会の皆さんも列席したオープニングセレモニーの後に,2往復実施された.
空気圧で走る蒸機は,群馬県川場村のD51 561が
嚆矢とされるが,僕はまだ見たことがない.だからこの日が,空気圧による蒸機走行の初体験.どんなものかと期待していたのだが,耳と目からの迫力は,排気
音もなければ盛大な煙も出ないということで,やや拍子抜け…….けれど,とにかく,走る!ということに意義があるわけで,K社からの依頼で取材に来ていた
Iさんは“やっぱりいいなぁ.9600が走るのを,37年ぶりにみましたよ!”と感慨一入.僕も,理屈抜きにただただ“いいなぁ”と感心しながら,撮影し
たのだった.

走る49671! 現役時代からそうなのだが,ラジアスロッドの向きが他の国鉄機とは逆なので,ちょっと落ち着かないとともに,こっちへ向かってくると構え
ていたらあっちへ行ってしまったという,苦い経験をしたことが何度もある.写真は左から右へ走行中.ランボード上の動力逆転機が,この機関車のただならぬ
経歴を示している.
“SLキューロク館”にはこの2輛のほか,屋外にキハ20 247,ヨ8000形8016,元一畑ト60,元蒲原ワ12,元水島臨海ワフ16の5輛も保存展示されている.いずれも貴重な存在.すべてが大切に末長く整備されることを願っている.

屋外に展示されている車輛たち.手前からワフ16,ワ12,ト60,ヨ8016,そしてキハ20 247.
さてこの“SLキューロク館”,オープンは明日!4月28日.入館は無料.毎週火曜日と年末年始を除き午前10時から午後6時まで公開している.
所在地は栃木県真岡市台町2474-6.真岡鐵道真岡駅東口のすぐ脇である.