ドイツ南東部の大都市,ザクセン自由州の州都ドレスデン.この名前を聞いて頭に思い浮かべることは,どんなことだろうか.
  12月上旬,そのドレスデンからドレスデンマーケティング社観光課日本担当のクリストフ ミュンヒ(Christoph Münch)さん,ザクセン州経済振興公社対内投資課のカリン ハイデンライヒ(Karin Heidenreich)さんとプロジェクト部長トーマス クリューガー(Thomas Krüger)さんが来日,東京都内でドイツ観光局主催のプレスコンファレンスが催された.
 プレゼンテーションはミュンヒさんの担当.テーマの最初は,2013年ならではの話題としての,大音楽家ワーグナー生誕200周年.先日のドイツ観光局プレゼンテーションで も採り上げられたが,なにしろワーグナーが生まれたのは同じザクセンのライプツィヒ,そして1歳から少年期を過ごしたばかりでなく,音楽家としても 1843年にドレスデンで宮廷劇場指揮者に任命されるなど,この町で多く活躍したとあれば,市当局としても観光客誘致に熱が入るというもの.2013年春 から翌年にかけて,ゼンパーオペラなどで音楽会やオペラがたくさん上演される.

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ゼンパーオペラハウスの内部.どこまでも荘厳.第2次世界大戦末期の大空襲で破壊されたが,東独時代に再建されたものである.2013年には,ここでいくつもの演目を鑑賞することができる.Photo:Matthias Creutziger/DMG

ド レスデン,そしてその周辺の話題として,日本に宣伝したい項目の第一は,クリスマス市だった.ドイツクリスマス市発祥の地でもあるというドレスデン.そし てクリスマス市に欠かせないのが,身体が暖まるグリューヴァイン(Glühwein=温かいワイン)と甘さが口のなかに拡がるシュトレン (Stollen=日本ではシュトーレンと記されることも多いが).とりわけシュトレンは14世紀のドレスデンが発祥の地だという.

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プレゼンテーション会場で供されたシュトレン.シュトレンは,たくさんの銘柄があるが,この日はEmil Reimannというお店の製品だった.

ドレスデン市内や郊外の由緒ある建造物や博物館,チェコ国境方面のザクセンのスイスをはじめとする景勝地に続いたのがワイン.それから陶器.
  僕にとってはなにしろワイン.1995年,初めてザクセンを訪問するまで,その存在を知らなかったのだけれど,狭軌の蒸機を求めて滞在したツィッタウ (Zittau)での夜,レストランで薦められて飲んでから病みつきに……なりたくてもなれないのがザクセンワイン.なにしろドイツ国内ですら,地元以外 ではまず売られていない.ましてや日本にはほとんど見かけるチャンスがない.みんな自分たちで飲んでしまうのだから.

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会場に展示されていた特産品.右に積み上げられた箱がEmil Reimannのシュトーレン.奥に並ぶボトルがザクセンワイン.手前はマイセンと並ぶ陶器の銘品ドレスナー・ポルツェラン(Dresdner Porzellan)製小皿.

ザクセンワインはドレスデンを囲む地域で産する.だからツィッタウで味わうことができたのは,もしかしたらレストランの,“東洋からやってきた旅人”への厚意だったのかもしれない.
  厚意といえば,ベルリンから到着したドレスデン中央駅のレンタカーカウンターでパスポートを提示したところ,いきなり“地震は大丈夫だったのか?”と尋ね られたのには驚いた.僕の本籍地である大阪が,神戸のとなりであることを,彼らは知っていた.そして,まだ一月も経たないうちにやって来た旅人のことを気 遣うやさしさを,ドレスデンの,そしてザクセンの人々は持っていたことになる.

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1995年にはまだ,“世紀のジグソーパズル”の真最中だった聖母教会(Frauenkirche).広場一杯に並べられた無数の石の塊を,よくもまぁ,きっちり と並べたものである.完成したのは2005年だから.僕はまだその姿を,見たことがない.いつ,見ることができるだろうか.Photo:Susann Städter/DMG