7月12日付けのここで完成予想図と概要をお伝えしたJR貨物の新型機関車2種類のうち,北海道新幹線の青函トンネル用EH800-901が,今日の午後,東京府中の東芝府中事業所で完成,報道関係者に披露された.
 雲ひとつない,冬の到来を告げるような澄んだ青空の下,完成した機関車は輝き……といいたいところだが,冬の太陽は低くて建物の影が長く,設定された時間帯では,残念ながら,満身に陽を浴びてというわけにはいかなかった.
 しかし,その概要を観察するには充分な時間が与えられたので,まずは速報として,ここでお伝えする次第.

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1エンド側から見たEH800-901.東北本線では,こちらが上野方となる.これはEH500と基本的に同じである.

完成予想図からは解らなかった点として,最初に気づいたのは,2エンド側運転室部付近両側のふくらみ.これは,新幹線との共用区間で使われる列車無線装置で,地上側は線路脇に敷設されたLCX(漏洩同軸ケーブル)がアンテナとなるもの.
 そこで気づいたのは,東芝の銘板が見当たらないこと.出場は3日後なので,それまでの間に取り付けられるのだろうか.

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新幹線との共用区間で使われる列車無線用のアンテナをおさめたカバー.車体との接合部は緩やかなカーブを描いてはいるが,あくまでもEH500の車体をベースに設計されているので,見慣れるまでに時間が必要だろう.

両運転室の屋根には,逆L字形のアンテナが見える.これも完成予想図にはなかった部品.架線電圧を検知するための静電アンテナ(検電アンテナと呼ばれることもある)で,新幹線との共用区間では必須のパーツ.

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写真は1エンド側運転室の屋根に取り付けられた静電アンテナ.艤装スペースの関係から,車体中央ではなく,どちらのエンドも,正面から見て右にオフセットして取り付けられている

台 車は,JR貨物の機関車用標準タイプ.軸距は2,500mmで,動輪径は1,120㎜.形式はFD7.1エンド側から2エンド側に向かって順 に,O,P,Q,Rというサフィックスが付されている.軸箱支持装置は軸梁式で,基本的にはEH500用などと同じだが,軸箱の下に脱線時の逸脱防止を目 的としたL字形のガイドが取り付けられているのが目新しい.これは,中越地震の際に上越新幹線の200系が脱線した事故の,分析と今後の対策の一環として 旅客用の新幹線電車に装備されることになったのと同様の部品である.

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FD7台車.ボルスタレスで.軸箱支持装置は軸梁式であるなど,基本的にはJR貨物の機関車用標準タイプそのもの.製作はこれまでと同様,川崎重工が引き受けている

運転室の情景は,基本的にEH500とよく似ている.しかし,速度計が液晶タイプとなっている(JR東日本のE231系などに採用されている)ほか,新幹線との共用区間を走るための各種保安装置のスイッチ類が追加されているのは,いうまでもないことである.

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運転室.写真は2エンド側.この写真だけ見ている分にはEH500と同じように見えるが,速度計が液晶タイプとなるなど,よく観察すると各部が変化している.

なお,基本的な数値は下記の通り.
連結面間全長=25,000mm,車体幅2,808mm,運転整備重量=134.4t,最高運転速度110km/h,1時間定格出力=4,000kW,保安装置=ATS-SF,ATC-L(DS-ATCは準備工事),電気方式=交流25kV及び20kV 50Hz

なお,このEH800-901は,とれいん11月号の“甲種・特大運行情報”にも掲載されている通り,11月30日に東仙台へ向けて旅立つ.そして12月には,12月号に掲載のように,東福島へ2往復して,誘導障害の試験や性能確認の試験を実施することになっている.
 順調に日程がこなせるよう,願ってやまない.

※画像はいつも通り,クリックしていただければ拡大表示されますが,せっかくなので,いつもよりやや大きくしてあります.環境によっては展開が遅いこともありますので,ご注意くださいますよう.

※2012.11.28,11.29:一部誤変換及び数値修正