先週のここで記した,東武鉄道の8000系動態保存.運転初日…すなわち昨日の報道公開に駆けつけた.
 行き掛けの駄賃として,上り北斗星の到着を東北本線の大宮駅で撮影後に東武大宮駅の集合場所へ.
 取材受け付け後,2番線の根元で待つことしばし,10時21分に回送列車が到着した.8111の編成は,あっという間に大勢のファンに取り囲まれ,この日の主役の座を確たるものとしていた.

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東武大宮駅2番線に到着し,“団体専用”の行き先幕と特製ヘッドマークでおめかしした8111編成.この時点で既に,今日の主役として多くの人に取り囲まれていた.

コンコースでのテープカットやこの動態保存の意義についての挨拶のあと,定刻11時には,まずは春日部に向けて出発.
 実はこの日の案内をいただいてから,“大宮での出発を撮影して業平橋…とうきょうスカイツリー駅かどこかで迎え撃ち”などと目論んだのだが,上野からの移動に時間を要することもあって,どうにも間に合わないことが判明.ならば,というわけで,同乗取材とあいなった次第.

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コンコースでのテープカット.画面中央が牧野 修 東武鉄道常務取締役鉄道事業本部長.左が花上嘉成 東武博物館名誉館長,右が宮田幸男 大宮駅長.

前回も記した通り,今回の動態保存で画期的なことは,車輛の所有者が東武鉄道ではなく東武博物館で あること.欧州大陸や米国などでは既に広く普及しているこの方式ではあるが,日本ではさまざまな問題から,これまで実現したことはなかった.それを,とに かく打破して今後のための前例を作ったという意義は,限りなく大きい.ここに至るまでには関係の皆さんの大いなる努力と熱意があったことは間違いなく,心 から称賛と感謝を表するものである.とりわけ,花上さんの熱意と行動力に負う部分が大きいだろうことは,このブログの読者の多くの方には,すぐ理解される ことだろう.

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一見何の変哲もないアクリルプレートだが,1行目に刻まれた“所有者 東武博物館”の意義は,限りなく大きい.

保存に際し,車体や台枠に見受けられた腐蝕部分は徹底的に補修し,一方で客室内張りや側扉などは,出来る限り現役時代の姿を残すべく配慮された.
 運転室機器類を製造時の姿に戻すことは,運転士の取扱いが現役車と違うものになることから見送られている.
 さてこの編成の今後の活用方法….さしあたって,東上線はまもなく保安装置の更新が実施されるため,それまでにできるだけ運転の機会を設けたいとのこと.
  また,現状では6輛編成であることから,それ以下の輛数しか入線できない支線区では使えないし,団体などを募集するに際しても定員があまりにも多く,集客 のネックになる.一方,4輛編成では電動車が1ユニットだけなので運転取扱上から問題になる可能性がある.その辺りの問題が解決できるかどうか,検討中だ そうである.

…などと関係の皆さんからお話をうかがっているうちに,列車は早くも複々線区間に.こんなに俊足では先回りなどできるわけがない.
  実はニュースリリースにあった,“今後とも,さいたまエリアから東京スカイツリータウンまでダイレクトに結ばれるこのルートを使って,臨時列車を運行する 予定です”は,単なるクルージングではなく,大宮方面から東京スカイツリーへの“足”として,所要時間に遜色がなく,運賃でも競争力があることからのプラ ンだったのである.
 さらに“また,特別列車の導入も今後計画しております”という魅力も加われば鬼に金棒ではあるまいか.
 その特別車輛の概要についても,おおいに興味を抱かされるわけわけだが,それはまた,別の話題ではある.

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とうきょうスカイツリー駅に到着後,浅草まで引上げて回送列車として折り返し,業平橋の留置線に入る動態保存列車編成.今後の活躍を期待したい.

※2012.08.31:本文一部修正