3月最初の一週間は,出掛けることが多かった2月後半から一転して,ほとんど事務所と家との間を往復するだけの毎日だった.
 今月発売号の追い込み時期というのはもちろんのことだが,加えて,毎年恒例の“欧州新製品最新情報”の纏めに大童,という,毎年恒例の大仕事に追われていたわけである.

今年のニュルンベルク国際玩具見本市は,2月1日から6日までの6日間が会期だったが,折しも大寒波が欧州大陸を襲い,ニュルンベルク市内を流れるペグニッツ川は完全に氷結した.

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氷結したニュルンベルク市内のペグニッツ川.このような光景は何十年ぶりかのことだったという.写真提供:チムニー

“とれいん”欧州形模型製品の概要を知っていただくために,ニュルンベルク見本市の情報を掲載しはじめたのは,もう30年ほど前のこと.実際に現地へ赴いての取材は1987年が最初だった…….という事実を,今年,フライシュマンが 製作した“創業125年”というリーフレットを見て改めて思い出したことである.というのも,初めて訪問した会場で,同社が“創業100年”を大々的に宣 伝していたから.もう25年が過ぎ去ってしまったのか……と,リーフレットを前に,しばし感慨にふけってしまった次第.

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フライシュマンの125年記念特別製品.地元を走っていたバイエルンのパシフィック機,S3/6を特別のパッケージに入れて発売するようである.価格はいか ほどになるのだろうか.一方では“125”にちなんで,1輛125ユーロというバーゲンプライスをつけた機関車を,HOとNの両方で3機種ずつ企画 中.PHOTO:FLEISCHMANN

最近は日本国内での諸々の仕事が増えるなど種々の理由で,現地へ出向くことが困難に なってしまった.そこで毎年,日本から参加される模型店の皆さんにお願いして情報を入手し,記事を作成し続けているわけだが,以前は“紙”で提供されてい た新製品情報のプレスリリースだが,10年ほど前から急速にデジタル化が進んだ.一方では,広報資料の製作を取り止めてしまった会社もあったりして,記事 を纏める手間は,結局のところ25年前とそれほど変っていなかったりする.

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各社プレス資料の一部.伝統的な大メーカーは,ここに見られるような立派なカバー付きの資料を用意していることが多い.“PRESSEMAPPE”とは,プ レスキットのこと.写真は,往年はスライドだったり紙焼きプリントだったりしたが,最近はもっぱらCDやDVD.“ウェブからダウンロードしてください” という会社もある.残念ながらそのデータでは解像度の点で印刷に不向きなのだが.

いつもこれら資料の蒐集にご協力くださって いる模型店の皆さんには改めてここで御礼を申し上げる次第.ありがとうございます.また,ながらく現地を訪問していないにもかかわらず,僕や本誌のことを 憶えてくださっている欧州各会社のスタッフたちにも感謝したい.もっとも,25年も経てば多くの人は入れ替わってしまい,今ではメールやFAXでのやりと りで知っているだけで,直接面と向かって話したことがあるスタッフは数少なくなってしまったが.

メンバーの入れ替わりといえば,日本から多くのブラスモデルを輸入していたインポーターたちも,一つ減り,二つ減りして,今年はついに,フルグレックス(FULGUREX) だけになってしまった.もっとも,フルグレックスから独立したレマコは,数年前からおなじみのエッガーさんから事業を引継いだレマテックの人が,会場内で バイヤーとコンタクトをとっているし,ミクロメタキットも,今年は同じ方式を採用した(?)ようである.
 他にも気になる会社はあって,東独時代 のPIKOから分離独立した会社のひとつであるギュッツォルト(GUeTZOLD)は出展を取り止めたし,かつてスーパーディテールの客車で一世を風靡し たadeは,ブースを構えてはいたものの創業者のヴィリー・アーデ(Willy Ade)氏が,昨年5月に亡くなっていることを資料整理の途中で知った.今後の動きが気になるところである.

さてそれで具体的にはどんな新製品が発表されたのか,それはあと2週間,本誌の発売を楽しみにお待ちいただきたい……というのはあまりにも素っ気なさ過ぎではあるけれど,それを始めると,小さい活字で行送りを詰めた誌面で18頁費やす必要が…….
 なにはともあれ,いつものことながら,この記事は,多くの人たちの協力によって出来上がっている,情報の缶詰である.じっくりとお読みくだされば,必ずやみなさんの興味を惹く項目がみつかるはずである.お楽しみいただければ幸い.