“とれいん”で211系電車の大特集を企てたのは,平成21/2009年11月号のことだった.それから2年,東海道本線の東京口の211系に大きな変動……早くいえば新形式への置き換え時期がやってきた.
既に11月中旬には長野総合車両センターへの回送が始まり,セミクロスシートの基本編成であるN2編成を皮切りに,N6,付属編成のN60とN61編成と,続々と長野車両センターへと回送されているという.
入れ替わりに運用についたのがE233系3000番代.すでにこの番代は平成20/2008年に新造が始まり,国府津車両センターに配置されているものの,その数は僅か2編成に留まっていたものである.
それがここへきて急速に数を増やしつつあるのには,もちろん理由がある.それは,平成25年度の開業を見込んでいる東京駅と上野駅を結ぶ縦貫線.
上野と東京の間には東北・上越新幹線の工事が始まる前にも“回送線”として存在しており,常磐線や東北本線の特急列車の一部が東京駅に乗り入れていた
り,EF58やEF15が牽く荷物列車が隅田川と品川の間を往来していたことを記憶している方も少なくないだろう.その断片は,レイル77号で写真と編成記録をお届けしたばかりでもある.
東京の都心,東京と上野を南北に直通できるということは,乗客の分散……混雑を緩和できるというメリットがあり,万が一の際にも迂回運転が可能になるとい
うことで,大いに推進していただきたい施策なわけだが,新幹線の線路が建設されてしまった今,以前と同じようにというわけにはいかない.そこで東京駅から
神田の先あたりまで,新幹線線路の上を走ることになる.ということはその高さまで登り降りする必要があるということで,それではこれまでの車輛では対応し
きれない…….といったあたりが,211系を置き換える必要性として考えられるのだ.ちなみに常磐線側も,651系,E653系ともに上野口から,少なく
とも定期列車としては姿を消すことになっているわけだが,この縦貫線の勾配という問題も,含まれているのに違いない.
さてニューフェイスの
E233系3000番代.211系の置き換え用ということもあって,配置は田町車両センター.東急車輛製の2階建グリーン車は8月下旬に最初の4輛が新津
に送りこまれ,10月には完成した編成が田町へやってきた.そして11月中旬から最初の編成が営業運転を開始したわけだが,その後も続々と完成し,一昨日
は6番目の編成も田町に到着した.
そして昨日11月30日,JR東日本のご厚意により,田町車両センターにおいて,この新しい3000番代を撮影させていただくことができたので,早速,お目に掛ける次第.
ちょっと見た目には国府津の2編成と変わらないのだけれど,実は何ヵ所か変更されている.
第1は,6号車がモハE232-3000番代からモハE232-3800番代になったこと.この新番号区分車は神戸方にトイレを装備したのが特徴.
第2は,モハE232-3800番代はトイレを取り付けた結果として床下に補助電源装置(SIV)を取り付けるスペースがなくなったため,ユニット内に
SIVを必要とする予備パンタグラフ装備車モハE233-3000番代を7号車に組み込むことが不可能になり,SIVを搭載するもう1輛のモハE232で
ある2号車3400番代の隣り3号車に移動,3号車だったモハE233-3400番代が7号車へ移動した.
……と,接客サービス向上を目的としてトイレを1ヵ所増設するという目的を達成するために,パズルを解くような工夫が必要だったという次第.
この3000番代は,4月頃までに14本が落成して,田町車両センターの211系電車全てを置き換えることになっているとのこと.恐らくは引き続いて高崎車両センターの211系を置き換える目的で同じ程度の編成が新造されることになるだろう.
なお,211系電車の長野への回送後の処遇については,今のところ発表されていない.恐らくは高崎や長野や新潟に残る115系電車のいずれかを置き換えることになるのだろうけれど.今後の動向に注目したい.

神戸方から見た田町車両センター配置のE233系3000番代,第6編成.この角度からは国府津車両センター配置車と,なんら変わるところはなさそうである.編成番号がNT6になっているところ以外は.

田町配置車のハイライトはこの6号車,モハE232-3800番代.神戸方に普通サイズの洋式トイレを設置している.

そのトイレ部分.トイレの向かい側(山側)には枕木方向に腰掛が設けられている.ちなみにここは優先席.

そして元の6号車,SIVを搭載しているモハE232-3000番代は8号車へ移動した.

新しい6号車モハE232-3800番代には補助電源装置がないため,3号車に移動した予備パンタグラフ装備車モハE233-3000番代.