僕にとっての大阪駅の記憶は,直線的な構成のデザインが特徴だった3代目.
 駅前には市電が屯し,バスもひっきりなしに行き交っている…….駅舎の東側には古めかしく見える阪急百貨店が,西側には駅の建物と似たような外観の中央郵便局が,そして正面にはやはり近代的な阪神百貨店があって…というのが,僕にとっての大阪駅の原風景.

  大阪駅の駅舎が実は未完成作品だったことや,中央郵便局は昭和14/1939年に完成したこと,阪急百貨店は大阪駅高架化に際して建設された,日本最初の ターミナル百貨店だったこと,そして阪神百貨店は出来上がったばかりだったこと……それらは,全部,後になって知ったことである.

この僕の 原風景も,今や現役として残っているのは阪神百貨店のみ.阪急百貨店は,なんとなく似たような外観ではあるものの,実は全く違う建物に生まれ変わっている し,中央郵便局は建て替えを前提にした引越しが完了してから何年も経つのに空き家のままだし(保存するのかしないのか,そろそろ結論が出るのではないかと 思うけれど),そしてなによりも中核を成していた大阪駅は,ホテルや百貨店がテナントとして入居する高層ビルに生まれ変わって,早くも30年近く経った.
 その後も継続的に工事が続き,利用する度に様子が変ってワクワクすると同時に,ちょっと淋しい思いをし続けたものである.それがようやく完成というので,どのようになったか,旭屋書店での打ち合わせに際して,“大阪ステーションシティ”と名付けられた,新しい大阪駅を,ちょっとだけ散歩してきた.

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阪神百貨店の前の歩道橋から見た,新しい大阪駅……とはいえ,この風景そのものは,既に何年も前からお馴染み.

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なんといっても度肝を抜かれるのが,この大屋根.計画発表時点での僕の認識は,欧州の鉄道駅にあるドームの大規模なもの,だった.まさかこんな片流れの屋根になるとは.

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この通路の下にたくさんのホームがあって列車が行き来しているとは想像もできない風景.題して“時空の広場”.この写真の正面にみえる“ノースゲートビル”には三省堂書店も店舗展開している.

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“時空の広場”から東側の線路を見下ろしす.折りしも“サンダーバード”が到着するところだった.ホーム直上の上屋は,全部撤去するのかと思ったらそうではな くて,さらには雨滴が舞い込むという指摘によってガラス屋根も設けられることになったとか.せっかくの広々感がスポイルされるようで,ちょっとがっかり. その辺りを含めて工事はまだまだ続いており,僕の感覚では“まだ工事中”.完全に出来上がるのはいつごろの予定だろうか.

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ハイライトは,ノースゲートビルの展望台からさらに階段を上りつめた“天空の農園”からの眺め.天気がよければ北摂から能勢,六甲の山並みを一望することが できるし,なによりも梅田貨物駅での貨車の入換作業や脇を通過する“はるか”“くろしお”などの列車を眺めていれば,飽きることはない.もっとも,梅田貨 物駅は吹田操車場跡地への移転工事が本格化しているから,“期間限定”である.お早めに.

※ 2011.11.25:旭屋書店のエントリへのリンク追加