昨年は10月14日一昨年は10月15日に開催された,ドイツ・ニュルンベルク・シュピールヴァレンメッセ組合社長のプレゼンテーション.今年は少し早くて本日,東京の六本木で開催された.11月号の追い込み真っ盛りではあったものの,ドイツや欧州の模型と玩具業界の最新動向を知るために,参加してきた.
 エルンスト・キックさんは,きのうメキシコシティから,それもバンクーバー経由で到着したというのだが,長旅の疲れも見せず,中身の濃いプレゼンテーションが展開された.

MT-20111006-01
とてもわかりやすいドイツ語でプレゼンテーション中の,エルンスト・キックさん.わかりやすいとはいうものの僕が理解できるのは一部の単語だけ.きっちりと通訳してくださったのは,キックさんを担当するのも3回目とあってすっかり息のあった片岡治代さん.

今回最大のトピックは,なんといっても開幕の曜日が変更されること.このメッセは伝統的に木曜日スタートで間に日曜を挟んで火曜日まで(かつては水曜日までだった).それが,2012年からは1日繰り上げて水曜日から開催するのだという.
  その理由はいくつかあるが,会期の前半に平日を集中させることによって,外国からの訪問者の滞在時間を増やすことができる見込みがあること.週末までに商 談を終わらせたいという要望が強かったのだという.一方で,外国からのバイヤーたちが会期前半に商談を終えた後の週末にはドイツ国内のバイヤーたちがじっ くりと商談できるのではないかという見込みもあるのだという.
 ということで,2012年は2月1日に開幕である.

今回のメッセ全体のメインテーマは“Toys4Teens”.十代の子供たちへの玩具をいかにプロモーションするか,中央入り口に専用ブースを設けてノウハウが公開されることになっている.

さ まざまな分野で世界進出著しい中国大陸だが,急激な膨張を抑えることやクォリティの維持などを目的として“ベスト オブ チャイナ”と名付けられた面積 1,400平方メートルの共同ブースが展開される.2009年からの試みだが,今回はスタート時点と比べて7倍の規模に拡張された.このあたりは,メッセ 組合が上海に支店を設置して管理している.

日本からの訪問者は2009年から2011年にかけて増加しているが,日本から直接出展している会社は減少気味だという(現地法人名義での出展は含まない).両方について増加することを期待している.

MT-20111006-02
2011年の中央入り口付近.この10年で会場の建物は大幅にリニューアルされている.Alex Schelbert/Nuernberg Spielwarenmesse eG

ドイツと欧州の玩具業界の動向だが,ユーロの為替変動について,いまのところ日本との関係では大きな変化は見えない.むしろ南米との関係が問題である.
 欧州の玩具業界は,ギリシャとスペインを除けば4.5パーセント程度の成長を示している.この数字は全世界対象でも同じぐらいのようである.ドイツ単独での経済成長率は8パーセント程度が見込まれている.

東欧圏からの訪問者や出展希望は増加の傾向にあって,鉄道模型業界でも新規参入などが見込まれている.しかし,出展者については長いウェイティングリストが既に存在しているから,急激な増加は難しいというジレンマがある.

ド イツの鉄道模型業界では,最大手といえるメルクリンが堅実な歩みを見せており,ロコとフライシュマンを経営する,ミュンヘンの Modelleisenbahn有限会社も社長の交替によってさらに成長に向かっている.全体としては安定成長の傾向にあるのではないか,その証左の一つ として,鉄道模型の出展者が集まっているホール4aは,既に満杯である.

また,新しい技術やアイデアの商品化が活発になっているのも注目す べき点だろう.例えばメルクリンは,アイフォーンそのものをデジタルコントロールのリモコンとして使うアプリケーションを開発している.同様のアイデアは ヘリコプターの操縦でも試みられており,今後の発展が期待される.

ということで,鉄道模型に関する話題はそれほど多くなかった.ちょっと残念だけれど,それは裏返せば,話題になるような問題点が少ないという証拠といえるだろう.安定した成長が長く続くことを願いたい.