7月7日のここ(エントリというのだそうだ)で丸屋根が見えるようになったとお伝えした東京駅丸の内駅舎だが,本日,JR東日本から“東京駅丸の内駅舎保存・復原工事及び八重洲口開発第2期工事について”と題するプレスリリースが発表された.
  それによれば,駅施設の一部は平成24/2012年6月に使いはじめる予定とのこと.外国人旅行者向けの“JR EAST Travel Service Center”と東京ステーションギャラリーは10月1日,東京ステーションホテルは10月3日にオープン予定だそうである.ということで,“グランド オープン”まであと1年に迫ったこの事業の概要をお伝えする次第.

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中央郵便局前あたりから眺めた,外観の完成予想図.夜間はライトアップも実施される予定.すべての写真提供:JR東日本

この工事の特徴は,単なる歴史的建造物の保存復原ではなく,同時に“実用”するのを目的としていること.それも,建物の一部を新築のビルの中に埋めこむような方法(中央郵便局がそうなるらしい)ではなく,1個の独立した建造物として両立させようというのが“ミソ”.
  欧州大陸や英国では,外観やエントランスのあたりは古色蒼然たる面持ちなのに,1歩足を踏み入れると,そこには極めてモダンなオフィスビルが現出する…… などという例が多く見られる.ようやく日本でも僕たちに身近な“駅”で,それを実現できる時代になったと思うと,感慨一入.

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復原後の1階平面図と復原前後の立面比較図.北口にはトラベルセンターとステーションギャラリー,そしてびゅうプラザが設けられる.ホテルの入り口はかつてと同じ中央口と南口の間に設けられる.

か つてのステーションホテルは,いつも満室でなかなか予約を取ることができなかったが,たった一度だけ,“ダメもと”で電話してみたら,空いていたことが あった.感激のあまり,内装の写真を撮るなど思いも寄らず,手元になにも記録が残っていないのが悔しいが,とにかくよく手入れされていたことや客室の天井 が高かったこと,朝食堂へ行くのに南口コンコースを見下ろす回廊を通っていったことなどが印象に残っている.
 南口といえば,1階にあったグリルや,中央快速電車のホームを眺めることができたバーは復活するのだろうか.

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客室のイメージ図. 新しいステーションホテルは,客室数150でうちツインが86室,ダブルが64室.高速インターネット接続など近代的な設備も完備とのこと.

南 北のコンコースは,できるだけ落成時の姿を復原するという方針で,写真や図面などを検証して装飾の形や色を決定したという.注目は8つの方位を示す干支の レリーフや,2メートル以上の翼長を持つ鷲のレリーフ,そしてドーム中新飾りの華のレリーフ.壁面は資料によれば“黄卵色の漆喰”とあるが,もしかした ら,マリアテレジア・イエローなのか?

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ドームの内装(余談ながら,このリリースを含めて最近“内観”なる言葉がよく使われているが,“外観”の対語のつもりならば,それはおかしいと思う).干支のレリーフは位置が示されているが,鷲と花の飾りはどこにあるのか.完成時の楽しみにとっておこう.

そして,東日本鉄道文化財団が プロモーションする,東京ステーションギャラリー.5年ぶりの再オープンだが,クラシックな内装の2階と,対照的にモダンで明るい内装の3階の,ふたつの 展示室を得て,近現代美術や建築,デザインなどを中心に年5回程度の展覧会が企画される予定.時には鉄道関連デザイン展なども実施されることを期待したい し,常設展示も大いに楽しみ.

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東京ステーションギャラリーの2階展示室.壁面は煉瓦壁の雰囲気を活かした内装.“歴史を感じる2階”だそうである.3階は天窓の存在もありモダンな内装で“現代的な3階”.
 
※2011.09.11:完成年西暦訂正