暑い夏,一服の清涼剤として涼しい北海道の話題をお届けしよう.といっても“今”ではなく,40年以上前の情景.
 北海道の各地に存在した“簡易軌道”.一部は交通公社の時刻表にも掲載されていたから,当時まだ中学生だった僕も存在そのもの走っていた.けれども,大阪在住の中学生には,簡易軌道はおろか北海道そのものが遥か彼方.今の欧州よりも遠い存在だった.
  そんな簡易軌道については,湯口 徹さんが昭和53/1978年に“簡易軌道見聞録”として弊社から上梓されている.これは湯口さんが昭和30年代半ばに 各線を訪ねられたときの写真と記録であるわけだが,その後,国からの補助金が打ち切られてほぼ一斉に廃線になってしまう昭和46/1971年ごろの様子 は,断片的には発表されているものの,まとまった文献にはなかなかお目にかかることができなかった.
 それが昨年の夏頃だっただろうか,ひょんな ことから,最終期の簡易軌道のほぼすべてを訪問された方が見つかったのだった.その人とは藤本哲男さん.米子の日ノ丸自動車“法勝寺線”訪問記や京阪ロマ ンスカー史のサイドストーリーを執筆してくださっているから,レイルの定期読者にはお馴染みの存在だろう.
 いやとにかく,機関車や自走客車はもちろんのこと,ゴンドラやミルクタンク車に至るまで,丹念に車輛を記録しておられる.それにぜひとも解説と訪問記を添えてくださいとお願いしたわけだが…….
 いよいよ原稿が完成するかもという今年の早春,あの地震とそれにまつわる災害のために,ただでさえお忙しい藤本さんのお仕事が,てんてこ舞いになってしまった.そんな中,無理をお願いして仕上げていただいたのが,レイル79号のメインの稿というわけである.
 詳しくは,ぜひともレイルそのものをご覧いただきたいわけだが,ここで,何枚かの写真を披露してみたい.

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最初は浜中町営軌道の列車写真.向かってくるのはミルク缶を満載した貨物列車.右後方にゴンドラと自走客車が見えるが,停車中ではない.貨物列車の続行でこ ちらへやってくるのだ.ということは,先頭はゴンドラ……さらに次のカットには,自走客車の後ろにも貨車を連結している…….続きカットを見たい方はレイ ルを…….昭和42/1967年9月5日 写真:藤本哲男

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二番目は幌延町営軌道の車庫に転がっていた客車の廃車体.簡易軌道というより普通の軽便鉄道用客車向けのようにもみえるのだが,その正体は? 昭和44/1969年9月8日 写真:藤本哲男

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そして三番目は浜中町営軌道の茶内駅風景.この頃,カラーフィルムは貴重品であり,従って簡易軌道の車輛や風景の色を知ることは容易ではない.昭和46/1971年3月12日 写真:西村雅幸

カラー写真を提供してくださったのは,藤本さんの同志社大学時代のお仲間である,西村雅幸さん.古くからの“とれいん”の読者なら独特の筆致で描かれた江若鉄道の車輛たちの真横イラストをご記憶のことと思う.その作者が西村さんなのである.

この訪問記に加え,釧路在住の奥山道紀さんと笹 正之さんによる,簡易軌道車輛の保存車たちも紹介している.なお,奥山さんは三菱大夕張鉄道保存会の会長でもある.
そんなレイル79号,ぜひともお楽しみください.