今から百年前といえば1911年.明治44年である.“交通”という言葉を,ただ素直に解釈するならば,“人のゆきき ゆきかよい(広辞苑)”であ るから,江戸開府から,いや,村落が成立したころから数えなければならない.だから何百年になることやら,である.想像力を逞しくして“近代交通機関”と 解釈すれば……明治5/1872年の新橋-横浜間の鉄道開業に始まることになるから,“139年”ということになる.では,なにが100年なのか……東京 市電気局ができてから,ということなのだそうだ.
 東京という行政区域名はその後に変化しているから,一口に言い表すことが難しいのは確かだけれど,もう少し工夫はできなかったものか……例えば“東京の公営交通100年”とか.

い きなり,ややこしい話しになってしまったが,生粋の都民ではない余所者の僕としては,直感で理解できないタイトルとなったこの企画展.明日7月14日か ら,総武本線両国駅駅前にある“江戸東京博物館”で開催される.今日はそのプレス・プレビュー.久し振りに両国駅に降り立った僕である.

駅に接してそびえ立つのが,この東京都江戸東京博物館. 平成5/1993年に開館した,“都立”ではないものの,実質的に東京都営の博物館である.これまで,江戸や東京に関するさまざまな興味ぶかい企画展が催 されてきたが,“近代交通”に関する本格的な企画展は初めてではないかと思われる.それだけに,大いに期待して訪問したのだった.

エントランスのすぐのところには,鉄道博物館所蔵の一号機関車の模型が.まぁ,プロローグなのであろう…….
歩 を進めれば,上野で開かれた内国勧業博覧会で展示走行したスプレーグ式電車に始まり,市営になってからの代表的形式であるヨヘロ,第2次世界大戦後の主役 ともいうべき6000形,PCC試作車5500形,量産車7000形,そして“最後の新形式”といわれた8000形などの大型模型が次々と姿を現す.地下 鉄5000系は,車輛模型のみならず,シュリーレン台車単体の構造模型も展示されているといった具合で,モデラーには興味ぶかいことこのうえない.
 写真や現物資料を駆使しての歴史解説も実にきめ細かくて,どなたが?と思ったら,永年に亘って交通博物館の学芸員を勤められ,今も鉄道博物館の客員として関与しておられる佐藤美知男さんの監修であるという.充分に納得できるレベルであった.

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都電近代化の先駆けとなるはずだった5500形の模型とパンフレット.その向こうには7000形や8000形の模型も並ぶ.

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バスの模型も昭和20年代の車輛を中心に充実.写真は手前が日野のボンネットバス,向こうはやはり日野製のトレーラーバス.

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そして都営地下鉄1号線,今の浅草線用5000形の車輛模型と台車模型.とりわけ台車の模型は,シュリーレン台車の構造を観察するのに打ってつけ.

そ してなによりの目玉は,わざわざ函館から運送してきた“ササラ電車”こと除雪車.函館市電は,開業に際して多くの資材を東京から得たためにゲージも 1,372mmとなったことは,有名な史実だが,除雪車は,ヨヘロ形の面影を強く残している貴重な存在ということで,76年ぶりの里帰りを果たしたのであ る.

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函館市電(函館市企業局)4.通称“ササラ電車”.明治期の木造単車の構造を知るために貴重な機会である.

と,いうわけで,タイトルに関する最初の疑問などどこかへ消え去ってしまう,期待以上の内容であった.まずはお薦めしたい.

※ 会期は7月14日から9月10日まで.午前9時半から午後5時半まで.毎週月曜休館.なお,7月23日からは土曜日だけ午後7時半まで開館している(電力 事情によっては取り止めとなることもあるので,博物館ウェブサイトもしくは江戸東京博物館(電話03-3626-9974)まで確認されたい.


※館内は原則として撮影禁止です.ここに掲げた写真は報道公開に際して撮影したものです.