約半世紀の間,小型カメラの主流となってきたのが一眼レフカメラ.
なにしろファインダーに見える風景すなわち実撮影画面だから,望遠レンズでも広角レンズをつけていても,正確なフレーミングが可能で,列車の編成が切れたり,中心からずれたりする心配がほとんどない.
一方で,“一眼”を実現するためにボディ内に可動式の鏡があるから構造は複雑だし,鏡が動くためのスペースが必要だからボディは大きくなるし,その鏡が高
速で動くものだから撮影時の音も大きい.でも,それらを差し引いても多くの点で優れてるから,王座を守ることができた.
そんな一眼レフカメラ,デジタルの時代になってフィルムを入れるスペースが省略されてややコンパクトになったものの,基本的にはこれまでと同じような大きさと重さのまま.可動式鏡の存在が大きいのだろう.
デジタルの時代なのだから,ファインダーもデジタル化してやれば,これまでの構造を踏襲する必要はなくなる.コンパクトカメラではずっと前から可動式レンズや可動式液晶ファインダーが実現し,何種類も製品が発売されている.
そこで,一眼レフカメラとコンパクトカメラの中間的ポジションを狙ったのが“ミラーレス一眼カメラ”.本日,PENTAXから発表されたのは,“PENTAX Q”.
このPENTAX Q,最大のセールスポイントはその小ささ.
モデルさんの手の小ささと比べても,なお小さい,Q.モデルさんの名前は里織(さおり)さん.
ボディの幅は98mm,高さは57.5mm,厚みは31mm.そして電池を含めた重さは200グラム.
そんなボディに組み合わせるレンズは,標準が8.5mm(35mm判カメラ換算47mm,以下同じ)で,他に5~15mm(27.5~83mm)ズーム,
魚眼3.2mm(17.5mm).それに加えてわざと諸収差を残してトイカメラ風な絵を作る2種類のトイレンズ
6.3mm(35mm),18mm(100mm)が用意される.マウントはこのカメラ専用の新開発“Qマウント”.
標準レンズを装着したPENTAX Q.ボディは写真の白のほか,黒が用意される.デザインはメカニカル,精密感などを強調した,ややクラシカルな雰囲気.ボディの骨格はマグネシウム合金製.
デ ジタルカメラらしく,さまざまな画像効果をボディ内で演出するモードが満載されていて,情景写真撮影では役立つこともあるだろう.しかしもちろん,基本は しっかりと押えられている.有効画素数は約1240万画素,jpegだけでなく,後加工仕上げが楽なRAWデータでの撮影も可能.シャッタースピードは最 大1/2000秒.感度設定はISO6,400まで可能である.これなら列車写真撮影にも充分使うことができる.
背面の3.0型液晶画面.さまざまな撮影モードの選択画面を表示しているところ.情景写真では役にたつことがありそう.ホットシューに取り付けられているのは標準レンズ用の光学ファインダー(別売り).
そ して気になる価格.発表では最近流行の“オープンプライス”となっているが,質疑応答で明かされた,メーカーが予想している実勢価格は……標準レンズ+ボ ディで約70,000円,それにズームレンズを加えたダブルレンズセットが90,000円前後だという.レンズ単体では魚眼が10,000円程度,トイレ ンズはそれぞれ6,000円程度だそうだ.ボディの予定月産数は20,000台.
で,僕にはどのように使うことができるか……今後,望遠レンズなど拡充の構想もあるというから,本格的な列車写真を撮影する予定がない時などには,サブカメラではなくて,これ1台だけぶら下げて出掛けても満足できるかもしれない.発売が待たれる1台であった.
2011.06.24:魚眼レンズ見込み価格修正